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『蒼き鋼のアルペジオ』 Edit

2009-(既刊9巻)、日本
著者:Ark Performance
出版:少年画報社
連載:ヤングキングアワーズ
温暖化によって陸地が減った近未来の世界に、「霧の艦隊」と呼ばれる第二次世界大戦期の軍艦を模した謎の艦隊群が襲来。
制海権を奪われた人類の逆襲と、霧の艦隊の謎をめぐるSF海洋戦記漫画である。
艦娘と深海棲艦の設定を足して2で割ったような女性型インターフェース「メンタルモデル」が登場するのが特徴。
2013年10月7日からはアニメ「蒼き鋼のアルペジオ  -アルス・ノヴァ-」が放送開始。
尺の都合上原作漫画からだいぶ設定が変わってるが、設定改変に関しては作者の了解を得た範囲で上手く行われており、あまり違和感なく入り込めるようになっている。原作とアニメ版、両方見る(読む)事をおすすめする。
運営側にもこの作品のファンがおり、二つ返事で艦これとのコラボが決定した。

アルペジオ側のコラボは、奇数話のエンドカードに艦これとのコラボイラストを掲載。
艦これ側のコラボは2013年12月24日よりコラボイベント「迎撃!霧の艦隊」が開始。

話数エンドカード絵師話数エンドカード絵師
1伊401&イオナしばふ7高雄&タカオみことあけみ
3榛名&ハルナコニシ9摩耶&マヤパセリ
5金剛&コンゴウ11アイテム屋娘、任務娘
       &
八月一日静、四月一日いおり
藤川

『Battleship Girl 鋼鉄少女』 Edit

2011年-(既刊4巻)、台湾、日本
著者:皇宇(ZECO)&惟丞
出版:ワニブックス(日本)
連載:コミックGUM(日本)
「艦これ」に先立つ事三年以上前に、台湾の漫画家による艦艇を"萌え擬人化"した作品。
元々は2010年に台湾の中央研究院の機関誌「Creative Comic Collection」に掲載された
擬人化イラストがきっかけで、それが評判を呼び、漫画化されたという経緯を持つ。
主人公は大東日(日本)海軍の駆逐艦「雪風」で、
スターズ(アメリカ)を始めとする連合軍の艦隊達と壮絶な戦いを繰り広げていく。
ただ、史実に必ずしも忠実という訳ではなく、
枢軸国側のゲストとしてゲルマン(ドイツ)軍の巡洋戦艦シャルンホルストが大東日海軍に参戦していたり、
「野分」が「赤城」ではなく「飛龍」の雷撃処分を担当していたりと(史実との差異をコラムでフォロー有)
作者独自の創作部分もあったりもするので、「艦これ」と比較してみるのも面白いかと。
お姉さんを通り越してお母さんポジションの「高雄」、親分肌の「神通」、
鬼教官の「飛龍」、お嬢様気質の「隼鷹」、お姉ちゃまっ子の「摩耶」と性格設定も一味違う
(ただし、「大和」の不幸ぶりと「雪風」の強運は健在)。
現在はミッドウェー海戦終了後に一時休載、ヨーロッパ編を構想中。
先述のシャルンホルストが主人公を務める北海編『BSG 北海のワルキューレ』全1巻が刊行されている。

『女王陛下のユリシーズ号』(H.M.S. Ulysses) Edit

1955年、イギリス
著者:アリステア・マクリーン
出版:早川書房(1972年)
海洋冒険小説のベストと言われれば真っ先に名前が挙がる一作。
ハヤカワの冒険・スパイ小説人気投票で、海洋冒険小説部門、および総合ベスト100において第1位に輝くなど高い人気を誇る。

描かれているのは、第二次大戦下、英海軍輸送船団のドイツ海軍との凄絶に過ぎる死闘。
主役は英国軽巡洋艦ユリシーズ号とその男達。 護衛空母・駆逐艦と艦隊を組み、輸送船団護衛任務にて
ドイツ軍の誇る超弩級戦艦ティルピッツの影に怯えながらUボートと爆撃機が待ち受ける極寒の北極海へと向かう。

戦艦〜駆逐艦の全ての艦種に戦闘機まで登場し、当時の海戦における其々の役割や存在が良く分かる。
何より作者自身が大戦中の巡洋艦乗りで、描写が真に迫っており
実際の軍艦の戦闘がいかに凄絶なものだったかを嫌という程思い知らせてくれる。
訳者に「アメリカ人はこんな小説書けもしないし、書きもしないだろう」と評される通り、
本当に容赦の無い展開なのでハリウッド的なスカっとするエンターテイメントを求める方はご注意あれ。
安易な感傷を許さぬ男達の熱く壮絶な戦いに目を真っ赤にしながら読む作品。
しかし、それ一つで映画のクライマックスに相応しい悲劇に幾度となく翻弄されながらも
その最中にユーモアを忘れないのはさすが彼の国の紳士達ならでは。
“もう勘弁してやってくれ!”と泣き腫らしている読者にはこれがこの上ない救いとなる。
不朽の名作と名高く物語の面白さは徹夜保証だが、中破進撃とか出来なくなっても責任は負いかねます。

史実の連合国の命運を握るソ連への輸送船団とそれを阻止せんとする独海軍の戦いである北極海の戦いが舞台であり、
その北極海を支配していた“北海の孤独な女王”ことビスマルクの姉妹艦ティルピッツが絶大なる存在で描かれており
ビスマルク級がいかに英軍に恐れられていたかが、北極海の輸送船団護衛の戦いの厳しさと共に良く分かる。
ちなみに、原題の「H.M.S.」とはイギリス海軍の艦船であることを意味する艦船接頭辞で、
His Majesty's Ship あるいはHer Majesty's Ship の略であり、直訳すれば「国王陛下の船」あるいは「女王陛下の船」となる。
なお、作者のマクリーン氏にとっては本作が小説家デビュー作であり、この後に「ナヴァロンの要塞」「ナヴァロンの嵐」「荒鷲の要塞」など数多くの傑作を世に送り出していく。これらの作品の多くは映画化・ドラマ化されているが、本作だけは未だに映像化されておらず、ファンをヤキモキさせている。

『大逆転! ミッドウェー海戦』 Edit

1988年、日本
著者:檜山良昭
出版:光文社カッパ・ノベルス

架空戦記ブームの初期の作品の中でもあまりのヘビーさにファンが衝撃を受けた『日本本土決戦』『アメリカ本土決戦』『ソ連本土決戦』を書いた檜山良昭が、続いて世に放った『大逆転シリーズ』の第一弾。
1987年、リムパック演習に向かう海上自衛隊の護衛艦隊はアメリカのタイムスリップ実験に巻き込まれ、1942年のミッドウェイ海戦の最中に時空転移してしまう。当の護衛艦隊は当初状況が把握できず混乱に陥るが、護衛艦さわゆき(DD-125)が米軍の旧式潜水艦に撃沈されたことをきっかけに状況を把握する。そして自分たちの返る場所が1942年の日本しかないことしかないことを悟った護衛艦隊は、大日本帝国海軍に加担してミッドウェイ海戦に介入することを決意するのだった……
ただ単に海上自衛隊の介入だけではなく、利根のカタパルト不調に端を発する「日本側の不運、アメリカ側の幸運」への考察を絡めた、ミッドウェイ海戦の深い部分を題材とした1冊。

『超空の連合艦隊』 Edit

2004年、日本
著者:田中光二
出版:学研
ミッドウェー出撃直前の連合艦隊が現代日本へタイムスリップ。
装備を最新鋭のものに換装し、戦艦が、空母が、重巡が中国やアメリカ相手に大暴れ!
ご都合主義な部分は多々あるが、山本提督指揮下で大和が活躍する数少ない作品だろう。

   

『虎口の海 ソロモン1942』 Edit

日本
著者:横山信義
出版社:中央公論新社
第三次ソロモン海海戦おけるifを書いた作品。
霧島が損傷したことによってその代わりに大和が夜間挺身隊に参加、
待ち構えていたアメリカ海軍艦隊を鎧袖一触・・・・・のはずが史実どおりに混戦に巻き込まれ、
あろうことか比叡を襲うはずだった魚雷が大和の舵を損傷させてしまう。
国の威信をかけて作り上げた最新鋭戦艦をなんとしても脱出させようと苦戦する帝國海軍に、
ヘンダーソン飛行場と最新鋭戦艦ワシントン、サウス・ダコタを駆使した、アメリカ海軍の魔の手が襲い掛かる。 
多分これ程絶体絶命の危機に陥った大和が登場する作品はめったにない。
作者の特徴である「焦がれるほどに命中しない砲撃」、「苦戦する日本軍」、「ただでは勝たせてくれない(大抵辛勝)」、
「無慈悲に撃沈される」など「日本海軍圧勝」、「最強大和」を期待する提督にはおすすめできない、
(特にお気に入りの艦が沈むところは心をえぐられるほど、あっけない)提督を選ぶ作品。
但し、「艦長や司令官などを軸にした前線の将兵による力戦奮闘」「史実では不遇だった提督や軍艦が力の限りに闘う」
「敵艦に肉薄する雷撃戦の手汗握る臨場感、そして命中の瞬間」などの単に欝展開にならない、
「不屈の闘志」と「日本海軍の底力」による勝利を楽しめる提督にはお奨めできる作品である。 
なお大和を軸にしているが、ちゃんと「ソロモンの悪夢」と吉川艦長も活躍しているので安心してほしい。

『紺碧の艦隊』『旭日の艦隊』『新紺碧の艦隊』『新旭日の艦隊』 Edit

日本
著者:荒巻義雄
出版社:紺碧の艦隊・新紺碧の艦隊零…徳間書店、旭日の艦隊・新旭日の艦隊…中央公論(新)社、新紺碧の艦隊(零以外)…幻冬舎
90年代架空戦記ブームを牽引した作品の一つ(他代表作品は八八艦隊物語、ラバウル烈風空戦録など)。総称して『艦隊シリーズ』。

 

あらすじ

  • ブーゲンビル島上空で撃墜された山本五十六長官が「後世」と呼ばれ年号として「照和」を用いる世界に「高野五十六」として転生する。
    悲劇的な敗戦を繰り返さないため、多くの転生者とともにクーデターを起こすものの、「前世」同様、照和十六年十二月の開戦を迎える。転生者たちは「前世」の記憶を元に超兵器を次々と繰り出し、世界平和を目指す。
     

航空戦力の威力を隠した上で大艦巨砲主義・潜水艦決戦主義のもとで緒戦を行う設定で、「ご都合主義こうだったらいいな」を描いた場面が数多く描かれている。
真珠湾に続くハワイ占領、潜水艦によるパナマ運河爆破作戦、比叡によるクラスター弾を用いた飛行場破壊等…。その中で潜水艦決戦を担う秘匿兵器として登場するのが伊400型を元にした「紺碧艦隊」である。
また旭日艦隊シリーズはナチスドイツと戦う英国派遣艦隊の活躍を中心に描かれている。こちらに登場する艦艇は同じ名前のものがあっても架空のものであるので注意。
なお、紺碧・旭日を発行順に読まないと上手く時系列が合わない。
最終的には両作品合わせて、強大化したナチスドイツとの全面戦争を最終戦争とし、恒久平和を目指す物語となる。
登場人物がやたら哲学的な会話をするのも大きな特徴と言えよう。
ノベルス版は上記出版社から、また文庫版が徳間・中公文庫から出ているが、現時点絶版の模様。また、漫画版、OVA版もありストーリーの細部などが異なる。
特に漫画版新旭日の艦隊は作者(『軍艦越後の生涯』のコミカライズを手がけた飯島氏)に拠るところの独自要素や解釈が非常に多く、独立した一つの作品としても高い評価を得ている。

『永遠の0』 Edit

日本
著者:百田尚樹
出版:講談社
作者のデビュー作。史実の太平洋戦争に準拠して書かれたフィクション小説である。
舞台は現代。零戦を用いた特攻で戦死した祖父・宮部久蔵の生涯について調べることになった青年が、姉と共に元従軍者のもとを訪ねて行く。そのなかで彼はある疑問を感じるのだが、その答えは想像を絶していた――。
綿密な時代考証、そしてそれによる人物設定は見事の一言。「元従軍者の語り」が基本で、あの戦争を理解する為の情報は全て彼らがくれる。経験者自身の言葉で語られる、あの戦争の記憶。その意味の重さを、感じずにはいられない。
そして本作最高の見所は、宮部の人物像にある。彼(や、彼に代表されるたくさんの従軍者)が何を愛し、何を守るために戦ったのかを知った時、平静を保つことが出来る人間はおそらくいない。
あの戦争の後に生まれた、全ての人に読んでほしい作品である。

 

双葉社から漫画版がアクションコミックスから全5巻出版されている。ページの都合上割愛された描写もあるが、登場人物によっては原作より深く掘り下げられている人物もいる。原作小説を読んでから読むのをお勧めする。
なお2014年正月映画として上映された実写版は、見事な映像と演技の力により8週間連続で観客動員数首位を独占、文句なしの大ヒット作となった。間違いなく一見の価値アリだが、尺の都合で割愛された描写も少なくない。漫画版と同じく原作小説を読み、当時への理解を深めてからの鑑賞をお勧めする。

『雷撃深度一九・五』 Edit

日本(1996年)
著者:池上 司
出版:文藝春秋
1945年、日本が敗戦する直前の7月30日にアメリカ海軍の重巡洋艦インディアナポリスは、伊号第58潜水艦により撃沈された。この事実を元にして執筆されたフィクションが、本作品である。
なぜ、重巡洋艦が潜水艦に撃沈されるという、戦時中の海軍では普通とも取られる事実がフィクション小説の材料となりうるのか。それは、インディアナポリスが原爆の一部をテニアン島まで単艦にて緊急輸送したという事実による。
物語は主に三人、伊58潜艦長の倉本少佐(史実では橋本少佐)、インディアナポリス艦長のマックベイ三世大佐(史実と同名)、そして数奇な運命で伊58に乗り合わせることとなる永井予備役少将(架空の人物)の視点から進んでいき、一点へと集約してゆく。
日本人作家の書く戦争物だが、暗い雰囲気、戦争への偏った評価(肯定・否定)も無く、架空戦記のように突飛な歴史改変がある訳でもない。ただひたすらに時の流れは無情に進んでいき、その中で当人達がいかに決断し、行動したかを淡々と書いている作風である。

『駆逐艦キーリング』 Edit

イギリス(1980年)
著者:セシル・スコット・フォレスター
出版:早川書房
本作品はフィクションながら、第二次世界大戦における大西洋での対Uボート戦がどんなものであったのか、肌で感じられるものである。
内容は至って地味。この物語は、大作戦でも秘密作戦でも何でも無い、単にアメリカからイギリスに向かう輸送船団の護衛艦隊指揮官の話である。地味の極みと言ってもよい。
おまけに、主人公たるクラウス中佐は、バツイチで出世街道からも外れた、しかし仕事は真面目にこなすという、お役所とか大手企業によくいるような中年男である。
300ページあまりもあるのに、作品内で進む時間はたったの三日。しかもクラウス中佐は、ほとんど徹夜。飯もろくに食う時間が無い。なぜなら、艦長を務める駆逐艦キーリングの他に、護衛艦隊(内訳は、キーリング含む駆逐艦2隻と、コルベット2隻のみ)の指揮も執らないといけないからだ。
更に、護衛している船団は37隻の大所帯。大きさも建造年も不揃いで、機関とか舵とか、船体のどこかが不調な奴だっている。しかも船団指揮官はクラウス中佐とは別にいて、そいつはそいつで護衛の都合よりも、船団の都合の方を優先したいから、たびたびクラウス中佐の方針と対立する。
こんな状況で、荒波の中、Uボートを見付けたり見失ったり、攻撃したり攻撃されたり、というのを延々と、地味に続ける訳である。
ある意味、艦娘達が遠征の時にどうしているのか、想像する材料になる作品ではないだろうか。
読む際は、ぜひ、なみなみと熱いコーヒーを注いだでかいマグカップをお供にすることをオススメする。

『巡洋艦アルテミス』 Edit

イギリス(1979年)
著者:セシル・スコット・フォレスター
出版:西武タイム
隠れた名作。無名の名作。そういった紹介をするのに、これほど相応しい作品もそう無いだろう。『女王陛下のユリシーズ号』と対を為す存在と言っても、過言ではない。
それほど日本での知名度は低いのだが、『アフリカの女王』、『ホーンブロワー・シリーズ』を手がけたフォレスター氏の作品だけあって、非常に読み応えのある作品である。
主役となるのは、イギリス海軍の軽巡洋艦アルテミス号である。
ユリシーズ号は過酷な北洋でのドイツ軍と戦ったが、アルテミス号は地中海でイタリア軍と戦う。
イタリア軍が相手、と聞いて鎧袖一触の存在と、鼻で笑う方もおられるだろう。
だが、本作でイタリア海軍が繰り出して来たのは、戦艦二隻、多数の重巡洋艦、そして駆逐艦隊からなる部隊で、イタリア海軍のほぼ全力である。タラント、マタパンで痛めつけられながらも、マルタ島への補給を阻止せんと、艦隊温存戦略を捨てて、全力出撃をかけてきたのである。
それにも関わらず、アルテミス号が属する艦隊は、軽巡五隻と駆逐艦十二隻、そしてマルタ島へと向かう輸送船団で、航空支援も無いし、戦艦が来てくれる宛てもない。幾度となくイタリア空軍の攻撃にさらされ、そろそろマルタ島かと言う時に、正面からやってきたイタリア艦隊と激突する羽目になる。
物語は、アルテミス号の各乗組員の視点から、それぞれの持ち場から見えるもの、それぞれが思っていることを、三人称視点で記述してある。
登場人物は、皆が皆、等身大の人間として書かれている。フィクションの軍事小説にも関わらず、英雄的な人物がほとんど登場しないのが特徴である。「海軍めしたき物語」でも読んでいるかのような主計長視点の記述があったり、艦長の副官が作戦中にも関わらず個人的な恋の悩みに葛藤しながらも任務に集中しようとしたり、たった一人でスクリューシャフトの軸受が異常加熱していないか監視し続ける一等兵曹がいたりと、登場人物にしろ、それが登場する事にしろ、とかく個性的である。しかも、その記述には曖昧なところが一切無く、軍事的な考証も正しい(少なくとも1979年当時は)。
艦長のマイルズ・アーネスト・トラートン=ハリントン=ヨーク卿もまた、等身大の人間として書かれているのだが、指揮官としての立ち振る舞いが板に付いており、剛胆かつ冷静な人物と見えるように書かれている。
なお、本作品は「英国海軍軍艦<ペネローペ号>乗組みの全将兵各位に、深甚なる敬意を表して、本書を捧ぐ」と述べられている。これは、本作品の推移は第2次シルテ湾海戦を、アルテミス号はペネローペ号をモデルとしたことによる。

『ラバウル烈風空戦禄』 Edit

日本
著者:川又千秋
出版社:ラバウル烈風空戦禄本編(1〜15巻)及び外伝ほか4巻…中央公論社、翼に日の丸(上・中・下・外伝)…角川文庫
上記の八八艦隊物語や艦隊シリーズに並ぶ90年代架空戦記ブームを牽引した作品の一つで元撃墜王の回想録という形で書かれた架空戦記。通称『ラバ空』
主人公がパイロットであるため艦船の出番はそこまで多くはないが、しっかり海戦の描写はあるほか一時的に主人公が所属した隼鷹などの描写もある。なお、『翼に日の丸』では、龍驤が俎板という単語とセットで登場する
ストーリーは序盤のうちは史実とそこまで大きく変わらないのだが、海戦のごとに史実より米空母を一隻多く沈めていたり艦これではおなじみの天山や流星などといった史実で開発が遅れた艦載機が比較的速く戦線に登場していたりと日本側にやや有利になっている。
なおこの作品、物語も終盤となった15巻でのあとがき曰く「あと3巻」というところで新刊が出なくなってしまった。とはいえ後に角川文庫から視点を変えたうえで再構成された『翼に日の丸』シリーズとして一応完結している。
ちなみに現在中古本くらいでしか入手できないものの、第二次ミッドウェー海戦直前までの分はコミカライズ化もされている。
……ストーリーの都合上艦これに登場する潜水艦娘達の戦果が史実以上に凄いことになっている。まあそこは架空戦記だし、ね?

『最強戦艦決戦シリーズ』 Edit

著者:内田弘樹
艦これノベライズ『鶴翼の絆』の作者の過去作。
史実に少々手を加えて、ありえたかもしれない様々な『最強戦艦』の構想を基本一冊完結で送る架空戦記シリーズ。
題名は『○○の巨竜』で通されているが、それぞれが独立していて世界観のつながりはない。
史実兵器のみの場合から架空兵器が主役のものまで、切り口をがらりと変えてそれぞれの可能性を追っていく。
なお、架空兵器は荒唐無稽なものは現れず、あくまで実際に可能な技術力で作られていっている。

以下、既巻とあらすじ
『蒼海の巨竜 最強戦艦決戦 大和vsモンタナ』
ソロモン海戦に大和を投入して米戦艦2隻を撃沈した結果、米国は新造戦艦モンタナを完成させた。最強戦艦の座を賭け、ギルバート沖で決戦が始まる。

『灼熱の巨竜 最強戦艦決戦 ラバウル強襲1943』
米軍ラバウル強襲。連合艦隊は大損害を受け、さらに米主力戦艦部隊が迫る中で、大和と武蔵は傷ついた体をおしてこれを迎え撃つ。

『迫撃の巨竜 最強戦艦決闘 マリアナ1944』
大和の第三砲塔が突如爆発。航空戦艦として再生された大和は伊勢・日向とともに独自の戦法で艦隊決戦に挑む。

『砲煙の巨竜 最強戦艦決戦 ソロモン1942』
超重巡洋艦『剣』型が完成。戦術ドクトリンの変化に翻弄されながらも、2隻の巨大巡洋艦はガ島の進退を賭けて夜戦に望む。

『逆撃の巨竜 最強戦艦決戦 ブーゲンビル1944』
ガダルカナルで大破し放棄された米戦艦『サウスダコタ』を日本海軍は戦艦『尾張』として再生させた。裏切りの巨竜として狙われる『尾張』に米軍の猛攻撃が迫る。

『双撃の巨竜 最強戦艦決戦 フィジー1943』
マレー沖海戦で出撃するも米新鋭戦艦を相手に大破した長門と陸奥。しかし日本海軍は海軍休日時代に培った技術を投入し、2隻を大和型に準ずる最強戦艦に大改装するのだった。

『陸軍空母戦記 ミッドウェー陥落せり!!』 Edit

日本(2004年)
著者:子龍螢
出版:学習研究社

昭和17年、ドゥーリットル隊の奇襲により本土空襲を許してしまった帝国陸海軍は、その全力を持って対米侵攻作戦を計画した。『ミッドウェー作戦』の発令である。
しかし、計画段階から数々の不備が発覚し、作戦の前途にはすでに暗雲がたちこめていた。
一方そのころ、帝国陸軍は対米戦を睨んで建造していた特設船『あきつ丸』を完成させる。それは、強襲揚陸艦と護衛空母の機能を併せ持つ、まさに”陸軍空母”であった。
近藤信竹中将の攻略部隊に組み込まれ、『あきつ丸』は遼船『ときつ丸』とともにミッドウェーを目指す。
だが、『あきつ丸』の船長に選ばれたのは陸海軍の士官ではなく、乗船経験にすら乏しい民間人だった。
陸海軍の総力をあげての大作戦であるミッドウェー攻略。しかし、稚拙な作戦はさらに錯誤に錯誤が重なって混乱の体をなしていき、そこへ米機動艦隊が迫り来る。
そんな中、戦場に急行する二隻の『陸軍空母』ははたして戦況を変えられるのだろうか……!?

架空戦記ブームも山を超えて、数々のヒット作も完結していった時代に生まれた一作。
この作品の見所は、なんといっても艦これでも異色の艦娘(船娘)である『あきつ丸』が”主役”で活躍する、ほぼ唯一無二の架空戦記である点だ。
ifとしては、『あきつ丸』に航空離着艦能力が付加されたのは1944年であるが、今作では1942年にすでに改装されているためにミッドウェー戦に参加ができるようになっている。
そのため、『あきつ丸改』が参戦すると思えば提督方にはわかりやすいだろう。
人間模様では、主人公であり作中唯一の民間人である『あきつ丸』船長と、陸海軍のさまざまな人間との関わりで、ミッドウェー作戦をとりまく人々のそれぞれの視点が見えてくる。
また、山本長官から現場指揮官のひとりひとりまで考え方の違いが細かに描写されているのも見逃せない。
慢心、油断、様々に批判されるミッドウェー作戦であるが、連合艦隊とて大勢の人間が集まった組織であり、大きな流れの中ではたとえ正しいことを思っていても、個人の力ではどうにもならないことがたくさんあるということを忘れてはならないだろう。
全体的に派手さは控えめであるが、登場人物たちの一生懸命さが伝わってくる作品であると思える。なお、『あきつ丸』おなじみの大発動艇もちゃんと”本来”の形で使われます。

『不沈戦艦 紀伊』 Edit

日本(1996〜2001)
著者:子龍螢

資源のない我が国には、絶対に沈まない戦艦が必要なのです!

第二回歴史群像大賞「奨励賞」受賞作品にして作者氏のデビュー作品。全16巻(外伝として0巻がある)。
架空戦記ブーム華やかなりし頃誕生し、それまでのいかに航空主兵主義に早期に転じるかに傾倒していた架空戦記界に一石を投じた意欲作。
作風を一言で言えば「大艦巨砲主義者の大艦巨砲主義者による大艦巨砲主義者のための小説」である。
「戦艦は決して航空機に劣るものではない」をテーマに、海の女王たる戦艦のロマンと可能性を追っていく。

史実で超大和型戦艦のネックになった港湾施設の問題を旅順に造船所を作ることで解決し、予算と資材は武蔵以降の全戦艦と空母を中止。
そのかいあって、予算と資材に縛られず、本作の主人公である紀伊型戦艦が誕生することになる。
第一巻のキャッチコピーに、『炸裂する51センチ砲!! 昭和19年10月……全長328メートル、12万トンの超巨大戦艦が出撃した──!!』
とあるとおり、超大和型戦艦の最大級の構想を実現したものとなっているが、史実では予算などの問題でカットされた機能を盛り込んでいるので内実はそれを上回る。
特にすごいのが「不沈戦艦」の名にふさわしい絶大無比な防御力であり、なんと”魚雷80本に耐える”水雷防御を持っているのである。
荒唐無稽と馬鹿にされかねないが、史実で『武蔵』が見せたしぶとさを考えれば無理とは言い切れない。
さらに大和型の倍以上の対空火器と、エンガノ沖海戦で伊勢と日向を無傷で保った松田千秋少将の爆撃回避術と対空弾幕射撃を持ってして、航空機では撃沈不可能な「モンスター」として米海軍相手に暴れ回る!
しかし米海軍も負けてはおらず、あの手この手を持って「モンスター」撃沈に執念を燃やす。このあたり、日米の人物描写が公平なのも本作の特徴であり、場面によっては米軍を応援したくなることもある。
また、敵味方ともに造船官が頻繁に登場し、技術面においての考察を深めている。ここまで技術面で裏付けて架空兵器を作ったのは恐らく本作が初。
これについては特に0巻を「不沈戦艦建造秘話」として外伝化されており、夕張、古鷹、妙高型などが日本の造船界の発展の印として作られていたことを史実を交えて語られる。

”戦艦は航空機にかなわない” 本当にそうだろうか? いや、そんなことはない。
「沖縄には30隻の米空母がいる。もしも30隻の大和型戦艦が突入したら、これを航空攻撃で防ぐことができるだろうか?」
当時かけねなしで世界最高水準であった日本の造船技術がフルに活用されていたら、どこまでのものが作れていたか? 
現実に、大和を作った造船官のひとりは大和型はもっと強靭に建造することができたはずだと書き残しており、大和型のその上を目指すのは技術的には夢物語ではなかったのだ。
 
すでに敗色濃厚な中、『紀伊』と姉妹艦『尾張』は死力をあげて戦い、米軍の侵攻計画は大きく遅延を余儀なくされる。しかし、日本軍もまた大きく傷つき、背後の赤い大国も動き始めていた……
最初から最後まで、息つく暇もない大戦末期の緊張感の中を舞台にしたストーリーは壮大であり、柔軟な発想のもとで飽きさせずに『紀伊』の長い戦いが描かれる。

現在は文庫版が発売中、既巻は6巻<空撃>まで(コスミック文庫) また、コミック化もされている。(歴史群像コミックス・全10巻)

『最強戦艦魔龍の弾道』 Edit

日本(2001〜2002)(全6巻)
著者:林譲治
異色の架空戦記である。
なぜなら、このシリーズに登場する戦艦大和は、なんと架空戦記史上最小の基準排水量なのだ。実在の長門が基準排水量約四万トン、大和に至っては約六万二千トンあるのに、なんと四万五千トンしかない。しかも、三連装砲は不採用、46センチ砲も不採用で、41センチ連装砲五基を装備し、砲塔配置は加賀型の改良版に落ち着くなど、外見的にもまったく冒険していない意匠である。
このような艦型に落ち着いた理由は何か。そして、なぜ46センチ砲も搭載していない“最小の大和”なのに題名で“最強”を名乗るのか。
それについては、作品の最も重要な肝となる部分なので、是非、中身を読んでもらいたい。

この作品は、海軍という官僚機構がどのようなドクトリンをもって軍艦の建造を計画し、現場ではどのような動きがあるのか、といった技術的な視点を示している。
1巻ではこの“最小の大和”、ほとんど書類上の存在であり、“最小の大和”に載せるための新型機関と同等の構造のものを、新型駆逐艦天津風に搭載して具合を調べる、といったことが行われている。また、どういった事務手続きを経て軍艦というものが建造に至るのかという、他の架空戦記では全部すっ飛ばされている部分を綿密に描いている。

「ご都合主義すぎるんじゃないの?」という展開もあれども、「こんな些細な事で、歴史って変わるのか」といった新しい視点も提供してくれる。しかも、架空戦記としては珍しく、主軸はほぼ史実通りである。本作でも、「勝ちまくって図に乗った結果、餓島に引きずり込まれる」という史実準拠の展開となってしまう。
なにより、“戦艦は大きいほど強い”という常識を打ち破る“最小かつ最強”という型破りな大和型戦艦という存在を提示した時点で、作者の目の付け所、考え方の新しさが理解して頂けると思う。

惜しむらくは、6巻まで続いたのに、最後は打ち切り臭い終わり方になっていることだ。まるで“男坂”のようなもやもやした終わり方なので、読み始める方は、覚悟して頂きたい。

『流浪の戦艦「大和」』 Edit

日本(2013年)
著者:子竜 螢
「滞在時間は72時間!時空転移し国難を救い続ける『大和』。果たして最終決戦地1945年の沖縄に戻ることができるのか!?」
いわゆる時空転移物小説
菊水作戦で沖縄に向かう大和艦隊が突如謎の空間に入り込む。その空間から出ると周りの護衛艦が矢矧を除いて確認できない。位置を調べてみると日本海、時間も調べるとなんと日本海海戦前日だった。
大和と矢矧はロシア・バルチック艦隊を撃滅するべく出撃する。
実際小説を読んでもらうとわかるが、意外とドンパチしない。歴史上で日露両軍が確認してない艦の沈没原因が実は大和だったという物語。他の時代にも転移するが実際読んで驚いてもらったほうが良いと思います。
歴史の謎を利用したとんでもないお話の小説だが、そういうのが嫌いじゃない人はぜひ読んでもらいたい。結末も以外な終わり方である

『宇宙戦争1941』 Edit

日本
宇宙戦争1941(2011年)・宇宙戦争1943(2012年)・宇宙戦争1945(2013年)
著者:横山 信義

「奇襲ハ先ヲ越サレタリ―真珠湾を攻撃した異形軍団の正体とは!?」

宇宙戦争という映画・小説を見たことある人ならご存知だろう。あのトライポットが現れる・・・。大阪ではトライポッドを何体か倒したらしいぞ・・・!
日本軍の真珠湾攻撃部隊が真珠湾に到着した時にはすでに米艦隊は壊滅、謎の兵器が蹂躙していた
日本軍はこれらに攻撃をするがなんと250kg爆弾の直撃でもびくともしない敵、逆に相手は熱線攻撃をするが百発百中当たれば即死という高性能。
航空戦だけではなく海戦もある。マラッカ海峡の戦いでプリンス・オブ・ウェールズとレパルス、フィリピン救出作戦で金剛・榛名・高雄・愛宕がトライポットと死闘を繰り広げる。
みんな大好き三式弾も第2巻で登場。3巻では日米英独伊仏ソ艦隊vs宇宙人という艦これ顔負けの多国籍艦隊が登場。さらにこれまたみんな大好き空の魔王ルーデルと加藤隼戦闘隊で有名な加藤建夫が共闘するという夢のコラボが見られる。
他にも大小問わず多数の艦艇が出るため提督は是非とも見てもらいたい作品である。
世界観的にも異形の兵器に軍艦が立ち向かうという艦これにも似た雰囲気です。
もし艦これ世界にトライポット軍団が現れたら、艦娘たちはどのように立ち向かうのだろうか・・・

『第七の艦隊−奇襲!!重雷装艦隊出撃す!』 Edit

日本(2012年)
著者:東剛道
出版:学研(歴史群像新書)
空母機動部隊が主役の戦場で、重雷装艦や甲標的母艦はどのような活躍が出来るのか?というIFを描いた作品。
艦これに実装されている「北上」、「大井」、「千代田甲」、「伊8」が主役となっている。
IF作品らしく、これらの艦が太平洋を縦横無尽に活躍!・・・・と言う事は無く、
ストーリー前半は彼女達はみ出し者の艦を集めた特殊部隊創設の為に、“海軍一の変人”黒島亀人が軍令部や連合艦隊首脳部の間を東奔西走する姿が延々と描写される(むしろ、こっちの方が本筋に近い)。
史実通り真珠湾攻撃が開始されると、機動部隊の撤退を援護する為の囮となり、追撃してきた巡洋艦を何とか撃破。
ハイライトは珊瑚海海戦で、撤退中の空母「ヨークタウン」を待ち伏せて攻撃を仕掛ける。その成果は・・・・?

『帝国大海戦』 Edit

日本(1994年)
著者:伊吹秀明
出版:学研(歴史群像新書)全8巻+外伝1巻
ナチスもソビエトも台頭しなかった架空の1940年代、日英同盟と米仏蘭連合の間で第二次世界大戦が始まる……というシチュエーション型の仮想戦記。
著者がライトノベル畑にも軸足を置いているだけあり、軽妙な文体でサクサクと読める。
登場する兵器は基本的に史実で建造または計画されたものばかりなので、艦これでミリタリーを知った人でも取っつきやすい。
また、フランスやイタリアといった中々知られていない海軍の奮闘も見どころ。

ちなみに作者の著名作には同時期に『ガルパン』に先駆けること20年、ネコミミ美少女が戦車を操るその名もずばり『出撃っ! 猫耳戦車隊』(ファミ通文庫)があったりしている。この国はとっくに手遅れやったんや……

『バトル・オブ・ジャパン』 Edit

日本 (1997年)
著者:青山智樹
出版社:KKベストセラーズ(ワニ・ノベルス)
1941年12月、真珠湾に迫る日本機動部隊から攻撃隊が発進する直前、日米開戦は回避された。「ハワイ危機」と呼ばれる一連の事件は、ハル・ノートの内容に驚いた合衆国大統領補佐官の「日本の首相と会見すべきです」という主張によって回避された……
それから数年。日本は見事に平和ボケし、海軍主力の零式艦上戦闘機ですら老朽化で主脚折損事故が頻発する始末。そんな中、陸海軍で別個に展開していた航空戦力を効率よく運用するため、両者を独立統合し大日本帝国空軍が発足することとなった。
主役の1人、飛島翔は空母『蒼龍』整備兵だったが、航空機搭乗員への道を目指して空軍への移籍を申し出る。戦闘機志望だったが、適正なしと判断され偵察機搭乗員に回されてしまう、のだが……
一方、件の大統領補佐官は1944年のF・D・ルーズベルト大統領の再選時に副大統領に、さらにルーズベルトの死に伴って第33代アメリカ合衆国大統領の座に就いた。一旦は日米開戦を回避した彼だったが、彼のアメリカ合衆国の社会に対する過剰な憧憬は、やがてその広がりの障害になる大日本帝国とドイツ第三帝国への憎悪へとつながっていく。
そして1945年、米海軍空母機動部隊による日本本土奇襲により太平洋戦争は開幕。大和以下の戦艦も赤城以下の空母機動部隊も身動きもとれぬままに壊滅し、マリアナは失陥。日本本土上空にB-29の大群が迫るが────

タイトルにある通り開戦いきなりからの日本本土防空戦から始まるという内容。「え、無理ゲーじゃね?」と思わせるテーマながら、仮想戦記の大御所青山智樹がそう考えさせることなく描き切っている。
著者によると当初の構想ではタイトル通り日本本土防空戦を中心に3巻程度で収めるつもりだったが、どんどん話が広がり結局終戦までの全8巻となった。

ハードなウォーシミュレーションの一方、アクションノベルの要素も盛り込んでいる。
飛島翔は日本本土奇襲作戦の一環として行われた東京中枢攻撃作戦に参加したあるF4Uコルセアのパイロットと空戦状態になる。そのパイロット──もう1人の主人公であり、大統領の甥であるパトリックとの因縁の戦いもこの時始まる。

艦これ登場艦では、大和は描写は少ないながらも神がかり的な強さを示す一方、一航戦・二航戦と大鳳はほぼいいとこなしなのでファンの方には厳しいかもしれない。一番見せ場があるのは伊勢姉妹か。終盤で沈んでしまうけど……
航空機では烈風が中盤以降の主人公機として大活躍するのでファンの方は必見かも。壊されまくるけど。
萌え要素はないが、飛島翔とその師匠筋である饗庭鱗との掛け合いは作品の中のオアシス。
日米とも苦しいはずなのだが、悲惨な描写はどちらかと言うと米軍側が多い。

ちなみにパトリックの名前は別の作者・作品からの借用のようである。彼の叔父、つまりトルーマンの代わりに第33代大統領になった人物とは……【知りたい人・知ってる人だけ反転】:アドルフ・ヒトラー。所謂「ヒトラーユダヤ人説」(著者自身はこの説には懐疑的である)をとり、事実を知ったヒトラーはアメリカに移民し、建築家兼アマチュア画家として成功、やがて政治の舞台にも進出していくのだった。

『大和咆哮ス! -連合艦隊vs米太平洋艦隊-』 Edit

日本 (2000年)
著者:小林たけし・他
出版社:学習研究社

架空戦記漫画6編(『戦艦大和 ガダルカナルに吼ゆ』『これが男の生きる道』『神の鉄槌』『最後の雷撃』『連合艦隊最後の海戦』『日米沖縄決戦 紀伊降臨!』)を収録したオムニバス短編集で、戦艦大和から潜航艇蛟竜までシチュエーションも作者もまったく違う話が収録されている。話の間にも主役兵器の詳細データ・艦艇ミニコラムなどが挟まってどこから読んでも面白い。
松本零士へのインタビューは大和や戦争への思いが語られているので、ファンの方は目を通してみてほしい。
なお、『日米沖縄決戦 紀伊降臨!』のみ短編ではなく、コミック版『不沈戦艦紀伊』の一部抜粋になっている。そのためシチュエーションがわかりづらいが、端的に述べれば連合艦隊全艦での天一号作戦のさなかに早期に発見されて集中攻撃を受けている大和を救援に紀伊が来たという形である。

ノンフィクション・書籍 Edit

『機動部隊』 Edit

1951年、日本
著者:淵田美津雄、奥宮正武
出版:日本出版共同/朝日ソノラマ/学習研究社(学研M文庫)
まだ占領下に出版された戦記の古典中の古典、ミッドウェー海戦終了直後からマリアナ沖海戦までの空母部隊の戦いやその準備が記されている。
共著になっているが、実質は奥宮さんがほとんどを書いているので、彼が航空参謀を務めた第二航空戦隊の動きが中心になっている。
度々の陸上転用で低下する搭乗員の技量の差をもって日本は敗れ去ったという結論が描き出される。
著者は朝日ソノラマの文庫版で所有しているが、現在も版を変えて発売されているのではないだろうか。

『マリアナ沖海戦』 Edit

2007年、日本
著者:川崎まなぶ
出版:大日本絵画
マリアナ沖海戦で日本が敗れたのは、搭乗員の技量不足だけなのか、定説となった奥宮の「機動部隊」に対して投げつけた疑問を解き明かしてゆく。
南太平洋沖海戦からの空母艦載機の動きを生存者から取材をしてまとめあげられている。
ガダルカナル島撤退の段階で航空戦力がすでに破綻していることがわかる。さらに、決して訓練不足ではなかったと主張する。
真珠湾攻撃でさえ、半年も訓練していない初実戦のパイロットが相当数いた事も解き明かされる*1
敗北の原因は、ひとえに数の差と電子機器の能力、信頼性であるというのである。
もっとも、数字のマジックがあって、ソロモン戦までで激しく消耗した士官搭乗員の飛行時間がが算入されていない。
日本海軍が多少の戦術を弄したところでいかんともしがたい状態にあったことを証明してくれる一冊である。

『超精密「3D CG」シリーズ 44 日本海軍 艦艇集』 Edit

2009年、日本
出版:双葉社
太平洋戦争期の日本海軍の艦艇のCG集。

戦艦・空母・巡洋艦・駆逐艦・潜水艦といった戦闘艦はもちろん、敷設艦や給糧艦、掃海艇といった裏方もしっかりCG化。

当時の艦艇の写真は殆どが白黒であったため(時代的に当然だが)、CGとはいえフルカラーの資料は何気に便利である(プラモ作成時とか、軍艦の絵を描く時とか)。

さらに艦艇や装備の詳しい解説、艦艇のデータ目録、艦艇名簿といった役立つ(?)コーナーも充実。

海軍オタなら持ってて損はない一冊。というかこの本があればだいたいの艦娘のことは分かる。

なお同シリーズからは他にも『奇跡の幸運艦 雪風』、『CGシュミレーション戦記 1942年艦隊決戦』、『超弩級戦艦 大和の最期』などといった書籍が出版されている。

『WW2イラストレイテッド 艦船名鑑 1939〜1945 改訂版』 Edit

日本
出版:光栄
日本、米国、英国などのメジャーな国からトルコやポーランドなどのマイナー国まで、排水量6万トンの戦艦から数百トンのコルベットまで幅広く二次大戦中の軍艦を扱った軍艦辞典。
字数の問題から等級ごとの説明に終始しているため個艦の活躍はそれほど語られないものの、側面図イラスト付きで、ほぼ世界中の軍艦を網羅するその情報量は魅力的なもの。
値段もその情報量に比べればかなり安価な部類なので、手元に一冊置いておいても損はないと思われる。

艦娘達だけでなく、彼女らと戦った相手の事を詳しく知りたい人には副読本としてぜひオススメの一冊である。

『第二次大戦海戦辞典1939~45』 Edit

日本
出版:光栄
『艦船名鑑』と同じく光栄の制作する、第二次世界大戦で発生した多くの海戦を網羅した海戦辞典。
真珠湾攻撃やミッドウエイ海戦、南太平洋海戦などのメジャーどこは無論、レンネル島沖海戦やセント・ジョージ岬沖海戦などのマイナーなものも、海戦図や両軍参加艦艇等を列記している。
更に太平洋に留まらず英独が死闘を繰り広げた大西洋での諸海戦や、日本では殆ど語られない地中海でのイギリスとイタリアの両海軍の戦いも事細かに書いており、第二次世界大戦の海戦を知るにはオススメである。
海戦内容の説明も事細かで第3次ソロモン海戦での夕立や綾波の奮闘等、個艦の活躍も描かれている。
手頃な大きさで読みやすく、艦娘たちの活躍を知るには有益な副読本です。

『歴史群像 太平洋戦史シリーズ』 Edit

日本
出版:学研パブリッシング
太平洋戦争時の海戦や兵器を特集を組んで扱っている。現在でも続刊が刊行中である。
艦艇の特集は退役自衛官らがライターとなり、既成艦船工事記録や戦闘詳報といった当時の記録を基に各艦の変遷を精査するなど、かなり突っ込んだ内容になっている。
初期に刊行され手に入りづらいものについては【完全版】として新版がリリースされている。

『戦史叢書』 Edit

1966-1980年(全102巻)、日本
出版:防衛研修所戦史室・編、朝雲新聞社・刊
所謂「公刊戦史」。戦史研究のバイブルとまで言われるが、出版が古いので現在の目で見ると誤りも多いのは仕方が無い。
一般販売はされておらず、閲覧は大きな図書館から借りるか、古書店で入手するしかない。
現在、新たに発掘された資料による増補改訂を含んだデジタル化の作業が進められている。

『聯合艦隊軍艦銘銘伝―全860余隻の栄光と悲劇』 Edit

1993年 日本
著者:片桐大自
出版:光人社
日本海軍の艦艇を全て網羅した辞典的な1冊。
著者は、海軍の造船の道を志した後、文科に転身して日本語研究や辞書の編纂にあたった経歴を持ち、海軍艦艇についての知識はもちろん、日本語文化にも精通した人物。
その取り扱い範囲は、幕末の幕府軍艦から昭和末期頃までの海自艦艇にまで至るほど幅が広い。
艦艇の命名経緯やその意味の解説からはじまり、1隻ずつ丁寧かつ情緒豊かにその生涯が書き綴られている。
海軍ファン・マニア必携と言っても過言ではない名著である。
著作時期の関係で、現在の最新の考証とは食い違う部分もあるが、それでも1線級の資料として大いに価値がある。
辞典ではあるものの文体が読みやすく、読み物としても十分楽しめる出来で、艦これで海軍艦艇の世界を知った提督諸兄にもお勧めできる一冊である。
2014年に新装版が出されたので、値段こそ張るものの手に入れやすくなった。

※ただし、駆潜艇や輸送艦など番号表記の艦や潜水艦は、基本的に扱っていないのでその点は注意。

『あゝ伊号潜水艦』シリーズ Edit

『あゝ伊号潜水艦―海に生きた強者の青春記録』『続・あゝ伊号潜水艦―水中特攻隊の殉職』
1979年、1980年 日本
著者:板倉光馬
出版:潮書房光人社
最上で上官を殴って青葉に転勤させられ、真珠湾攻撃に参加し、落ちたら心臓麻痺で死亡確実の冬のオホーツク海に落ちて何故か助かり、最後には回天(伊58曰くアレ)の指揮官を務めた板倉光馬の自伝的作品。
やや古い本だが、新装版が出ているため入手は容易。
元潜水艦長だけあって戦いの緊張感がよく表現されている一方で、文章は軽快で読みやすい。
真珠湾攻撃、モグラ輸送、キスカ島撤退などについて潜水艦視点で書かれており、内地の指揮官や水上艦視点で書かれた他の多くの作品とは一線を画する。
続編はサブタイトルからもわかるとおり、ほぼ全編にわたってアレについて書かれている。
どのような訓練を行っていたか、何を思ってアレを作ったのか、立案・設計者は如何に殉職したか、アレなんて大嫌いな人ほどぜひ目を通してほしい内容である。

『戦艦大和のしくみ』(カラー版徹底図解シリーズ) Edit

2012年 日本
著者:著 矢吹明紀 他
出版:新星出版社
そのタイトルの通り、戦艦大和のメカニックから当時の艦内生活まで、ありとあらゆる大和に関する事柄が紹介されている。
また、その姉妹艦である武蔵や信濃のエピソードも、大和に劣らぬ内容で記されている。
また驚くことに、5章あるうち1章丸々使って、古代ギリシャのガレー船(!)から始まる軍用艦の歴史(超弩級の語源となったドレッドノートも勿論紹介されている)、
日清戦争から坊ノ岬沖海戦まで戦艦が関わる主要な海戦(太平洋戦争の海戦メインだがBismarckが唯一参加した戦い「ライン演習作戦」も含まれている)が、分かりやすい資料と共に解説されている。
なお、肝心の解説内容に関しては若干怪しいところもあるので注意。
他にも、当時日本海軍に所属した各種軍艦や、アイオワなどの世界の戦艦が紹介されており、
戦艦を知らない着任したての新米提督にも非常にオススメの本である。

『福井静夫著作集 軍艦七十五年回想記』 Edit

1992年〜2003年 日本
著者:福井静夫
出版:光人社
日本の軍艦研究の第一人者とも呼ばれる福井静夫の著作集。著者が帝国海軍の造船官だったこともあり、個々の艦艇の戦史よりも、艦艇開発史や艦級レベルでの性能の解説に重点を置いている。
全12巻(新装版は現在9巻まで刊行)。各巻ごとに扱っている艦種が異なり、全巻を合わせると第二次大戦時の帝国海軍艦艇のほとんどを始めとして、明治時代の艦艇や一部の海外艦なども網羅されている。
内容は各艦級の大まかな解説と、かつて軍事雑誌に掲載された記事の再収録からなる。特に後者はかなり内容が濃く、戦艦や駆逐艦といったメジャーな艦に留まらず、日露戦争期の艦や海防艦などの補助艦艇に至るまで、造船官時代の体験を交えた回顧録的な解説がなされている。
艦によって解説の密度に大きな差がある事や、刊行された時期がだいぶ前なので情報が古い事などの欠点もあるが、艦娘たちが作られた背景や、どのような能力を持っていたのかを知るのには役立つだろう。
ただし、全巻購入して読破するにはそれなりの金と労力が必要となる。編集者は数巻づつ図書館から借りて読んだ。

『艦長たちの太平洋戦争』 Edit

日本
著者:佐藤和正
出版社:光人社
著者が太平洋戦争中に実際に艦長として指揮をとった人々に行ったインタビューをまとめた本。
その範囲は戦艦「大和」から戦時中に急増された艦名のない海防艦の艦長まで多岐にわたり、各軍艦の奮戦の模様や、艦長たちの労苦の模様などが色濃く描かれている。
そのため面白さだけではなく、情報量も非常に多い本である。
インタビューされた人の中には、艦これに参加している艦で艦長や副長以下の役職を勤めた方も多くおり、諸提督は読んでおいて全く損は無いと言える。
具体的には第三次ソロモン海戦での「綾波」の大奮戦、「伊168」のヨークタウン撃沈劇の顛末、「時雨」のスリガオ海峡海戦での激闘
エンガノ沖で見せた「伊勢」「日向」の防空術、艦長が親友だからこそ出来た「文月」「皐月」の巧みな連携プレー、
自前の空襲回避法によって爆撃機に挑んだ「那珂」、文字通りの五里霧中を進む「響」のキスカ撤退戦、「伊401」の最初で最後の出撃などがある。
どれもその場に居た人間だからこそ証言できる臨場感に溢れ、ありありとその光景が浮かぶ戦記である。
自分の好きな艦娘の奮闘を知るにも持ってこいの本だろう。

『第七駆逐隊海戦記』 Edit

2010年 日本
著者:大高勇治
出版:光人社
御著者は雷と潮の通信担当だった方。華々しい大型艦の裏で縁の下を支え続けた海の男達「駆逐艦野郎」の物語。
潮の爆雷誤投下、開戦時のミッドウェー砲撃や鼠輸送の話が等色々あるが、
それら以外にも南洋原住民との交流や休息地での娯楽話など様々なエピソードが詰め込まれてる。
潮ちゃんがびくびくした性格なのは海の男達の姿を見てきたからかも知れない。駆逐艦に興味を持たれた諸兄は読まれるべき一冊。
(ただ「小西司令が大鷹艦長に」となっているが実際には雲龍艦長となってたり、
上記の爆雷誤投下と陸奥沈没の件等、間違っていたり怪しい記述もあったりするので注意)

F-Files No.24 『図解 軍艦』 Edit

日本
著者:高平鳴海/坂本雅之
出版:新紀元社
戦艦をはじめとして、そもそも『軍艦』とは何か? 寿命や値段はどのくらいか? ダメージコントロールとは? 艦内ではどんな生活をしているのか? など、さまざまな疑問について 図解付で解説している書籍。
大戦前〜現代までの軍艦全般がテーマなので艦娘たちの話題は直接には扱ってないが、軍艦の迷彩塗装の説明で瑞鳳の迷彩塗装とその意図を図解で説明していたり、砲の射程延長にあわせての艦橋の大型化の具体例として金剛の新造時と改装後の比較シルエットの図解が載っていたり、と要所要所でニヤリとさせられる。
基本的にひとつの話題に図解入り見開き2ページで説明というかたちをとっているので読みやすい。
軍艦全般に対する入門書として手にとってみてはいかがだろうか。

『海上護衛戦』 Edit

1953年 日本
著者:大井篤
出版:朝日ソノラマ文庫/学研M文庫(絶版)、角川文庫(2014年5月発売)
43年から45年まで海上護衛総司令部の参謀を務めた著者が、物資輸送におけるシーレーン確保に奔走した経験を語った著作。
「沈黙の作戦」とも呼ばれる海上護衛の性質上、華々しい戦果とはほぼ無縁。
商船保護に対する海軍上層部の無配慮により、配備される艦船は老朽艦(著者曰く「お婆さん艦」。艦娘諸嬢が聞いたらどんな反応を示すだろうか)や小型艦ばかり。
もちろん、実際に保護対象の商船や輸送船に被害が出れば、容赦無い非難を浴びせられる。
それにも負けずにコツコツ育てた対潜哨戒飛行隊を電話一本で借り上げられ、あっさり使い潰される。
手段であるはずの海上決戦や「殴りこみ」を目的と履き違えた連合艦隊により、何度も理不尽な目に遭う著者。そして輸送路を断たれて物資も食料も困窮していく日本。
海上護衛総隊の最低限の燃料の割り当てさえも、大和水上特攻作戦に充てられるとの知らせが届いたとき、ついに著者は激昂し、叫ぶ……。
著者自身も認める「血湧き肉踊らざる戦記」であるが、執筆から60年以上経った今でも「海軍ヲタ必読の一冊」として名高い。
2014年5月24日に角川文庫での再販が決まり、今までよりずっと入手がしやすくなると思われる。
この機会に海上護衛に興味のある提督や、いつも資材がカツカツの提督諸兄にはぜひ読んでもらいたい本である。

『空母瑞鶴 日米機動部隊最後の戦い』 Edit

日本
著者:神野正美
出版:光人社NF文庫
真珠港攻撃に参加した空母のうち最後まで生き残った瑞鶴。
その最後の戦いとなったエンガノ岬沖海戦(レイテ沖海戦)への出撃から戦闘、沈没、乗組員が救助されるまでが非常に細かく記されている。
生存者への丁寧な取材とアメリカの公文書まで調査した著者のリサーチ力には脱帽。
缶担当の機関員や機銃員、整備士などがあの日どのように行動し、何を考えていたのか。囮と知りつつわずかの艦載機を積み、遺書をしたためて出撃した人たち。
総員退艦の命令が下されたシーンは読んでいて感無量。
また、瑞鶴の生存者を救助してそのまま夜戦に突入、単艦で18隻のアメリカ艦隊に突撃していった駆逐艦初月(未実装)の壮絶な最後なども押さえておきたいところ。
読み物としてだけではなく、記録集としても秀逸。瑞鶴ファンは必読か。

『軍艦長門の生涯』 Edit

日本
著者:阿川弘之
出版:新潮社
巻数:上下巻(単行本)全3巻(文庫版)
戦艦長門の建造からビキニ環礁に沈むまでの彼女の歴史のみならず、当時の世の中の流れも記述され、
戦時のみならず、平時でも関東大震災、二・二六事件の連合艦隊の動きも克明に記されている。
書かれたのが70年代半ばと古いが、その分、存命だった将官クラスからの聞き取りもされている。
サボ島沖海戦の「ワレアオバ」の初出はここかもしれない(当時の青葉艦長久宗米次郎大佐が長門艦長に栄転している)。
図書館では全集に収録されているのを探すほうがいいかもしれない。

『戦艦武蔵』 Edit

日本
著者:吉村昭
出版:新潮文庫
大和型戦艦二番艦として建造された武蔵に焦点を当てた作品。
この作品は40年以上前に出版されたものであるため、当時存命していた技術者や乗組員の貴重な証言を集めて書かれた。
内容は「武蔵」の建造から沈没までの経緯を追ったもので、特に建造関係の記述に関しては興味深いものが多い。
「武蔵」は民間の三菱長崎造船所で建造されたが、民間で建造しなければならなかった故の弊害・苦労が紹介されており、関係者達の苦悩がよく分かる。
レイテ沖海戦の記述は本の全体量からすると少ないが、「武蔵」の壮絶な戦いぶりを詳細に知ることができる。
また、艦これでもお馴染みの艦が登場し、「武蔵」と意外な関わりがあるなど最初から最後まで楽しめる。
「武蔵」に興味を持ったなら是非一度は読んでほしい作品だ。
ちなみに「戦艦武蔵ノート」という取材日記が出版されており、「戦艦武蔵」の読了後併せて読むことを強く勧める。

『深海の使者』 Edit

日本
著者:吉村昭
出版:文春文庫
遠く離れた日本とドイツ。戦争中両国は潜水艦と航空機を使って技術や物資・人材を輸送しようとしていた―
遣独潜水艦作戦と呼ばれるこの作戦はアメリカ・イギリスの対潜哨戒網を突破し、ドイツと日本を往復することが目的であったが、伊8を除いて失敗に終わった。
本書ではそれら潜水艦の運命を綴った作品であり、乗組員達の並々ならぬ苦労が克明に記録されている。
ちなみに、序盤に少しではあるが甲標的が登場する。
派手な戦闘シーンはほとんど無いが、読み応えは十分にある。
潜水艦好きには一度目を通してほしい作品である。

『空白の戦記』 Edit

日本
著者:吉村昭
出版社:新潮文庫
太平洋戦争や日本海軍に関するドキュメンタリー短編小説(吉村氏本人曰く「戦争の影の部分に生きた人間を描いている」)が6篇収められた短篇集。
海軍関連では、第四艦隊事件における「初雪」「夕霧」を始めとした第四艦隊所属艦の悲劇を描いた『艦首切断』、友鶴事件で転覆した水雷艇「友鶴」とその艇内で行われた乗員たちの3日間のサバイバルと救出を描いた『顚覆』、
海軍中将・宇垣纏の最期を題材にした『最後の特攻機』、上述の『戦艦武蔵』の後日談で、「武蔵」の設計図紛失事件と、犯人の設計図工の少年を描いた『軍艦と少年』などが収録されている。
艦隊戦シーンは全くと言っていいほど無いが、日本の艦艇史を具体的に知りたい方や那珂ちゃんのファン辺りは読んで損はないはずの一冊である。

『雪風ハ沈マズ - 強運駆逐艦栄光の生涯』 Edit

日本
著者:豊田 穣
出版:光人社(新装版・文庫 単行本は入手困難)
人艦一如の真髄を最高度に発揮して、初戦から終戦まで常に太平洋の最前線で戦いつづけた不沈艦「雪風」の航跡を描く。93年刊の新版。運命とは、命を運ぶ、と書く。その単純な哲理を信ずることに徹して、激戦のさ中に艦と人とを預かり、豪胆なること山の如く、猛きこと火の如く。自ら幸運を招きよせる日本海軍随一の“豪傑艦長”。その指揮下に団結し努力し、苦難に堪えてみごとに勝ち抜いた駆逐艦の生涯。直木賞作家の海戦記。

著者の豊田穣は流行作家として大いに活躍したが、海軍兵学校(六十八期)を卒業している。「いずもま」こと飛鷹所属となり、九九式艦上爆撃機のパイロットとして「い号作戦」に参加、ガダルカナル島飛行場を攻撃した。この時に撃墜され米軍の捕虜になり、ソロモンからハワイ、米本土と捕虜収容所を転々とする。戦時中に空母エンタープライズの内部を見学した非常に珍しい日本人としても知られている。

『駆逐艦雪風 誇り高き不沈艦の生涯』 Edit

日本(1972年)
著者:永富映次郎
出版社:出版共同社
前出の豊田穣『雪風ハ沈マズ』と同じく、雪風の誕生から最期までを綴った通史。
海戦の背景や軍部の動向などの説明は手短にまとめ、太平洋戦争における雪風の行動を追っていく。
『雪風ハ沈マズ』ではほとんど触れられていない、戦後の返還活動にも多くのページが割かれている。
絶版なので古書店か図書館を当たる必要があるが、古書でも比較的安価(1000円〜1500円程度)で入手可能。
読みやすいので、『雪風ハ沈マズ』が読みにくいと思った人にはこっちがオススメ。

『暁の珊瑚海』 Edit

日本
著者:森史朗
出版:文春文庫
1942年5月7-8日に行われた珊瑚海海戦の記録です。日本側からは前半に祥鳳さん、後半に翔鶴さんと瑞鶴さん、米国側からはレキシントンさんとヨークタウンさんが参加し、ソロモン諸島の南〜南西の海域で対決しました。先月4月18日のドゥリトル空襲と翌6月5-7日のミッドウェー海戦に挟まれて目立ちませんが、史上初の空母戦です。前例がない戦闘だけに双方苦悩を重ねます。読後には、この経験を次に生かしてほしかったと、思わざるを得ません。

比叡の愛する井上成美提督がこのときの第四艦隊司令長官です。また、第一章で菊月が被弾・行動不能になります、一緒に涙しましょう。

『まるわかり 図解 太平洋戦争海戦史』 Edit

日本
著者:ゼロプラス
出版:ワニ文庫
真珠湾攻撃から呉軍港空襲まで、太平洋各地で繰り広げられた海戦の記録。
それぞれの海戦における両軍の兵力や戦闘の推移がわかる。
ただし個別の艦名が明記されているのは戦艦と空母のみで、それ以外の艦艇は重巡洋艦×2といったように基本的には参加数しか書かれていない。
艦これで再現された海戦を探してみるのもまた一興。

『キスカ島 奇跡の撤退 木村昌福中将の生涯』 Edit

日本
著者:将口泰浩
出版:新潮文庫
北太平洋方面の日本軍最大進出地点、キスカ島。
アメリカ本土上陸の橋頭堡を夢見て占領したこの島に、アメリカ軍の逆襲が迫る。
既に隣のアッツ島は敵上陸部隊との壮絶な戦闘の末、玉砕した。
絶望に沈むキスカ島守備隊を救出すべく、「阿武隈」以下「木曾」「島風」らが急行する……

後にアメリカ軍をして「奇跡の作戦」「パーフェクトゲーム」と言わしめたキスカ島撤退作戦。
守備隊5200名を1人も欠けることなく生還させた本作戦を中心に、その指揮官・木村昌福中将の戦歴と生涯を記した1冊。
確実に全員を連れ帰るために、司令部と対立してまで突入の機会を待ち、一度は決行を諦め帰投したとき彼は誰にともなく言う。
「帰ろう。帰れば、また来ることができるからな」
この言葉の意味を是非とも胸に刻んでほしい。

『海軍砲戦史談』 Edit

日本
著者:黛 治夫
出版:原書房(オンデマント版)
著者は我輩の6代目艦長なのだな。砲術学校教頭も勤め当時は砲術の第一人者として自他ともに認める大家だったのだぞ。そんな著者が戦後になって書いた日清・日露両戦役以来の海戦と艦砲の歴史をふり返った本だ。黛3部作として本著の他に『艦砲射撃の歴史』『海軍砲術史』という著作もモノにしておってな。読み易くて面白いとマニアの間では結構人気であるのじゃ。

作者の黛治夫は利根艦長在任中のビハール号事件の責任者としてのみ現在では知られているが、戦前は艦砲撃戦の大家として知られていた。所謂「論者」である。戦後は極洋捕鯨(現在の極洋、冷凍加工食品等でお馴染み)で捕鯨砲の研究に勤しんだ。某国営放送が何度かに亘って放送した録音テープを基にした水交社のアレにも「論者」として登場している。

『彗星夜襲隊』 Edit

日本
著者:渡辺洋二
出版:光人社NF文庫他
昭和20年春。日本軍が攻撃力の主体を特攻に依存しつつあった頃、正攻法の通常攻撃を繰り返して戦果を挙げ続けた部隊があった。
美濃部正少佐率いる独立夜襲部隊・芙蓉部隊である。

優れた性能を秘めながらもその扱いの難しさから落第機の烙印を押されていた艦上爆撃機「彗星」を駆り、驚異的な稼働率と生還率を以って沖縄戦を戦い抜いた芙蓉部隊の設立と特攻拒否に至る背景から終戦までの奮闘を記した一冊。
陸海軍全体が一億火の玉と叫ぶ最中「特攻は兵法の外道」と言い切り、小規模部隊ならではフットワークの良さを活かして独自の訓練法・機体整備法を編み出していくその姿はまるで小説のよう。
彼らの成果は神がかりの奇跡ではなく強固な信念とたゆまぬ努力という人間の力によるものだ。
安易な精神論に走ることなく、勝つために為すべきことは何かを考え実行した結果がそこにある。

艦これゲーム中の装備カード「彗星一二型甲」の解説文中でも名前が挙げられているこの芙蓉部隊は、艦上爆撃機を主力とする海軍の部隊であるが基地に拠点を置く陸上部隊であり、艦艇や艦隊との接点は乏しいことを注記しておく。

蛇足だが、著者の渡辺洋二氏は航空機研究家として知られており多くの著作を発表している。艦これと関係があるものとしてはこれ以外にも、海軍の急降下爆撃機を題材にとった『必中への急降下』、真珠湾攻撃時に赤城飛行隊長として零戦を率いた板谷少佐の悲劇『重い飛行機雲』、震電や零式水上観測機について書かれた『異端の空』などがある。

『勇者の海 空母瑞鶴の生涯』 Edit

日本
著者:森史朗
出版:光人社
建造中の1940年頃から珊瑚海海戦から帰投した1942年6月までの
空母瑞鶴乗員と造艦技術者の苦悩と苦闘が書いてあります。
海や空の平穏さとは対称的で、けして華々しい話ではありませんが
「空母瑞鶴 日米機動部隊最後の戦い」とあわせて瑞鶴ファンの方はどうぞご一読ください。
ミッドウェー海戦により妾の子から虎の子となった翔鶴・瑞鶴姉妹。続編が待たれます。

第二章、瑞鶴が神戸の川崎造船所から呉に回航するシーンで第四艦隊事件の事例がひかれ、
睦月ちゃんについて1ページを割いています。読んで誉めてのばしましょー

『撃沈戦記』 Edit

日本
著者:木俣 滋郎
出版:光人社
 シリーズとして、『撃沈戦記』の無印、『PART2』から『PART4』まであるほか、2013年には太平洋戦争時の日本海軍の25隻を再掲載した『海原に果てた日本艦船25隻の航跡』が発売されている。
特徴としては、状況の流れの解説に重点を置いて書かれていることが挙げられ、歴史解説書の趣がある。「兵器の解説書とか読んで艦船の知識は得たけど、ざっくりとした戦記が読みたい」という提督のステップアップには丁度よい。また、兵器の性能や、その時の国家の状況などはさわり程度しか触れていないため、本筋からの脱線が少なくテンポよく読める。
 無印から4までは、古今東西の海戦について触れており、太平洋戦線の有名どころでは神通の壮絶な戦いぶりが分かるコロンバンガラ島沖海戦、羽黒の悲しい最後に涙せずにはいられないペナン沖海戦が取り上げられている他、スラバヤ沖海戦の前座にも関わらず知名度があまり無いバリ島沖海戦(朝潮たちが活躍)、果てはタイ王国海軍の海防艦トンブリとフランス軽巡ラモット・ピケの戦いという、非常に地味な海戦話まで紹介されている。
 また、西洋に関して言えば、「装甲艦への攻撃法は体当たりが最良」という変な戦訓を残したリッサ島沖海戦から始まって、第一次世界大戦におけるドイツ軽巡エムデンの活躍や、ドッガーバンク海戦といった超有名どころから、独領アフリカのルフィジ河口で繰り広げられたドイツ軽巡ケーニヒスベルグと英軍の泥仕合といった非常に地味なところまで幅広く取り上げられている。
 但し、無印から4までに関して言えば、記載誤り(艦名の取り違え)が結構あるのが難点であるほか、資料の出典が書かれていないため、裏取りができない。
 なお、欧州海戦のみ抜粋収録した「欧州海戦記」が全2巻発刊されている。

『我が青春の追憶 一水兵がとらえた太平洋戦争』 Edit

日本
著者:柴田芳三
出版:個人 (webページ 我が青春の追憶
Web公開されている、個人出版物の自叙伝である。執筆した柴田芳三氏は既に他界されており、その折に息子さんが個人出版本を丸々Web公開に踏み切ったという経緯がある。
柴田氏は、太平洋戦争において、駆逐艦『敷波』、『磯風』に乗り込まれた他、海兵団、砲術学校で体験したことを書かれている。
描かれているのは軍隊生活という日常と、戦闘という非日常だが、現代の一般人からしてみれば、柴田氏の体験というものは全て非日常的に思える。しかし、その様な中でも現代の一般人に通ずるところがあり、親しみを覚えたりする。
気取らず、思ったこと、体験したことを素直に書いてある。全編通して無料なので、是非読んでもらいたい。

『赤道南下』 Edit

日本
著者:海野十三
出版:中央公論新社
日本のSFの父、海野十三が巡洋艦青葉での生活をのんびりと綴る従軍記録小説―
最初に言ってしまうが、本作品では青葉の活躍はみられない。そう、直接的な戦闘はないのだ。
しかし、この作品の見どころは科学者であり作家でもある海野の細かな観察とユーモアのある文章で書かれた艦船での生活記録だろう。
戦時中のため伏字は多いが、ソロモン海戦での戦況も少し読み取れるだろう。
居住性は悪いが、艦船での生活がどの様なものなのかが知れる貴重な記録なため、艦船の性能だけでなく、
乗組員の生活なども知って欲しいので、是非とも読んで貰いたい。

『戦艦大和ノ最期』 Edit

日本
著者:吉田満
出版:講談社文芸文庫
 題名のとおり、天一号作戦(坊ノ岬沖海戦)における大和の出撃から最期までを、少尉・副電測士として大和に乗艦した著者の体験を通して描く一冊。
 初霜が生存者を救助する際に取ったとされる行動(詳細は初霜のページを参照)が虚構であると批難されるなど、内容には著者の創作も混じっているとは言われているものの、理不尽な作戦によって必敗と必死を義務付けられた若い士官達の苦悩、凄惨な戦闘、沈没後の生と死の間を縫うような漂流など、全編を通じたリアルな描写は圧巻である。
 本書は様々な出版社から出版されている。その中で講談社文芸文庫版は最も新しく(1994年)出版されたため、一番手に入りやすいと思われる。しかし片仮名交じりの文語体(ただし新字体新仮名遣い)で書かれているために、人によっては敷居が高く感じるかもしれない。その場合は他の出版社の平仮名・口語体・新字体・新仮名遣いで書かれているものを探そう。出版社によって初稿・改訂稿・決定稿の差や、平仮名か片仮名か・新字体か旧字体か・新仮名遣いか旧仮名遣いか・口語体か文語体か、の違いがあるので、読み比べてみるのも面白いかもしれない。
 大型艦建造が実装され、大和を手にする提督が増えることだろう。本書を通じて、彼女や彼女と共に戦った人々に思いを馳せてみてはいかがだろう。

『陸軍船舶戦争』 Edit

日本
著者:松原茂昭/遠藤明
出版:星雲社
日本陸軍が有した船舶部隊、いわゆる「暁部隊」の興亡を、戦史・技術史ひっくるめて綴った一冊。
陸軍に徴用された輸送船や病院船、まるゆ大発あきつ丸などの陸軍特殊船といった陸軍開発の船舶の開発や運用に関する試行錯誤。そして彼女たちが身を投じた戦場の様相を、大体この一冊で知ることができる。
あきつ丸やまるゆの実装で陸軍船舶に興味を持った方は、是非とも一読してみてほしい。

『陸軍潜水艦―潜航輸送艇マルゆの記録』 Edit

日本(2010年)
著者:土井全二郎
出版:光人社

開発秘話や乗員の体験談、艇の構造なども細かく描かれており、まるゆが好きな提督なら読んでおいて損はない一作。急に潜水艦に乗ることになり、イロハから学ぶことになった陸軍兵らの苦労を知ることができる。
まるゆのページで紹介されていた小ネタの大半が記載されているので、もっと詳しく知りたいならばおすすめ。

『美保関のかなたへ―日本海軍特秘遭難事件』 Edit

日本(2005年)
著者:五十嵐邁
出版:角川学芸出版

1927年に発生した『美保関事件』(島根県美保関町沖での夜間演習中、神通が二等駆逐艦『蕨』に、那珂が同じく二等駆逐艦『葦』に衝突し、多数の死者を出した事件)について記した書籍。
著者は乗組員ほぼ全員が死亡した駆逐艦『蕨』の艦長の長男であり、事故のこと、その後の顛末などが事細かに書かれていた。
夜戦に関しての記述なども細かく描かれており、読んでおいて損はない一作。

なお著者の父で駆逐艦『蕨』艦長の五十嵐恵少佐は原忠一、山口多聞などの太平洋戦争期の名だたる指揮官と海軍大学校同期で、最終章では度々亡き友人の元を訪れた彼らの逸話なども語られている。
特に五航戦司令であった原忠一少将がミッドウェー作戦後に見たと言う、山口多聞少将と飛龍の出てくる夢の話は必見と言っても良い。

『魚雷は大人になってから』各編 Edit

日本
著者:SUDO
webページ 真実一路内部の各編参照
当時(西暦2000年)としては珍しい、というか当時、軍事解説講座という題目のサイトなどほとんど存在していなかった中での、談話形式による軍事解説講座である。
某美少女ゲームのキャラクター2人と、執筆者SUDO氏が全国の軍事マニアに贈る、魚雷の話である。キャラクター固有ネタというのは全く出ないので原作未プレイでも読めるが、談話形式というものが苦手な人はついていけないかもしれない。
魚雷という兵器の、機械的な進化、それに伴う戦術の変化、そしてそれが某海軍の戦略すら変質させてしまうまでの軌跡を、小難しい数字的など出さない、ざっくばらんな解説で流していく。これが『無印(前編)』、『中編』、『後編』である。
『番外編』は、魚雷から離れて砲撃の話、つまり必然的に戦艦の話になっている。戦艦の主砲というものが、大砲の物理的な形そのものは連続的に進化しているのにも関わらず、運用の変化が実に激しいものである、ということを解説している。また、併せて対の存在である装甲板についても解説している。
『番外編2』は、第二次世界大戦中の主要な戦艦について、『番外編』の抽象的な解説を踏まえた上での、実例を出しての具体的解説である。結構な長編であり、読了までは根気が要る。
総じて、基本的に、日本海軍の漸減邀撃作戦がどういったものであるのか、列強海軍の基本戦略は何だったのか、といったことが理解できていないと、読んでも意味が分からないかもしれない。

なお、当時はWeb上の容量が限られていた関係か、はたまた版権の関係か、キャラクター絵は全く無く、絵と言えば解説用のグラフかSUDO氏の描いた軍艦の絵ぐらいなので、談話形式というものに華を求める人には厳しいかもしれない。

『巡洋艦「大淀」16歳の海戦〜少年水兵の太平洋戦争〜』 Edit

日本
著者:小渕守男
出版社:光人社NF文庫
従来の軽巡と全く異なる性格を持ち、就役直後は輸送任務に、そして帝国海軍最後の連合艦隊旗艦を務め、任を解かれた後はレイテ沖海戦や礼号作戦、
北号作戦といった戦争末期の作戦に参加、いずれも生還した事から海軍内でも幸運艦と言われながらも、呉で壮絶な最期を遂げた異色の軽巡「大淀」を
幻の兵隊と言われた海軍特年兵(海軍特別年少兵)として乗務した著者が描いた記録小説。機密情報など知る由も無かった末端の水兵の目を通して、当時の海戦を描いている。
現在でも、特年兵について扱った自伝は本書以外ほとんど存在せず、その意味でも貴重。
主砲発令所が著者の担当だった事から、主砲の15.5cm三連装砲の発射シークエンスの詳細、さらに新兵に課されていた戦艦仕込みのシゴキの一端、出撃が無かった時の艦内での日常を垣間見ることが出来る。
特にまともに動かす燃料も無い中応戦せざるを得なかった45年7月の呉軍港空襲での対空戦闘、そして迎えた最期の場面では、思わず目頭が熱くなる事間違い無し。

ついに実装された大淀。軽巡大淀をよく知らない方は彼女をより深く理解するために、元から大淀が好きだった人は是非ともバイブルに加えてみてはいかがだろうか。
不遇な最期を遂げたものの、いかにさまざまな幸運に恵まれ、乗組員から愛された艦だったかを知ることが出来るはずである。

※ちなみに、大淀の逸話の一つに「戦闘中に45ノット出した」と言うものがあるが、ソースはこの人(この本にも記述有り)である。
筆者の配置は主砲発令所であり、射撃に必要な艦の速力計を見ることができる立場にあった。

『高速戦艦脱出せよ! 』 Edit

イギリス(1980年)
著者:ジョン・ディーン・ポター
出版:早川書房

その日、英兵達は分厚い雲と霧の間から突如として姿を現した優美で巨大な戦艦を目にする事になった。
ツェルベルス(ケルベロス)作戦、大二次大戦屈指の奇跡の作戦である。
先の通商破壊作戦で大西洋を暴れまわり11万t以上の商船を拿捕・撃沈戦艦シャルンホルスト、グナイゼナウ、
そしてビスマルクと共にフッドを屠りPoWを撃破した重巡プリンツ・オイゲンはフランス南端ブレスト港に居た。
ドイツ支配下であり大西洋における独軍の通商破壊作戦の前線基地である。
だが連日の空襲に悩まされていた事もあり、英軍のノルウェー進行に備えドイツ本国へと三隻を戻す作戦が立てられ、
デンマーク沖を通る北周り航路ではなく、英国との間に横たわるイギリス海峡を突破するルートが取られる事となった。

しかし、そこは英国の目と鼻の先であり、レーダーと哨戒機による警戒網が張り巡らされ、機雷が敷き詰められている。
最挟部のドーバー海峡に至っては僅か31km、人が泳いで渡れる程の距離で沿岸重砲が対岸まで直接射程に収めていた。
勿論、各地の航空基地では無数の荒鷲達が爪を磨いでおり、背後には英海軍根拠地スカパーフローが控えている。
そして自国の名を冠するこの海峡においてスペイン無敵艦隊以来3世紀以上に渡って敵国艦隊の通過を
許してこなかった事が英海軍の誇りであり、ひいては英国民の誇りとなっていた。
この絶望的な航路を、荒鷲の大軍を従えた三隻の地獄の番犬を中心とする艦隊が如何にして白昼堂々駆け抜けたのか。

作戦立案段階の駆け引きから作戦の最期までを描いた作品である。
欧州ならではの太平洋戦線とは全く異なる戦線事情や駆け引きが面白く、大戦屈指と謳われる
奇跡の作戦がいかにして成し遂げられたかがスピード感を持って描かれており読み応え十分だ。
艦隊作戦における熾烈な制空権争いや、軍艦の航行速度の重要性を見せつけてくれるし、
艦これで語られる事の多い太平洋戦線の事情や軍部に対して、欧州ではどうだったのか、
似ている部分・異なる部分が見えるのもまた楽しめるポイントだろう。

『飛龍 天に在り−航空母艦「飛龍」の生涯』 Edit

日本(1994年/NF文庫として2013年発行)
著者:碇 義朗
出版:潮書房光人社/光人社NF文庫
作家であり、航空・自動車研究家でもある筆者が航空母艦飛龍の誕生からミッドウェーでの沈没までを描いた作品。執筆には飛龍乗員の戦友会である「飛龍会」や同会世話人を務められる萬代久男氏、
また蒼龍戦友会である「蒼龍会」も原稿チェックや資料提供に尽力いただいているため、情報の密度は素晴らしい物がある。
蒼龍や飛龍の建造時における軍令部の技術度外視の要求に対する現場の苦労、友鶴事件を受けての設計変更など紆余曲折を経ての完成と各種空母装備のテストに関するエピソード、
猛将と後に呼ばれる山口多聞や最後の飛龍艦長加来止男の意外な一面など、読む側が思わずニヤリとするようなエピソードを経て描かれる真珠湾攻撃の模様。
そこから南太平洋転戦時に立ち寄った各地で乗組員が見聞し、あるいは経験した珍事の数々から運命のミッドウェーが近づくにつれて静かに垂れ込める不穏な空気と遂に訪れた大海戦、
一瞬の隙を突かれて燃え落ちる他の空母達のため復仇を果たすべくただ一艦ヨークタウンへとその牙を猛然と振るう飛龍と所属航空隊の奮戦と反撃及ばず炎上する飛龍艦内における生きるための戦い。
そして下される退艦命令と巻雲による雷撃処分で静かに沈みゆく飛龍の姿が数多くの証言によって余す所なく綴られている。
また当時の情勢やアメリカ軍によるドーリットル空襲、日米海軍の空母運用術の違い、ミッドウェーにおいてあの空白の時間はなぜ生まれたのか、雷爆転装を下令するまでの司令部の逡巡はなぜ起きたのか、
利根のカタパルト不調は本当に敗因であったのかなどの様々な疑問が中立的な立場に立って分析されているので、あの時あの場所で敵味方問わず描かれていたであろう人間模様に思いを馳せてもいいかもしれない。
元は雑誌「丸」に執筆されていた連載作品であったが、後に書籍化され更に文庫化されているので、今から探す人は文庫版の方が手に入れやすいと思われる。
あとがきで、飛龍命名の元である「易経」の「乾為天」にある一節が本書の名前の元として紹介されているが、まさかそこから来るとは予想外・・・・・・。

『連合艦隊かく戦えり―太平洋海戦秘史』 Edit

日本(1975年)
著者:佐藤和正
出版:カッパブックス

太平洋戦争のいくつかの戦いをピックアップしてノンフィクション小説風に記したもので、臨場感のある描写と将兵達の心境や提督の判断なのが非常にわかりやすい作品。とくに第三次ソロモン海戦における、綾波の単艦突撃の場面は圧巻。当事者たちの証言を元にしており、日米の戦闘詳報では見えない部分まで丁寧に描写されている。

残念ながら絶版な上に再版の見込みも薄く、多くの図書館も収蔵しておらず、さらに収蔵してるところでも書架には出されてないところが多いのでお目にかかるのは困難でしょう。(私が私蔵してるものも半分以上ページのない不完全なものです・・・)

『Uボート・コマンダー』 Edit

ドイツ(1984年)
著者:ペーター・クレーマー
出版:早川書房
「女王陛下のユリシーズ号」が護衛船団の死闘を描いた作品なら、こちらはUボートの苦闘を描いたノンフィクションである。著者はUボートの艦長を歴任した、いわゆる「Uボート・エース」の1人で、本書は著者の回想録の体裁を取っている。内容はUボートの損失が激増する1943年5月から始まり、クレーマーはデーニッツ直々の命令を受けてUボート損失増大の原因を探るべく大西洋に漕ぎ出していく。
彼が指揮を執る「U-333」は、大戦後期の困難な状況に何度も撃沈の危機に晒されながら任務を遂行。その損傷は半端なく深刻で、よく生き残れたと関心するしかない写真も少なからず存在している。

また、Uボートの損失が激増した原因としてよく指摘されるのが、対潜戦術の向上と対潜兵器の発展だが、
本書では連合軍の宣伝工作や諜報戦、「ハフ=ダフ」と呼ばれた無線逆探知装置、航空機用探照灯「リーライト」、ミリメートル単位の電波を使用する高性能レーダーの開発など、
連合軍がUボートを狩り出す為にあらゆる技術を惜しげもなく投入していた姿が描かれており、単なる対潜兵器や戦術以外の最新装備がUボートを追い詰めていった事が伺える。

『はつ恋連合艦隊』 Edit

日本(2007年)
文:本吉隆 イラスト:まもウィリアムズ
出版社:イカロス出版
海軍士官を目指す3人の女の子の授業を通しながら帝国海軍創設期から大東亜戦争終結までを描いた解説本。
タイトルから分かるように「萌え×ミリタリー」なのだが漫画部分は解説への導入であり中身はほぼ戦史の解説書となっている。しかし、登場する女の子達も「大艦巨砲主義者」「戦史マニア」「航空戦好き」とそれぞれキャラが立っていてそれぞれの立場からの掛け合いは必見だ。
ちなみに助教として男性もいることにはいる。定期的にゲスなことを言う姿はまさにおまえら
「萌え×ミリタリー」ということで非常に提督諸兄にはわかりやすい本であり戦史を少しでも知りたい方にはおすすめ。

『特型駆逐艦「雷」海戦記』 Edit

日本 (1999年)
文 :橋本 衛
出版社 :光人社
開戦前からアッツ島沖海戦まで、雷の砲術員であった橋本衛氏による著作。
駆逐艦特有の過酷な生活環境や、工藤俊作艦長の元、アットホームな雷艦内の雰囲気、スラバヤ沖での英兵救助
、極寒のアッツ島での海戦、ヘンダーソン飛行場への駆逐艦のみでの突撃など、アジア・太平洋戦争を四荒八極
暴れまわった駆逐艦雷の素晴らしさをたっぷりと知ることが出来る。
文章も、思想がかっていない淡々とした情景描写に、橋本氏の少々皮肉めいた物の見方も相まり非常に読みやすい。
雷ファンはぜひ買って読んで欲しい。雷の事がもっと好きになるぞ!

『戦艦ビスマルクの最期』 Edit

イギリス(1982年)
著者:ルードヴィック・ケネディ
出版社:早川書房
その処女航海で、歴史ある誇り高きロイヤルネイビーの象徴と呼ばれた世界最大最強にして世界一有名な巡洋戦艦を撃沈し
その最新鋭戦艦も撃破、そして復讐に燃える海軍大国の投入可能な全海軍兵力を相手取った大追撃戦の末に散った
WW2で最も派手な戦歴を持つ戦艦ビスマルク。
その栄光と壮絶な最期を、追撃戦に自身で参加したが故の情熱で、軍資料を調べ上げ生存者を探し出しその証言を積み重ねて書き上げたNF小説。
その特異な戦歴故に毀誉褒貶が激しく現在に至るまで論争の対象となっているビスマルクだけに
どちらにも肩入れせず公平に描くべく努めて書かれている。それ故に殊更感情に訴えかける様な書き方はされていないが、
フィクション以上に派手なその戦歴は読み応えがあり、忠誠を誓った騎士U-556の逸話などもドラマチックだ。
ドイツ・欧州を代表する戦艦であるビスマルクに興味を持ったならお薦め。
海洋冒険小説の金字塔「女王陛下のユリシーズ号」で絶大なる存在感で描かれた姉妹艦ティルピッツが
何故あそこまで英軍に恐れられたかがよく分かるだろう。

『駆逐艦「神風」電探戦記』 Edit

日本(単行本:1990年「憤怒をこめて絶望の海を渡れ」、文庫:2011年、改題)
著者:「丸」編集部
出版社:光人社NF文庫
雪風夕雲、早潮(未実装)、神風(未実装)の駆逐艦5隻についての戦記5編を収録した戦記集。
響機関員・宮川正氏の「憤怒をこめて絶望の海を渡れ」では1942年5月から終戦まで、
キスカ島撤退作戦やの戦没、菊水作戦や終戦後の復員船としての活動などのエピソードが読める。
雪風砲術長・田口康生氏の「愛しの「雪風」わが忘れざる駆逐艦」は1944年初頭から終戦までの話。
名鑑長として名高い寺内正道艦長のエピソードも豊富で、前出の『雪風ハ沈マズ』や『駆逐艦雪風』とあわせて読みたい。
夕雲汽罐長・及川幸介氏の「地獄の海に記された「夕雲」奇蹟の生還記」は、夕雲が沈んだあと
生存者が救助されるまでの漂流生活を綴っており、艦の話は少ないがサバイバルものとして面白い。
また神風型駆逐艦「神風」を扱った表題作では、電探戦記というタイトルの通り、22号電探についての記述が多い。
各編は60〜80ページ程度なので、戦記を読み慣れない人にもとっつきやすい。収録艦が好きな人は是非。

『本当の特殊潜航艇の戦い〜その特性を封じた無謀な用兵』 Edit

日本(2007年)
著者:中村 秀樹
出版社:光人社NF文庫
甲標的の小ネタの項で紹介されている戦史研究年報第8号(2005年3月刊行)を執筆した中村秀樹氏による書籍。
上述リンク先の文献に加筆して書籍としての体裁を整えたような内容で、巻末に専門用語の一覧があって内容も簡潔にまとめられているため読み易い。甲標的の開発経緯や艇の性能に対する検討、戦歴などをこの一冊で知ることができ、甲標的の総説としては貴重。
著者はその職歴において培った思考を以って甲標的の性能を多角的に検討しており、その結果として真珠湾攻撃等で採用された港湾襲撃作戦を厳しく批判している一方で、後期作戦における甲標的の運用法の転換を評価している。また、甲標的を活用するにあたりどのような戦闘条件が好適かということも検討し、甲標的が参加した全作戦に対する評価も試みている。
資料としての公平性を考えるならば所々に著者の所見が入っている点がやや難点だが、前述のとおり甲標的に関する書籍は少なく、また刊行が古いものも多いのが実情である。
甲標的に興味を持った人の入門書としてお勧めできる。

『駆逐艦「五月雨」出撃す』 Edit

日本(初刊:1956年)
著者:須藤幸助
出版社:光人社NF文庫
太平洋戦争の海戦から座礁まで五月雨に乗艦していた兵曹による戦記。
当時、艦内で著者が記していた日記をベースにしており、五月雨の遭遇した海戦の模様や、駆逐艦での生活を、臨場感溢れる描写で伝えている。由良の戦没や、夕立の吉川艦長が第三次ソロモン海戦で漂流する夕立を沈めてやってくれないかと懇願したエピソードなどもこの本に収録されている。
終戦からさほど間も無い1956年に『進撃水雷戦隊』のタイトルで鱒書房から刊行され、その後1979年に『駆逐艦五月雨―その戦歴と最期』として永田書房から再刊、1988年に『駆逐艦五月雨』として朝日ソノラマ文庫で文庫化し、2009年に光人社NF文庫から現在のタイトルで復刊された。何度もタイトルを変えながら復刊され半世紀以上読み継がれてきた名著である。(タイトルに恵まれなかったとも言える)

『連合艦隊の最後』『大海軍を想う』『連合艦隊の栄光』 Edit

日本(1955年・1956年・1962年)
著者:伊藤正徳
出版:文藝春秋新社

総称して「伊藤海軍戦史三部作」と呼ばれる作者晩年を代表する戦記で、有名な「連合艦隊はお葬式を出していない」と言う一文は、帝國海軍に対する深い愛情がなければ決して出てこないテキストだ。
『連合艦隊の最後』は大東亜戦争突入から滅亡までを、『大海軍を想う』は帝國海軍創設から大東亜戦争突入までを、『連合艦隊の栄光』は前述二冊に入らなかった景気の良いエピソードを中心に組み立ててある。この三冊を読めば海軍に関する基本的な事柄は全部抑えられるが、執筆年度の古さに起因する若干の間違いは仕方の無いところか。
著者の伊藤正徳には、海軍大学校の教科書にも採用された『潜水艇と潜水戦(1917年)』やジュットランド海戦の研究書籍である『世界大海戦史考(1943年)』など、質の高い著作が目白押しなので見かけたら読んでも損はしないだろう。ちなみに…海軍記者の側面が強調される伊藤正徳だが、『軍閥興亡史(1957年)』『帝国陸軍の最後(1959年)』など陸軍絡みの著作も多いのである。

『帝國海軍の最後』 Edit

日本(1955年)
著者:原 為一
出版:河出書房

巡洋艦『矢矧』艦長として『大和』の最後を看取った著者の目線から見た帝國海軍の栄光と落日を描く。もともと出版を意図して書かれたものではないと聞くが、この手記は伊藤正徳に『連合艦隊の最後』を執筆させるきっかけを作り、後に時事新報で手記が紹介されるや大なる反響を巻き起こした。序文を執筆しているのが前述の伊藤の他に石橋湛山、高木惣吉と非常に豪華。

『戦藻録』 Edit

日本(1952年)
著者:宇垣 纏
出版:日本出版共同

『戦藻録』は開戦当時聯合艦隊参謀長の職にあった宇垣纏の書き記した陣中日誌。全15冊からなっており、うち第6巻を黒島亀人が借り出した際に紛失している。第6巻の記載範囲(1943年1月1日から4月2日まで)からみて、黒島に対する批判(宇垣は黒島とそりが合わなかった)が相当書かれていたために故意に紛失したとする説もある。海軍を研究する為には必須の超一級資料ではあるが、果たしてこのゲームに必要かと言うと疑念は残る。
山本五十六とノリが合わなかったと良く言われる宇垣であるが、東条英機に大命降下の報を受けて、次の海軍大臣が誰になるのか思考する際「俺の親爺が横鎮の長官なら直ぐ引っ張られるだろうが聯合艦隊の長官では取れないだろう」と、かなり親しみを込めた書き方をしているのはかなり意外っぽい?
自分の乗った艦、戦場に向かう艦、傷つき沈む艦。要所要所に雑感が出てくるので、其の辺が気になる方は読むことをオススメしておく。
『阿賀野』を「現下の要求に満足を興ふるや否や」と批判的に書き、『比叡』の喪失を「高速化を主張した一首謀者として、改造の最後艦にして最も理想化せられたる本艦を失うは誠に遺憾千万なり」と嘆く姿は、仮想戦記に出てくる宇垣纏の姿とはまた違う趣がある。よく言われる「黄金仮面」と言う評と違った内面が描かれるのは日誌ならではだろう。
宇垣纏は1945年8月15日。終戦の玉音放送を聞いた後に日誌の最後を記述し、最後の特攻機に乗って沖縄海域の米艦隊に突入して果てた。
出撃の経緯から「戦死」扱いになっていない為、靖国神社には祀られていない*2

『悲劇の軍艦-海軍魂を発揮した八隻の戦い』 Edit

日本(2002年)
著者:吉田俊雄
出版:潮書房光人社
著者は明治42年生まれの元海軍軍令部員・大本営海軍参謀。終戦時は中佐。潜水艦から戦艦まで、幅広い艦種から選ばれた軍艦が短編形式でそれぞれの戦歴とともに紹介されている。艦これ実装艦で紹介されているのは『伊168』『神通』『山城』『瑞鶴』『長波』『羽黒』『榛名』。
紹介はいずれも簡潔ながら丁寧にまとめられており読みやすい。タイトルには「悲劇の」とあるが、どの艦も著者が厳選した旧日本海軍の殊勲艦として選出されたものであり、乗員達の勇戦ぶりと共にその活躍が取り上げられている。
また、唯一の艦これ未実装艦である防空駆逐艦『秋月』と同型艦についても、読むことで今後の実装に対する期待を大いに高めることができるだろう。太平洋戦争時現役の士官が、あの戦争をどのように見ていたのかがわかる資料としても貴重である。
本書は昭和34(1959)年からミリタリー雑誌『丸』に連載されていた『軍艦物語』から抜粋・加筆修正した物で、旧題は『軍艦十二隻の悲劇』昭和41(1966)年(オリオン社。現在絶版)。旧題からも伝わるのは、どのような活躍や武勲があったとしても、その舞台となる戦争は艦にとっても乗員にとっても、悲劇以外の何物でもないという著者の率直な気持ちであろう。その原版では赤城、比叡、武蔵、大和も入っていた。
またエピソード数を原版からほぼ倍に増やした『軍艦旗一旒に死す*3-日本軍艦25隻の生涯-』が1983年に光人社から出されている。ただしこちらも絶版。
一方で『悲劇の軍艦』は2008年(著者の死後)に文庫化されているため、同シリーズでは最も入手しやすいだろう。

『歴史と視点』 Edit

日本 (1980年)
著者:司馬遼太郎
出版:新潮文庫
日本文学会の巨匠・司馬遼太郎が実体験をもとに出版したエッセイの一つ。
この中に氏が戦時中陸軍に徴兵され戦車兵として配属されていた時の話題がある。
戦車……つまり大日本帝国陸軍のやらかし具合が、当時の実際の兵士だった人物から語られている。巷にあふれた"三式中戦車の砲塔軟鉄説"の発端になった本でもある*4
零戦と一式戦『隼』の比較など、近年過去の“陸軍悪玉論”寄りの思考停止的評価から抜け出しつつある旧大日本帝国陸軍だが、結局海軍も陸軍も日本軍は日本軍でしたという事が実に分かる内容。
基本的に身内である陸軍のことを下げ気味に書いてあるが、それがかえって海軍にも耳の痛い話になってもいる。

『鉄の棺―最後の日本潜水艦』 Edit

日本(2012年)(新装版)
著者: 齋藤 寛
出版:光人社NF文庫

艦これ未登場の伊56(乗員間の通称「いそろく」潜水艦)のお話を通じて、潜水艦勤務がいかに過酷だったかを、まるでいっしょに潜水艦生活をしているかのように感じることができる良書。

初めて潜水艦に乗る軍医が著者なので、乗船していきなり頭をぶつけるところから開始。とにかく狭い狭い艦内、中身をずっと廃棄できないトイレの匂い、気を紛らわすための些細なレクリエーションで皆が笑顔になる話、敵の哨戒を逃れるため薄くなる空気の中、40時間浮上できずにただベッドに横たわって必死で息をする様子など、医師ならではの克明な描写と訓練を受けた戦闘員ではない視点で感じることが出来る。後半はアレの登場員を乗せて南に向かう話。艦長も含め家族のようなメンバーたちが自分たちにできる精一杯の贈り物で気遣う様子が痛々しい。これを読むともう潜水艦娘たちに「はよ、オリョクル行ってこいや!」と言えなくなることうけあい。

なお、文頭の本書紹介記事には「素人の文書」と記載してあるが、いやいや全然そんなことはないのでご安心を。

『潜水艦気質よもやま物語―知られざるドン亀生活』 Edit

2004年 日本
著者: 槇 幸
出版:光人社NF文庫

どんな強い戦艦も空母も成し遂げていないアメリカ本土への攻撃を、あっさりやっちゃった潜水艦「伊25」の活躍ストーリー。
潜水艦は攻撃されてしまったら、もう水中に「急速潜航」して逃れるしかありません。運悪く爆雷が当たってしまったら・・・もう沈むしかないんです。水上艦とは違い、乗員は外に逃げることが出来ません。だから乗員は一蓮托生。海軍名物「鉄拳制裁」も上下の厳しい規律も、きちんとした服装であることも必要なし。ニコニコ見守る艦長のもと、家族的な雰囲気と、超絶プロフェッショナルな技、そして天佑のおかげで次々とピンチを切り抜ける乗員たち。
出航から帰港まで1か月以上狭い艦内から出られずお風呂どころか顔も洗えないこと、魚雷発射管に注水した後発射しなかった時の整備が大変なこと、浮上した時につかまえた大きな鳥を艦内で飼ってみた時のこと、敵の新型兵器が不発のまま天井に乗って、そのままそぉっと帰港したときのこと、敵の潜水艦を撃沈し、相手が4000m海の底に沈みやがて水圧に耐えきれず圧潰する音を聞いたときのこと。そして、ついにアメリカ本土への攻撃を果たしたときのこと。
聴音を主任務とする著者がつづる軽快な文体と悲喜こもごもの数十のエピソードを豊富で愉快なイラストが盛り上げます。

おすすめに入れて欲しいと誰かが提案したものなど Edit

自分が書いてもいいよという提督がいたら参考にしてください。

掲載されていたけど削除されたもの Edit

かつては「いいんじゃない?」と掲載されていたが、後になって「やっはり相応しくないね」と削除された作品。
削除されたのには色々理由があるのです。

削除・編集が検討されている作品 Edit

「これは削除すべきじゃないか」と検討されている作品

  • 『流浪の戦艦「大和」』
    • タイムスリップSFなので、艦これwikiには合っていないのではないか。
  • 『超空の連合艦隊』
  • 『宇宙戦争1941』
    • SF要素が強い作品であり、艦これwikiに載せるほどではないと思われる。
  • 『女王陛下のユリシーズ号』
  • 『駆逐艦キーリング』
  • 『巡洋艦アルテミス』
  • 『高速戦艦脱出せよ! 』
    • 艦娘の元となった艦船が出てこないため、掲載する要件に該当しないのではないか。



「これは編集すべきじゃないか」と検討されている作品

  • 『ローレライ』
    • 原作の『終戦のローレライ』の方が好ましいのではないのか

映像・書籍掲示板 Edit

北上「軍艦ものの映像作品・書籍などについて適当に語るコーナーですよ、ほい」
大井「人の趣味や嗜好に対してケチ付けるような提督には・・・魚雷、撃ちますよ?」

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*1 操練54〜56期、甲飛4期など
*2 これを聞いた小沢治三郎は大激怒し「自決するなら一人でやるべく。若者を巻き込むなど言語道断」と斬って捨てている。
*3 「ぐんかんきいちりゅうにしす」と読む。
*4 緒説あるが、陸軍がこの頃戦略物資の使用制限を実施していたのは事実を踏まえても「(ひとの手で)ヤスリで削れた」というのはお話にならないと思われる。