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Last-modified: 2015-07-02 (木) 01:37:00
「艦娘さんが入浴中、なんかヒマだなー」ってな時には、艦娘さん(本物)が出てくる映画や本を見よう!
ってなことで作ったこのページ、提督諸兄のおすすめ映画などありましたら、ぜひ 追加してみてね!
映画編
『ハワイ・マレー沖海戦』
日本(1942年)
監督:山本嘉次郎
出演:藤田進、大河内傅次郎ほか
真珠湾攻撃(当時はハワイ海戦と呼ばれた)及びマレー沖海戦の大勝利を描いた戦意高揚映画。
少年が空に憧れ、海軍に入り、一人前のパイロットとなって大戦果をあげるまでを描いている。
あの円谷英二が特撮監督を務めており、GHQが実戦の映像だと思い込んだほどのリアリティのある戦闘シーンは圧巻。
空母こそセットだが、航空機はほとんどのシーンで実機を使用して撮影されている。空母から飛び降りるような九七艦攻の発艦は非常にリアルである(実機なので当然だが)。
また、予科練(パイロット候補生)や空母での生活・訓練が全編にわたって描かれており、当時の様子を伺い知ることができる。むしろそっちが本編で
戦闘シーンはおまけみたいなもの。迫力ある戦闘を期待していると肩すかしを食らうかもしれない。古い映画ではあるがDVD化されており入手は容易。
余談だが、この特撮を務めた円谷英二はGHQから公職追放5年を言い渡されているが、その原因の一つが本作である。
(GHQが特撮シーンを実際の記録映像と誤認し、最後まで特撮だと信じていなかったため)*1
『雷撃隊出動』
日本(1944年)
監督:山本嘉次郎
出演:藤田進、大河内傅次郎ほか
海軍雷撃隊を描いた戦意高揚映画。世界に戦争映画は星の数ほどあるが、空母から航空機が発艦するシーンをCGも特撮もセットも使わず、
本物の瑞鶴から本物の天山を飛ばして撮影した映画はこれぐらい。本物の艦船、航空機が多数登場し、貴重な映像資料として知られる。
あのレイテ沖海戦、最期の出撃の準備中のまさにその時に瑞鶴で撮影された映像なので、その点でも非常に貴重。
戦意高揚映画ではあるが、時勢を反映して悲壮感に満ちており、本当にこれで戦意を高揚できると思ったのか甚だ疑問である。
予備知識のない人が見たら、戦争の空しさを描いた反戦映画と思うかもしれない。
一応、メガネの主計長さんが「体当たりの雷撃精神で敵を倒すんだよ(ニコッ」「米国の支配体制というものは云々~」といった当時の時勢を感じさせる発言を度々するものの、
戦意高揚の部分を彼一人で担当してるように見えて末期の悲壮感をむしろ強めているようにも…*2
ちなみにこの映画のワンシーンとして兵士たちが野球をしているシーンがあるがそこでは「ストライク」「アウト」と言った言葉が堂々と使われており、
海軍が敵性語運動に対して冷淡だったことが伺える。
古い映画ではあるがDVD化されており入手は容易。
『眼下の敵』
アメリカ・西ドイツ(1957年)
監督:ディック・パウエル
出演:ロバート・ミッチャム、クルト・ユルゲンスほか
大西洋上で遭遇したアメリカ海軍駆逐艦とドイツ海軍Uボートの一騎打ち。
両軍指揮官の腹の読みあい、アメリカ海軍全面協力による、「実物の駆逐艦を用いた」砲撃・爆雷シーンなど、
息詰まる「潜水艦VS駆逐艦」戦闘の醍醐味を堪能できる戦争映画の名作。
この時期のハリウッド映画としては珍しい、米独双方の視点に立って描く手法をとっている。
『深く静かに潜行せよ』
アメリカ(1958年)
監督:ロバート・ワイズ
出演:クラーク・ゲーブル、バート・ランカスターほか監督:ロバート・ワイズ
海軍大佐エドワード・L・ビーチが実体験をもとに著した同名の小説の映画化。
舞台は太平洋戦争中、米潜水艦「ナーカ」のブレッドソー大尉は次の艦長は自分が任命されると思っていたが、新艦長はかつて米潜水艦の墓場と恐れられていた豊後水道で、自艦を撃沈され生還したリチャードソン中佐だった。
大尉は不満を抱えつつも通商破壊任務を通じてリチャードソンに接していくが、やがて中佐が自分を沈めた日本駆逐艦「秋風」に復讐戦を挑もうとしていることに気付く。
そして「ナーカ」は豊後水道についに到達し、因縁の「秋風」との対決に挑む。
潜水艦映画の古典中の古典。
『潜水艦イ−57降伏せず』
日本(1959年)
監督:松林宗恵
出演:池部良、三橋達也、藤田進ほか
昭和20年夏、最前線に従軍していた日本海軍潜水艦「イ−57」は、和平交渉を有利に進めたいという大本営の意向を受け、某国の外交官父娘を中立国の領海まで無事に送り届けるという極秘の作戦を実行に移すが……。
撮影の際は海上自衛隊の全面協力を得られたため、海自草創期の艦船が登場。
「イ−57」として出てきた潜水艦は「(初代)くろしお」だが、元は米海軍潜水艦「ミンゴ」で、日本軍との戦闘経験もある船だ(北上と遭遇している)。
和平交渉のためという不本意な命令を受けながらも最後まで任務を遂行しようとする男達のドラマや、巨大サイズのミニチュアを駆使した迫力ある特撮シーンはお見事。
『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』
日本(1960年)
監督:松林宗恵
出演:夏木陽介、三船敏郎、鶴田浩二ほか
三船敏郎演じる山口多聞少将と、夏木陽介、鶴田浩二演じる航空母艦「飛龍」艦載機搭乗員、
そして冒頭の真珠湾攻撃からミッドウェー作戦までに至る「飛龍」を中心とした日本機動部隊の闘いのドラマを描いた作品。
千葉県勝浦海岸に1/1の飛龍のオープンセットを作成したり、13mもある巨大な「赤城」のミニチュア作ったりと、とかく予算をかけてリアルな空母戦の撮影を行っている*3。
その甲斐あってか、艦内描写はとにかく多彩且つ濃厚。お決まりの飛行甲板のシーンも、広大さを感じる大胆なカットが多いのも大規模セットならではの見どころ。
とにかく正規空母「飛龍」がカッコイイ!そして何より三船演ずる山口多聞少将がカッコイイ!
山口のミッドウェー作戦時の米機動部隊発見時の意見具申、3空母被弾後の航空戦を指揮する場面、改めて「飛龍」と山口多聞少将を好きになること間違いなし。
そして飛龍と言えば友永大尉の艦攻隊。実在の搭乗員をモデルにしたとおぼしき役がいくつかあり、「友成大尉」も登場する。
主人公達も艦攻の搭乗員で、珍しく零戦ではなくて九七艦攻が主役。
機上では偵察員が地図をカリカリ航法計算していたり、目的地まで時間や距離を訪ねられたり、マニアックな見どころが多い。*4
もちろん、見せ場の雷爆撃シーンも描写が細かいので、飛行機ファンには必見。
ちなみに、同作品の「真珠湾攻撃」「ミッドウェー作戦」等の海戦シーンは、その後の東宝戦争映画「連合艦隊司令長官 山本五十六」「連合艦隊」や、
米作品「ミッドウェー」でも使われている。
『太平洋奇跡の作戦 キスカ』
日本(1965年)
監督:丸山誠治
出演:三船敏郎、山村聡、佐藤允ほか
キスカ島撤退作戦を題材にした映画。当時の世情を反映して人名や参加艦名に変更を加えたフィクション仕立てとなっている。
コメディタッチではない作品ながらハッピーエンドになる数少ない日本の戦争映画であり、白黒作品であるにも関わらず現在でもファンが多い。
阿武隈がキスカ島沿いを航行するシーンは一見の価値あり。阿武隈の他にも、那智や木曽などが出演している
オープニングとエンディングで流れる「キスカマーチ」は、陸上自衛隊音楽隊の演目の一つにもなっている。
『連合艦隊司令長官 山本五十六』
日本(1968年)
監督:丸山誠治
出演:三船敏郎、加山雄三、黒沢年男ほか
後述の役所広司主演作の前作にあたる作品。山本の連合艦隊司令長官就任から真珠湾攻撃、そしてミッドウェイ作戦に至るまではテンポ良く話が進むが、その後がダルいと言うか、ダラダラと・・・
山本が航空機兵力に重点を置いていたためか、空母艦載機パイロットをメインに話が創られている。
真珠湾攻撃、ミッドウェイ作戦での戦闘シーンは前述の「太平洋の嵐」の使い回しだが、
山本の乗った一式陸攻が撃墜される場面は本作オリジナルのもので、その後「連合艦隊」でも使われる事になる。
『日本海大海戦』
日本(1969年)
監督:丸山誠治
出演:三船敏郎、笠智衆、加山雄三ほか
聯合艦隊司令長官・東郷平八郎を主人公に、日露戦争の激戦となった旅順港閉塞作戦、黄海海戦、旅順要塞攻略、そしてクライマックスの日本海海戦を描く。
艦船は艦娘たちの諸先輩方であり、時代も違うので当ゲームと全く関係ないようにみえるが、いわゆる「丁字戦法」を図説とナレーション付きで丁寧に描写しており、また夜戦時の水雷攻撃シーンもあるなど馴染みの場面が登場。
特撮では砲撃の水柱をよりリアルにすべく、火薬ではなく圧搾空気を使ったというこだわりよう。
『太平洋の翼』で使用した13メートル大和を改造した三笠(『太平洋の嵐』の赤城改二とでも言おうか…)が製作され、リアルな特撮に一役も二役も買っている。
なお特技監督・円谷英二はこの翌年に他界しているため、劇場用映画としてはこれが最後の仕事となっている。
『トラ・トラ・トラ!』
アメリカ・日本(1970年)
監督:(米)リチャード・フライシャー (日)舛田利雄・深作欣二
出演:マーティン・バルサム、山村聡ほか
1941年の日本海軍による真珠湾攻撃を題材にした作品。ノルマンディー上陸作戦を描いた「史上最大の作戦」が大ヒットしたため、太平洋戦線での日米の戦争映画を作るべく日米から多数のスタッフが参加して作られた大作。
実物の航空機を用いて撮影された97艦攻・99艦爆による空爆やゼロ戦の空戦シーンは大迫力だが、実はアメリカの航空機の中から似たシルエットのものを改造して撮影されたもの。ただ、一部シーンは実機を忠実に再現した航空機のセットが登場。空母「赤城」ほか当時の南雲機動部隊の艦内の様子も丁寧に描かれている。分かる人が見れば偽物だと分かるが、実機の迫力の前にはわりとどうでもいい。
P-40戦闘機やB-17爆撃機など米軍機は稼働機を米国内から掻き集めたもので、米軍機はほぼ本物である。艦船もジオラマ以外は出来る限り実艦に近い艦船を用意しており、第二次大戦中に建造されたものがちゃんと登場している。電探やFCSなどは流石にそのままだが、艦攻や零戦がこれでもかというほど超低空で飛び回る迫真の飛行は物凄い。が、流石に急降下爆撃は無理だった模様(ただ、やや急角度で爆撃する99艦爆のシーンなどはある)。
また、日本海軍の「赤城」の撮影には、アメリカ海軍空母「レキシントン」が用いられた(珊瑚海海戦で沈んだレキシントンとは別。エセックス級6番艦)。
アメリカ映画にしては珍しく、アメリカ軍がコテンパンに負ける映画であり、当時の最新の考証をもとに、日米両者の視点や事情をかなり公平に扱っている。
駆逐艦「ワード」による甲標的砲撃事件なども扱っており、もちろん戦闘シーン以外でも綿密な脚本のもと真珠湾攻撃までの経緯がしっかりと作られているので終始飽きさせない。
近年公開された「パール・ハーバー」があまりにもアレだったので、この映画の出来の良さが再評価されるに至った。
『海ゆかば』
日本(1974年)
監督:ジョン・フォード
撮影:米海軍省、米海兵隊司令部
編集:御法川清一、堀那司郎、山田洋造
協力:米国防総省、テレキャスジャパン、協和視聴覚センター
解説:中西龍
太平洋戦争当時米海兵隊によって撮影された映像を日本側が独自に編集した歴史ドキュメンタリー映画。
当時の貴重な映像が多数収められている。
参考URL:http://www.wowow.co.jp/pg_info/detail/103581/
『ミッドウェイ』
アメリカ(1974年)
監督:ジャック・スマイト
出演:チャールトン・ヘストン、ヘンリー・フォンダ、三船敏郎ほか
説明不要のミッドウェイ海戦を描いた作品。アメリカ建国200周年記念超大作、俳優陣も豪華で目眩がするほどだが(ただしアメリカ側のみ。日本側の俳優は山本五十六を演じた三船敏郎以外日系アメリカ人を起用)、戦闘シーンでは他の映画の戦闘シーンを使い回ししていたり奇妙なゼロ戦が飛んでいたりと、どこか変。
この時代のアメリカ映画は細かいことにこだわっていないとも言える。
なお、アメリカ空母レキシントンは、この映画でもヨークタウン級空母として出演しているのだが(三隻ぶんで三役)、
『トラ・トラ・トラ!』の映像も流用されているので、四役同時出演という無茶をしていると言える。
なおこの映画はDVD化され、レンタルショップにも置いてあるのだが、英語の翻訳を軍事知識のない人がしたのか、とんでもない字幕になっている。
空母蒼龍が曽柳だったり、Bomber(爆撃機)を爆弾と訳したり(なのでセリフの「16 Dive bombers」を本来なら「急降下爆撃機16機」なのを「急降下爆弾16体」という意味不明な台詞にしている)と観てて混乱するような字幕ばかり。
詳しくはWikipediaのこの映画の記事に書いてあるので観る際は注意して下さい。吹き替えはDVDには収録されてませんし・・・
『1941』
アメリカ(1979年)
監督:スティーブン・スピルバーグ
脚本:ロバート・ゼメキス、ボブ・ゲイル
出演:ジョン・ベルーシ、ダン・エイクロイド、ネッド・ビーティ、三船敏郎ほか
アメリカ本土攻撃を目指していた「伊19」の艦長は、アメリカ人の戦意を挫く為にハリウッドへの攻撃を計画するが、羅針盤が壊れて方角が判らなくなってしまう。直感といい加減な地図だけで当りを付けた艦長は、海岸線に作られた遊園地をハリウッドと思い込み攻撃を開始する・・・
若きスピルバーグ監督の世紀の迷作。内容はコメディであり、批評家達からは散々に酷評されたが、伊号潜水艦によるアメリカ本土攻撃を描いたほぼ唯一の映像作品でもある。
また、同時期にあったロサンゼルスの戦い(本土攻撃と同時期に発生した大騒動。陸軍のレーダーが捉えた正体不明の飛行物体を日本軍の艦載機と勘違いし、対空砲による迎撃や戦闘機の出撃などが行われ、アメリカ全土が大パニックになった。実際には日本軍は艦載機を出撃させておらず、真相は現在も闇の中)もモチーフとなっている。
本作に登場した三船は、軍艦旗や潜水艦の艦型などに誤解に基づく誤りを見つけると一旦帰国し、海上自衛隊やかつての乗務員などから資料をかき集めて訂正したとのこと。
その為、「伊19」の形状や内部が精巧に再現されており、資料的には価値が高い作品と言える。
何気に出演者が豪華で、随所に様々なスピルバーグ作品のパロディが散りばめられており、娯楽作品として気軽に楽しめる。
『連合艦隊』
日本(1981年)
監督:松林宗恵
出演:小林桂樹、丹波哲郎、鶴田浩二、永島敏行ほか
太平洋戦争開戦から『大和』特攻までの著名な司令官達、主な戦闘(海戦)の経過、作戦実施の背景、主力艦艇と編成やそれらにまつわる逸話などを大体知ることができるダイジェスト的作品。
もともとは「レイテ海戦作りたいネ」との田中プロデューサーの意向で企画され、「お金が掛かりすぎる」と言う理由で没になりかけるものの「あの戦争を俯瞰で見ることによって安くあがるんじゃないだろうか?」と言う意見を取り入れてこのような形になっている。
監督・脚本家(共に旧海軍出身者)の「今の日本があるのは無名の英霊たちの犠牲ゆえ」という思い入れから、本作は実在将官の英雄譚的な内容ではなく、小田切家と言う一般庶民層と、本郷家と言うインテリ層をシンボリックした二つの家族を中心にストーリーが作られている。
過去の東宝映画からの流用シーンが多かったりする為、不当に貶められる評価が多かった時期があったが、某大和映画が出てきたことによって正当な評価に復したような気がする。
劇中に登場する「大和」や「瑞鶴」の特撮模型は、中に人が入って自力航行可能なほどの大掛かりなものが使用され(大和にいたっては20分の1の縮尺で全長13m!実際に船舶登録された)、CGが全く使われていないその戦闘シーンや実寸大の「瑞鶴」艦橋セットなど、重厚感は一見の価値アリ。特撮、模型・ミニチュア好きは必見!
『U・ボート』【Das Boot】
西ドイツ(1981年)
原作:ロータル=ギュンター・ブーフハイム
監督:ヴォルフガング・ペーターゼン
出演:ユルゲン・プロホノフ、ヘルベルト・グレーネマイヤーほか
日本艦艇は出てこないが潜水艦映画ならこれを外しては語れない、ドイツUボート潜水艦「U96」乗組員の奮闘を描いた作品。原作者のブーフハイム氏が実際にUボートに乗り込んで体験した出来事が元になっている。
戦略・戦術の妙よりは乗組員たちの日常と非日常に軸足を置いた作品で、戦争、それも潜水艦という閉鎖空間の中での戦争という、極限状況における人間の苦闘と生き様を描く。
「U96」は実在の艦艇でありマーキングの「笑うノコギリ鮫」も実物と同一であるが、作中では実際の艦の足跡をたどっているわけではない。
しかし、戦果を上げるものの連合国駆逐艦に追われ、ASDIC(=ソナー)音と爆雷の恐怖に包まれながらじっと身を潜め耐えるシーンは迫真そのものである。
また、メインテーマ等BGMも有名である。特に劇中後半の突撃時に流れる勇壮なアレンジには圧倒される。
ド派手な演出でスッキリ爽快!というわけではなくどちらかと言えば胸に棘を残すタイプの映画であるが、ぜひ一度は観て頂きたい作品。
2011年、角川書店よりDVD廉価版および初のブルーレイ版が発売されている。
※『Uボート 最後の決断』(2003年、米国)など、紛らわしいタイトルの類似作品があるので注意。
なお、同一の作品だが1981年公開のオリジナル版、TVシリーズ完全版、1997年公開のディレクターズカット版が存在する(お勧めはTVシリーズ完全版)。
『U-571』
アメリカ(2000年)
監督:ジョナサン・モストウ
出演:マシュー・マコノヒー、ビル・パクストン、ジョン・ボン・ジョヴィ
1942年、北大西洋を航行中のUボート「U-571」は英軍駆逐艦の爆雷攻撃で損傷・浮上を余儀なくされ、救難信号を発信する。それを傍受したアメリカ軍は潜水艦「S-33」をUボートに擬装して「U-571」に接近し、Uボートが所持する最新の暗号機「エニグマ」の奪取を試みる。作戦は成功したかに思えたが、ロリアンから出撃してきた別のUボートに「S-33」を撃沈されてしまい、乗務員の大半を失う。副長以下生き残った数人は扱いなれない「U-571」を駆使して帰還への戦いを開始する。
映画の内容は娯楽性重視にしてやや軽めに作られているものの、「Uボート対Uボート」という珍しい対決が見られる他、使用する言語の違いに悪戦苦闘しながら戦う乗務員の姿が見ものとなっている。
また本作では、実物大の潜水艦のセットを造って撮影している。
『パール・ハーバー』
アメリカ(2001年)
監督:マイケル・ベイ
出演:ベン・アフレック、ジョシュ・ハートネット
『アルマゲドン』のジェリー・ブラッカイマーとマイケル・ベイによる真珠湾攻撃を題材にとった恋愛映画。
批評家から「真珠湾攻撃を知らないか、あるいは第二次世界大戦さえ知らない観客を対象に作ったのだろう」と酷評された。当のアメリカ人(専門家や軍オタ系の一般人含む)からも『トラ・トラ・トラ!』と比較されてバカにされているレベル。ちなみに一番興業収入が多かったのは「戦争映画」ではなく「恋愛映画」扱いで宣伝した日本という非常に皮肉な結果となっている。
独善と偏見に満ちた、実にアメリカらしい、というかココ数十年単位で見てもアメリカでも珍しいレベルの映画。考証も正しい部分を探すのが難しいレベル。
(零戦による民間人への機銃掃射シーンや病院等民間施設への意図的な射爆撃シーン(だが日本機により銃撃された救急車の画像が残っていたり、民間人の死傷者も発生している)など、史実無視の描写があるので注意。一応日本公開を慮ってからか、空中からハワイの子供達に「お前たちは逃げろ!」と叫ぶシーンがある。)
連合艦隊が謎の集団にしか見えない描写をされた上、真珠湾攻撃時は存在しない緑色の零戦52型が監督の趣味で登場させられる始末。
少ない見どころは、『トラ・トラ・トラ!』から30年を経て再び赤城役として出演したアメリカ海軍空母レキシントンと、そこから出撃する攻撃隊、そしてハワイに侵入し爆弾数発落とす辺りまで。それから延々30分近く単調な航空攻撃シーンが続いて眠くなる。
ストーリー的に見るべきところはない(むしろ真面目に見てはならないレベル)。要はタフな戦闘機乗りが恋と友情の間に悩み、ヒロインとイチャイチャしつつ、敵にリベンジを果たすという黄金パターン。しかもタイトルがパールハーバーなのに「最後にはアメリカが勝つ」という筋立てにするため、真珠湾攻撃の後はドーリットル空襲まで鈍調に続く謎の脚本構成(勿論史実完全無視)。
とにかく真珠湾攻撃シーンまで、そしてそこからED(ダメ押し的なガンアクションのオマケ付き)まで結構時間が掛かるので注意。
半端な覚悟でこの映画を観てはならない。
全編で3時間以上という長時間映画だが、ストーリー的に冗長な部分を上手くそぎ落としたら30分くらいにしかならない気がする。
『ローレライ』
日本(2005年)
監督:樋口真嗣
出演:役所広司、妻夫木聡、香椎由宇、堤真一ほか
その潜水艦は、美しい歌声と共にどこからともなく現れ、僚艦を沈めては歌声と共にどこかへと消え去る。彼らはそれを、「鋼鉄の魔女」と恐れた。
1945年8月、広島に恐るべき新型兵器「原子爆弾」が投下され、軍令部の浅倉大佐はナチスドイツからの戦利潜水艦「伊-507」を、特攻を批判して閑職に追いやられていた元潜水艦艦長の絹見少佐に託し、次なる原爆投下を阻止するためにマリアナ海域へ独断で出撃させる。
しかしその潜水艦には、特攻兵器である回天の搭乗員と潜航艇の中に潜む一人の謎の美少女、一隻の特殊潜航艇や特殊音響兵装「ローレライ・システム」が搭載されていて...。
「亡国のイージス」や「機動戦士ガンダムUC」を書いた福井晴敏の小説「終戦のローレライ」を原作とする、太平洋戦争末期を舞台にした架空戦記映画。
架空の潜水艦、第三の原爆、「ローレライ・システム」などのSF要素が多少際立つものの、スリル有り、ピンガー有り、魚雷有り、爆雷有りのれっきとした潜水艦映画である。
登場する潜水艦「伊-507」には、フランスに実在した20.3cm連装砲を装備する潜水艦「スルクフ」をナチスが接収し改造したという、架空艦ながら実にリアリティのある設定がなされていて、その独特の装備・形状もまた本作の見どころの一つ。
なお、原作では史実で電を沈めたガトー級潜水艦「ボーンフィッシュ(SS-223)」が、初っ端から「伊-507」に血祭りに上げられていたりする(史実ではすでにその時期には「ボーンフィッシュ」は戦没後である。「伊-507」の元になった「スルクフ」含め、原作では「トリガー(SS-237)」「スヌーク(SS-279)」など史実において沈んだ潜水艦が戦没認定のまま沈んでなかった扱いで多数登場する)。
当時最強の対潜兵器「ヘッジホッグ」の一斉対潜攻撃シーンは圧巻。CGなどのVFXを巧みに扱い、太平洋戦争末期の壮絶な戦いを活写。「伊-507」の一騎当千の戦いぶりは必見。
『男たちの大和/YAMATO』
日本(2005年)
監督:佐藤純彌
出演:反町隆史、中村獅童、松山ケンイチ、仲代達矢
2005年、とある女性が鹿児島の港に訪れ、そこで一人の老漁師に「大和が沈んだ地点まで船で行ってほしい」と頼んだ。
ところがその漁師こそ、戦争後期、戦艦大和に15歳で特別年少兵として乗り込んでいた神尾克己であった。
神尾はその女性にそれまでの経験をつぶさに語っていく。そして女性が船を頼んだ理由とは…。
大人気のために、何度も公開が延長された映画。
大和乗組員の視点から、戦争後期の厳しい戦いや疲弊していく日本の様子、人間ドラマ、詳しい大和の状態が描かれている。
特に原寸大セットを組んで撮った菊水一号作戦時の戦闘シーンは必見。
なお、主人公が対空機銃要員のためとある機銃の戦闘シーンが多い。
原作小説の他、映画版に基づくノベライズも刊行されている。
でもラストシーンの見事な陸軍式敬礼は多くのミリオタたちを笑わせたらしい
だが、専門家に言わせればそういうミリオタたちこそ笑いの対象だったのだが…
- 艦これで海軍に興味を持った方々に誤解されないために書くと、公式4コマなどでも出てくる脇をしめる形の敬礼は、終戦頃に一部海軍部内で使用された敬礼(これも正確には「挙手敬礼」といい、小銃を持つ兵がする「捧げ銃」も「敬礼」であり、こういった右手を使って行う行為だけが「敬礼」ではない)であって、「海軍式敬礼=脇をしめる」ではない。
海軍内では敬礼の形は陸軍ほど厳密ではなく、場所や状況、する人間によって異なる点があった。
実際、当時の海軍軍人の敬礼をしている写真を見ても脇を開けて行う、一部ミリオタ達が信じている「陸軍式敬礼」とされる形で敬礼している海軍軍人の写真は多々ある。
例示すると、戦死直前に前線を視察し搭乗員らに敬礼する山本五十六、車から降りる山本五十六。山本も敬礼する部下も脇をしめない敬礼をしている、沈没する瑞鶴で軍艦旗に対して敬礼する乗員たち、横須賀海兵団にあった新兵教育用の敬礼写真、海軍兵学校を卒業し家族らに見送られながら桟橋まで行進する士官候補生たちとかなりの数である。山本五十六は関わった人々から「彼の敬礼は非常にきれいだった」と評されることの多い人物だが、そんな彼は脇を開けて敬礼していた訳である。
旧海軍における敬礼は、基本形は基本形としてあったが、現実にはその時その時、その人その人によって形が異なった。また旧海軍自身が敬礼の “形” そのものについてはそれほど厳格ではなかった。
ところが終戦近くなって極端に脇を締めて肱を前に出す「おかしな敬礼」が一部で行われるようになり、その形が指導される地域もあった。それを習った一部の旧海軍軍人が戦後に「海軍の敬礼は…」 と言って世に広め、戦後の映画でもそういう敬礼が使用された結果、現在でも「海軍式敬礼=脇をしめる」という誤った認識が広まってしまった。
あくまでも旧海軍の敬礼は「脇をしめなければならない」と決められている訳ではなく、陸軍式と言われるのと大差ないものであり、脇をしめる形は戦争末期に一部で流行した海軍での敬礼の一つである。
『真夏のオリオン』
日本(2009年)
監督:篠原哲雄
出演:玉木宏、北川景子、益岡徹ほか
“オリオンよ、愛する人を導け 帰り道を見失わない様に”
米海軍駆逐艦「パーシバル」の元艦長の孫から送られてきた手紙。それに同封された、祖母の名が書かれた楽譜。それに記された言葉の意味を知る為、潜水艦「伊77」の元艦長の孫は同艦の元乗組員を訪ねた。そして、彼女は知る事になる。愛する人の元に還る為、全力で戦った男達の事を―。
この小説を原作として作られたフィクション映画(ただし完全に別の話になっているので一応注意)。ストーリー性を重視した為かリアリティや時代考証が若干雑で、リアルな「太平洋戦争」の描写を求める提督諸君は突っ込みに疲れるかもしれない。だがエドサル級駆逐艦を空撮した航行シーンや、追い詰められながらも生還を目指す艦長の姿は素直にカッコいい。純粋に「面白い映画が観たい!」と言う方であれば楽しめる内容だろう。
『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』
日本(2011年)
監督:成島 出
出演:役所広司、柳葉敏郎、玉木宏、柄本明ほか
太平洋戦争開戦前から誰よりも対米戦争に反対していた一人の軍人が、どのようにして自ら開戦の火ぶたを切り、どのように部下達と接し、どのような思いで過ごしていたのか。
真珠湾攻撃から70年目にあたる年に公開された、言わずと知れた日本海軍水上艦艇部隊「連合艦隊」の時の司令長官、山本五十六の生き様を描いた作品。
人柄、信念、苦悩など、未だに多くの尊敬を集めていながら無能扱いもされている彼の人間性、連合艦隊司令部と軍令部の作戦思想の相違による悲劇、世論を扇動するマスコミ。
これらが史実になるべく沿って描かれており、五十六のこと以外にも、戦争へと自ら向かった当時の日本、最前線の戦場において判断を委ねられた指揮官・幕僚たちの様子も知ることができる。
山本五十六が主題のためシーンは少ないが、彼が座乗した連合艦隊旗艦「長門」「大和」や、機動部隊の「赤城」「飛龍」「利根型重巡」、飛行場を砲撃する「金剛」、ソロモン海域で夜戦を行う「霧島(?)」、「長良型軽巡」などが登場する。
そのほとんどがCG(VFX)だが作り込みが細かく綺麗なので、ぱっと見実写かと思ってしまうほどのリアリティがある。
「長門」、「大和」と「赤城」は比較的出番が多く、ダイナミックなアングルのシーンもあるのでこの3隻が好きな人には特にオススメ!
ちなみに「大和」のCGデータは『男たちの大和/YAMATO』のものを初期兵装に改修したものが使われているのだとか。
ドラマ・ドキュメンタリー編
『坂の上の雲』
2009-2011年(全13話)、日本
出演:本木雅弘 阿部寛 香川照之ほか
製作:NHK
日露戦争においてロシア騎兵を打ち破り、日本騎兵の父と呼ばれた秋山好古、日本海海戦でバルチック艦隊を文字通り壊滅させた秋山真之の二人の兄弟と、数々の俳句や短歌等を残した稀代の俳人正岡子規を中心に、明治という激動の時代を描いた長編ドラマ。
原作は司馬遼太郎の長編歴史小説「坂の上の雲」。
NHKが総力をあげて作り上げたスペシャルドラマであり、当時の習慣・文化など余すことなく再現し、文明開花期を駆け抜けた明治人の生き様を鮮やかに描きあげている。
時代が第二次世界大戦以前であるため艦娘の先輩達しか出てこないが、12話・13話で語られる日本海海戦の戦艦・巡洋艦を中心とした血沸き肉踊る艦隊戦は必見。
戦艦「三笠」の雄姿と、ロシア将兵が煙突から出る煤煙が一筋に見えるほどだったと評する美しい単縦陣、そして東郷平八郎指揮による丁字戦法を見逃してはならない。
大艦巨砲主義を信仰する提督諸氏は是非見てみよう。
『撃墜 3人のパイロット』
2014年(前編・後編)、日本
出演:勝地涼、ディーン・フジオカ、クリス・ロイド、徳永えり ほか
製作:NHK
1984年、アメリカ海軍の元パイロット、ロバート・アップルゲートのもとに、一人の歴史研究家が訪ねる。
彼は、愛媛県久良湾で引き上げられた旧日本軍最強の戦闘機「紫電改」の写真を見せ、この戦闘機を撃墜したのはあなただと告げた。
操縦していたのは、後に「空の宮本武蔵」と呼ばれることになる名パイロット・武藤金義であると言う。
旧日本海軍の撃墜王・武藤金義を中心に、その武藤が初陣で撃墜した中国空軍の英雄・楽以琴と、太平洋戦争末期に武藤を撃墜したアメリカ海軍のロバート・アップルゲートという、実在した日米中の3人の戦闘機パイロットの人生を描くプレミアムドラマ。
前編では武藤の九六式艦上戦闘機と楽以琴のI-16、後編では武藤最後の乗機となった紫電改とアップルゲートのコルセアの空戦が迫力のCGで描写される。
ただし作品の主題は、パイロットとして戦う傍らで結婚し、娘を授かり、生きる喜びを知りながら終戦を目前にして武運尽き散った、英雄ではなく当たり前の男としての武藤の姿にあるだろう。
また、実際の映像や手紙の引用なども挿入されており、ドキュメンタリーとしての側面も持つ。
『さらば海底空母イ401 幻のパナマ運河大爆撃』
日本(1983年)
監督:松本正志・川北紘一
出演:宝田 明、平田昭彦、高松英郎、水野晴男
『さらば海底空母イ401 幻のパナマ運河大爆撃』は1983年に日本テレビ系で放送された木曜スペシャルの一本で、1979年に土曜スペシャルで放送された『さらば空中戦艦富嶽 幻のアメリカ本土空襲』に次ぐ第二弾であった。
本番組はイ401潜水艦長・南部伸清ご本人の他、数名の元乗組員が出演する非常に貴重な番組で、関係者へのインタビューとドラマパートからなるセミ・ドキュメンタリーの形式を取っている。
ドラマパートは大映が、特撮パートは川北紘一が担当して撮影用の巨大なイ401のモデルが作られた。
ビデオソフト化されていないのであまり見る機会が無いのが難点であるが、専門チャンネルで放送されるときがあるので機会があれば是非見て頂きたい。
『幻の巨大潜水艦 伊400〜日本海軍極秘プロジェクトの真実〜』
日本(2015年)
制作:NHK
NHKの『歴史秘話ヒストリア』で2015年5月6日に放映されたドキュメンタリー。ハワイ沖に沈んでいる伊400の船体が冒頭に登場するなど、NHKらしいそつのない構成となっている。
当時の乗務員のインタビューや米軍に接収された直後のカラー映像、更には2014年の調査で発見された格納筒の映像や開発現場の創意工夫等々、軍事の素人にも判り易い丁寧な内容である。
一方で、後年の戦略原潜の原点になった点がすっ飛ばされていたり、計画時の建造予定数が突然登場するなど、やや大味な構成となってしまっているのが少々残念である。
アニメーション編
『アニメンタリー 決断』
1971年(全26話)、日本
製作:竜の子プロダクション
真珠湾攻撃に始まり、レイテ、大和特攻、終戦、そして何故か某野球チームの監督までを描いたアニメーション作品。
タイトルに『決断』とあるとおり、戦場における指揮官の決断とその結果に焦点をあてている。
内容は30分アニメに収めるためかなり噛み砕かれているものの、当時の戦争をゼロから学ぶにも非常に価値のあるものである。
最終話は版権の関係(某野球チーム監督の話)で商品化されていないが、その他の25話分はDVD等でリリースされている。
当然のことながら艦これにも実装されている艦艇が多数登場し、その激しい戦いの数々が描かれる。
因みに12話では1話分使ってイムヤがクローズアップされていたりする。
製作された時代が時代のため、アニメ技術的にも資料価値がある作品でもある。
『宇宙戦艦ヤマト』
1974年(全26話)、日本
制作:読売テレビ、オフィス・アカデミー
宇宙戦艦に改造された大和が地球を救うべく惑星イスカンダルへと発進する、有名すぎるテレビアニメ作品。
続編や劇場版もいくつも制作されている。
主な舞台は2199年の宇宙空間だが、第2話では坊ノ岬沖海戦の顛末が描かれており、水上艦時代の大和や陽炎型が登場。
わずか数分間のシーンではあるが、史実における大和の悲哀が凝縮されており、直後のシーンと併せて一見の価値はある。
また、高雄の「バカメ、と言って差し上げますわ!」という台詞の元ネタでもある。しかし高雄要素は無い。
最近ではリメイク版『宇宙戦艦ヤマト2199』(全26話)が2012年に劇場先行公開・2013年にテレビ放送された。
こちらでは地球側の帝国海軍(及び海上自衛隊)テイストが大幅に増加。
特に第1話の冥王星沖海戦(メ号作戦)のシーンは、艦隊戦に燃える提督必見の仕上がりとなっている。バカメもあるよ!
なお、初代ヤマト艦長沖田十三のモデルは、青葉に搭乗していた従軍作家で、日本SFの大家の海野十三氏だったりする。
『ストライクウィッチーズ』
1期:2008年(全12話)、2期:2010年(全12話)、劇場版:2012年
製作:第501統合戦闘航空団(角川書店、GDH、クロックワークス、NTT docomo)
略称は「SW」「ストパン」など。
「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」で大変有名なアニメ。
艦これ公式4コマ第12話で伊58が言っていたセリフの元ネタである。
主要なキャラクターの多くは実在の人物をモデルとしている。
(例:宮藤芳佳→空の宮本武蔵こと武藤金義がモデル)
また、某ボーキサイトの女王や、史実では廃艦となった天城が登場している。
大和って飛ぶんですか、すごいですね。
劇場版では割と珍しい零式水上観測機が出たり、大和がまたとんでもない運用をされてたり。
少女達(一部除く)が武装したり、「ネウロイ」と呼ばれる正体不明な敵という点では、艦これと共通点がある。
艦これと同じ角川系であり、アニメの他にもゲームや書籍など広く展開するメディアミックス作品である。
もしかしたらコラボがあるかもしれない…。
『風立ちぬ』
2013年、日本
監督:宮崎駿
製作:スタジオジブリ
声の出演:庵野秀明・瀧本美織・野村萬斎・西島秀俊・西村雅彦ほか
九六、零式艦上戦闘機、そして烈風の開発者として知られる堀越二郎氏の半生を、
同時代に生きた作家である堀辰雄の「風立ちぬ」をもう一つの下地にして製作されたアニメーション映画。
当時日本が抱えていた沢山の問題―関東大震災や不況、貧富の差、航空技術の未熟、亡国病と呼ばれた結核などと共に
戦争に向かいつつある空気の中で、日本の軍用機開発をけん引した若い情熱と理想、そしてその夢が結実し、
やがて戦争で打ちのめされていく無常が描かれている。
飛行機に拘りのある宮崎監督だけあって、本庄季朗(一式陸攻や零戦三二型の設計者)、
ジャンニ・カプローニ、ユンカース博士といった、航空史に名を残す人間たちや
沢山の軍用機が登場する。艦船としては鳳翔が割と重要なポジションで登場している。あと長門も一瞬だけ。
また、この映画がきっかけで再評価されることとなった荒井由美の「ひこうき雲」との親和性は必見。
アニメーション監督の庵野秀明氏が主役の声を演じているが、声についての賛否は分かれる。
書籍・漫画編
ここで紹介されている本の中には入手困難な物もあるが、
お近くの図書館にあるかもしれないので、ぜひとも足を伸ばしていただきたい。
また、貸し出し禁止or館内閲覧専用の扱いになっている場合もあるので要注意。
汚損・破損・紛失・借りパク、ダメ絶対。
フィクション・娯楽
『ザ・コクピット』
1969年〜1989年、日本
著者:松本零士
出版:小学館
「銀河鉄道999」や「宇宙海賊キャプテンハーロック」と並ぶ松本零士の代表作となっている短編集。雑誌掲載時は「戦場まんがシリーズ」と呼ばれていたが、漫画文庫化の際に現在のタイトルに改められた。
タイトルの通り、戦闘機や爆撃機のパイロットが大半の作品で主役となっているが、戦車兵やUボート艦長、歩兵が主役となっている作品も存在する。
また、ほとんどの作品で日本とドイツの軍人が主役になっている為か、作品の9割が悲惨な結末となっており、非常に重苦しいシリーズである。
シリーズの内、「成層圏気流」「音速雷撃隊」「鉄の竜騎兵」の3作はOVA化され、3作まとめてTV放映された事もある。
『戦場ロマンシリーズ』
1977年〜1982年、日本
著者:新谷かおる
出版:秋田書店
上記『ザ・コクピット』とともに、昭和期の戦場マンガの代名詞となる1作。
著者の新谷かおるは松本零士の直弟子であり、メカの描写など一見松本零士と見まがう画風。しかし後に少女漫画も手掛ける同氏の多様なストーリーが『ザ・コクピット』とはまた違った魅力を持っている。
悲壮感の漂う作品もあるが、「キャラバン333シリーズ」「PT007シリーズ」などコメディ色の強い話もあるのが特徴。
この作品のラインが、後にボーイング747不定期便クルーを描いたエアライン・アクション・ギャグ・コメディーの『ALICE12』に繋がっていく。
なお松本零士の弟子である新谷かおる氏の、さらに弟子筋にあたるのが島本和彦とゆうきまさみである。
また松本の『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』のレギュラーキャラであるヤッタランは新谷がモデルらしい。
『空母艦攻隊』
日本
著者:滝沢聖峰
出版:日本出版社or学習研究社
戦争漫画、わけても飛行機関係と言えば、滝沢聖峰氏であるが、氏の代表的な作品がコレである。長編であり、一冊丸々続き物となっている。
一ページ目の一コマ目から、主人公の雨宮兵曹が上官に詰め寄るシーンとなっている。それもそのはず、今まさに真珠湾奇襲が始まろうとする、というのに、雨宮兵曹は出撃の搭乗割に入っていないのだ。彼の練度に問題があった訳ではない。盲腸をやってしまって、術後大して日数が経っていないから、上官が彼の体を慮って搭乗割から外してしまったのである。
なんとも運の悪い話だが、悪いのはそれだけではない。なんと彼の乗機は九七式艦攻。しかも彼は操縦士。つまり、彼が飛べないとペアの秋沢兵曹(偵察員)、福島兵曹(電信員)も出撃できない(この場合、トリオだが海軍用語では何人でもペアで良いのだ、飛行艇など12名でもペアだったのだから)。結局、三人が留守番をしている間に、我々がよく知る歴史通りに事は進むので、それに参加できたはずの三人は面白くない。
そんな三人が、太平洋戦争でどの様な運命を辿るのか、追いかけるようにして描いている。残念なことに、物語は第二次ソロモン海戦で終わってしまう。それでも、是非読んでもらいたい一冊である。
なお、陸軍航空隊ものだが、『飛燕独立戦闘隊』、『迎撃戦闘隊』もオススメできる。
特に『迎撃戦闘隊』(後編『帝都邀撃隊』とあわせて『帝都迎撃戦闘隊』となっている版もある)は南洋戦域で輸送機を守って戦う二式複戦パイロットの物語であり、彼の目線を通して終戦までが描かれている。
後半は帝都での対B-29防衛戦にシフトするものの、前半の南洋での戦いは艦これでも馴染みある土地が舞台である為、ワニの肉を食べてみたり、たけのこ代用のヤシの実の不味さに顔をしかめたり、陸と海とで弁当を融通してみたり、補給品の安倍川餅をみんなで練って食べたり、艦むす達の日常風景もこんなだろうかと妄想もできるだろう。
まあ、マラリアの蔓延とかもあるけどね!貴様の腕にはもう注射針も通らん。アンプルの口を切って飲め。
『ジパング』
2000-2009年(全43巻)、日本
著者:かわぐちかいじ
出版:講談社
連載:週刊モーニング
海上自衛隊のイージス艦「みらい」がミッドウェイ海戦直前の世界にタイムスリップ!
変わる歴史と様々な陰謀が渦巻く太平洋を舞台にした架空戦記漫画である。
太平洋戦争が舞台ということもあり、艦これに登場する艦娘のモデルになった艦艇や、航空機が多く登場する。
それ以外にも歴史上の人物や、みらい乗員との物語も多く重厚なストーリーとなっている。
絵の書き込みが凄いため、絵に迫力があり物語がわけわからなくなっても楽しめる作品である。
2004年にアニメ化されているので、そっちを見るのも良い。アニメの方もなかなかの出来である。途中で終わるけど。
漫画版を読み進めると、あの独特なシルエットの軽空母の大立ち回りも見られる他、ヒャッハー!な軽空母の活躍も見られる。
21巻の表紙は最速のあの駆逐艦が飾り、同駆逐艦による対潜戦闘も必見である。
また、物語の終盤は日本男児の憧れこと某黒鐵の浮かべる城が舞台となる。ただ、艦娘に転生した本人がその部分を読んで落ち着いていられるかどうかは、提督の話術に掛かっているかもしれない。
登場キャラクター達もユニークで、アスロック米倉にトマホーク菊池など雑談掲示板でも話題にも登る。
『夢幻の軍艦大和』
2006-2011年(全14巻)、日本
著者:本そういち
出版:講談社
連載:イブニング
この作品もオキマリのタイムスリップもの。主人公の少年が現世と大和艦上・艦内を行ったり来たり。
史実を知ってる主人公が、何とか戦局を変えようと日本海軍のお偉いさん、高級将校を説得にかかり、
歴史を動かそうと躍起になっていく。
史実ではミッドウェーで戦死した山口多聞少将が物語クライマックスまで生き残り、大和で自ら指揮を執り…。
物語の途中は多少退屈するかもしれないが、最後まで読み終えると、それなりに満足できる作品。
『この世界の片隅に』
2008-2009年(上中下巻)、日本
著者:こうの史代
出版:双葉社
1943年暮れ、広島市の郊外、江波に住む18歳の娘すずに結婚の申し出が来る。相手は呉鎮守府で軍法会議の録事を担当している4歳上の青年、北條周作。
翌年2月に結婚式を上げてから戦後の1946年1月までの呉での物語である。
周作の父、圓太郎も長年広海軍工廠で働いており、呉ゆかりの艦船が出てくる。
すずの小学校の同級生、水原が乗り組み、終戦後の着底状態を海岸で水原が見ている青葉や、
周作に「東洋一の軍港から生まれた世界一の戦艦じゃ」と言わせる大和が代表的であろう。
たとえ、簡略化されたシルエットであっても。
『蒼き鋼のアルペジオ』
2009-(既刊10巻)、日本
著者:Ark Performance
出版:少年画報社
連載:ヤングキングアワーズ
温暖化によって陸地が減った近未来の世界に、「霧の艦隊」と呼ばれる第二次世界大戦期の軍艦を模した謎の艦隊群が襲来。
制海権を奪われた人類の逆襲と、霧の艦隊の謎をめぐるSF海洋戦記漫画である。
艦娘と深海棲艦の設定を足して2で割ったような女性型インターフェース「メンタルモデル」が登場するのが特徴。
2013年10月7日からはアニメ「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」が放送開始、後に映画化。
尺の都合上原作漫画からだいぶ設定が変わってるが、設定改変に関しては作者の了解を得た範囲で上手く行われており、あまり違和感なく入り込めるようになっている。
敵の裏の裏をかく対艦戦や、政治家達の腹の探り合いといった緻密な駆け引き、ちまくてかわいい各メンタルモデルの2号達、霧側の主人公とも言えるハルナ率いる派遣艦隊の活躍を見るなら原作版。
無機質かつ機械的だったメンタルモデル達の成長と霧くまsを見たいならアニメ版といった感じで、媒体で別々の見どころがある。
運営側にもこの作品のファンがおり、二つ返事で艦これとのコラボが決定した。
アルペジオ側のコラボは、奇数話のエンドカードに艦これとのコラボイラストを掲載。
艦これ側のコラボは2013年12月24日よりコラボイベント「迎撃!霧の艦隊」が開始。
話数 | エンドカード | 絵師 | | 話数 | エンドカード | 絵師 |
1 | 伊401&イオナ | しばふ | | 7 | 高雄&タカオ | みことあけみ |
3 | 榛名&ハルナ | コニシ | | 9 | 摩耶&マヤ | パセリ |
5 | 金剛&コンゴウ | | 11 | アイテム屋娘、任務娘 & 八月一日静、四月一日いおり | 藤川 |
『Battleship Girl 鋼鉄少女』
2011年-(全4巻及び『BSG 北海のワルキューレ』全1巻、『Battleship Girl Tempest -鋼鉄少女 嵐-』第1巻以下続刊)、台湾、日本
著者:皇宇(ZECO)&惟丞
出版:ワニブックス(日本)
連載:コミックGUM(日本)
「艦これ」に先立つ事三年以上前に、台湾の漫画家による艦艇を"萌え擬人化"した作品。
元々は2010年に台湾の中央研究院の機関誌「Creative Comic Collection」に掲載された
擬人化イラストがきっかけで、それが評判を呼び、漫画化されたという経緯を持つ。
主人公は大東日(日本)海軍の駆逐艦「雪風」で、
スターズ(アメリカ)を始めとする連合軍の艦隊達と壮絶な戦いを繰り広げていく。
ただ、史実に必ずしも忠実という訳ではなく、
枢軸国側のゲストとしてゲルマン(ドイツ)軍の巡洋戦艦シャルンホルストが大東日海軍に参戦していたり、
「野分」が「赤城」ではなく「飛龍」の雷撃処分を担当していたりと(史実との差異をコラムでフォロー有)
作者独自の創作部分もあったりもするので、「艦これ」と比較してみるのも面白いかと。
お姉さんを通り越してお母さんポジションの「高雄」、親分肌の「神通」、
鬼教官の「飛龍」、お嬢様気質の「隼鷹」、お姉ちゃまっ子の「摩耶」と性格設定も一味違う
(ただし、「大和」の不幸ぶりと「雪風」の強運は健在)。
現在はミッドウェー海戦終了後に一時休載、ヨーロッパ編を構想中。
先述のシャルンホルストが主人公を務める北海編『BSG 北海のワルキューレ』全1巻が刊行されている。
また、ミッドウェー海戦後の雪風の戦いを描く本編も2014年よりコミックGUMでの連載が再開し、
こちらは2015年に『Battleship Girl Tempest -鋼鉄少女 嵐-』のタイトルで第1巻が刊行、以下続刊となっている。
『女王陛下のユリシーズ号』(H.M.S. Ulysses)
1955年、イギリス
著者:アリステア・マクリーン
出版:早川書房(1972年)
海洋冒険小説のベストと言われれば真っ先に名前が挙がる一作。
ハヤカワの冒険・スパイ小説人気投票で、海洋冒険小説部門、および総合ベスト100において第1位に輝くなど高い人気を誇る。
描かれているのは、第二次世界大戦下、英海軍輸送船団のドイツ海軍との凄絶に過ぎる死闘。
主役は英国軽巡洋艦ユリシーズ号とその男達。 護衛空母・駆逐艦と艦隊を組み、輸送船団護衛任務にて
ドイツ軍の誇る超弩級戦艦ティルピッツの影に怯えながらUボートと爆撃機、暴風雨が待ち受ける極寒の北極海へと向かう。
戦艦〜駆逐艦の全ての艦種に戦闘機まで登場し、当時の海戦における其々の役割や存在が良く分かる。
何より作者自身が大戦中の巡洋艦乗りで、描写が真に迫っており
実際の軍艦の戦闘がいかに凄絶なものだったかを嫌という程思い知らせてくれる。
訳者に「アメリカ人はこんな小説書けもしないし、書きもしないだろう」と評される通り、
本当に容赦の無い展開なのでハリウッド的なスカっとするエンターテイメントを求める方はご注意あれ。
安易な感傷を許さぬ男達の熱く壮絶な戦いに目を真っ赤にしながら読む作品。
しかし、それ一つで映画のクライマックスに相応しい悲劇に幾度となく翻弄されながらも
その最中にユーモアを忘れないのはさすが彼の国の紳士達ならでは。
“もう勘弁してやってくれ!”と泣き腫らしている読者にはこれがこの上ない救いとなる。
不朽の名作と名高く物語の面白さは徹夜保証だが、中破進撃とか出来なくなっても責任は負いかねます。
しかも、後半にはヒッパー級重巡が冷酷な死刑執行人として登場し、容赦なく物語の幕引きを行う。
ちなみに、原題の「H.M.S.」とはイギリス海軍の艦船であることを意味する艦船接頭辞で、
His Majesty's Ship あるいはHer Majesty's Ship の略であり、直訳すれば「国王陛下の船」あるいは「女王陛下の船」となる。
なお、作者のマクリーン氏にとっては本作が小説家デビュー作であり、この後に「ナヴァロンの要塞」「ナヴァロンの嵐」「荒鷲の要塞」など数多くの傑作を世に送り出していく。
これらの作品の多くは映画化・ドラマ化されているが、本作だけは未だに映像化されておらず、(訳者も含めた)ファンをヤキモキさせている。
『大逆転! ミッドウェー海戦』
1988年、日本
著者:檜山良昭
出版:光文社カッパ・ノベルス
架空戦記ブームの初期の作品の中でもあまりのヘビーさにファンが衝撃を受けた『日本本土決戦』『アメリカ本土決戦』『ソ連本土決戦』を書いた檜山良昭が、続いて世に放った『大逆転シリーズ』の第一弾。
1987年、リムパック演習に向かう海上自衛隊の護衛艦隊はアメリカのタイムスリップ実験に巻き込まれ、1942年のミッドウェイ海戦の最中に時空転移してしまう。当の護衛艦隊は当初状況が把握できず混乱に陥るが、護衛艦さわゆき(DD-125)が米軍の旧式潜水艦に撃沈されたことをきっかけに状況を把握する。そして自分たちの返る場所が1942年の日本しかないことしかないことを悟った護衛艦隊は、大日本帝国海軍に加担してミッドウェイ海戦に介入することを決意するのだった……
ただ単に海上自衛隊の介入だけではなく、利根のカタパルト不調に端を発する「日本側の不運、アメリカ側の幸運」への考察を絡めた、ミッドウェイ海戦の深い部分を題材とした1冊。
『超空の連合艦隊』
2004年、日本
著者:田中光二
出版:学研
ミッドウェー出撃直前の連合艦隊が現代日本へタイムスリップ。
装備を最新鋭のものに換装し、戦艦が、空母が、重巡が中国やアメリカ相手に大暴れ!
ご都合主義な部分は多々あるが、山本提督指揮下で大和が活躍する数少ない作品だろう。
『独立愚連艦隊』
1997年 日本 全8巻
著者:羅門祐人
出版:コスミックインターナショナル
太平洋戦争、緒戦で快進撃を続ける大日本帝国。そんななか、数奇な運命を経て空母として改装された
「陸奥」を基幹に海軍のならず者たちが集められ、実験的補用艦隊が編成された。その艦隊の通称を「独立愚連艦隊」という。
はじめは、厄介者の弱小艦隊だったが、連合艦隊の劣勢を受け支援に向かう。ここからがアメリカ艦隊、さらには連合艦隊の苦難の始まりであった……
アメリカの力が圧倒的物量なら、独立愚連艦隊の力は圧倒的『幸運(悪運?)』である。
歴史の「もし、たられば」を存分に有効活用した愉快痛快架空戦記で、ご都合主義ここに極まれりと言ってもいいハチャメチャ展開の連続。
独立愚連艦隊の勇姿、とくとご覧あれ!
珍しくアメリカが可哀想に思える一冊。史実で鬱になったらこれを読むべし。だが、肝心の帝国海軍の連合艦隊はあまり活躍しない。
なお空母「陸奥」ほか様々な改造艦や架空艦、鹵獲艦も登場し巻末にはスペックや絵図も掲載されている。
このほか続編として『平成愚連艦隊』(全4巻)というもうやりたい放題のシリーズも存在している。
『第七航空艦隊戦記』
1999年 日本 4巻
著者:橋本純
出版:コスミックインターナショナル
太平洋戦争は日本のハワイ強襲上陸で始まった。
ハワイに停泊していた米太平洋艦隊の主力は脱出もままならず、ついに座礁艦が湾口をふさいでしまい丸々日本軍に鹵獲されることに。
日本軍はこれを有効活用するため第七航空艦隊として整備することに。
しかし送り込まれた人物も落第生か素行不良ばかり。
いつしか、誰が呼んだか「味噌っかす」。
しかし彼らの常識外れの行動が波乱を呼ぶ!
アメリカが可哀想に思える一冊その2。傾向としてはまぁ、上の『独立愚連艦隊』とほぼ同じである。
超兵器・珍兵器というよりはとにかく登場人物の行動によって日本軍に並大抵じゃないツキが転がり込んでくる。
とは言え兵器も面白い。アリソンV-1710搭載の彗星、烈風までの「つなぎ」で搭乗する火星搭載の艦上戦闘機など。
『独立愚連艦隊』との大きな違いはやりたい放題ではなく、あくまで連合艦隊麾下の部隊であること。
艦隊のほとんどは架空の登場人物だが、その登場人物の名前が著名人に由来していたりしてまた面白い。
(ただ名前を借りているだけではなく、元ネタの人物に由来するエピソードもちだったりする)
なお長官だけは実在の日本軍提督である。それが誰かというと……「ああ、なるほど」といえる人物である。
4巻まで刊行されたが、その4巻でいろいろやらかしてしまったためか打ち切り状態にある。
(正式にはまだ続巻と謡われているが)
『軍艦越後の生涯』
著者:中里融司
出版:学習研究社(歴史群像新書)
巻数:全3巻
ワシントン条約が否決された世界の物語。
八八艦隊の完成。さらにそれを上回る51センチ砲搭載の巨大戦艦『越後』。史実と変わらないようにアメリカとの戦いへと突き進む日本。そんなときに『越後』の艦長があるとき少女と出会う。
越後の心というべき『船魂』の姿。すべての艦に宿る『船魂』は彼に日本の行く末を危惧する。だが、歴史の歯車は回り続け、ついにアメリカ海軍との全面対決へといくのであった。
八八艦隊vsダニエルス・プラン といったところだけど、メインはやっぱり燃え要素の船魂。
越後の船魂は、鞠を持った幼い和服の女の子だったりと、全体の内容が硬い割には萌えイラスト満載。
もともとは、コンバットコミックスという雑誌の読みきり漫画。その漫画の飯島祐輔氏が挿絵も担当している。
なお漫画版や挿絵を担当した飯島祐輔氏は「新・旭日の艦隊」や「北海の堕天使」などの架空戦記のコミカライズを担当し、今の艦これにつながる萌えミリタリーの源流を築いた先駆者の一人でもあったが、2010年に亡くなられている。
また、本作品を手がけた中里融司氏も『軍艦越後の生涯』の他にも、かたやままこと氏の『戦海のティティス』、『豹と狼』、『砂漠の獅子』といった萌えミリタリー漫画の原案を手がけておられたが、2009年に亡くなられている。
『覇者の戦塵』
1991-2013年(既刊37巻 続刊中)、日本
著者:谷甲州
出版:中央公論新社
1931年の満州事変の最中、本来ならば戦後に見つかるはずの大慶油田が発見されたことから始まる物語。
油田を巡る米ソの思惑を受け、史実と異なる推移を辿りながらも、戦争への流れは変えることは出来ず、
1942年春、日本はアメリカに宣戦を布告。熾烈な戦いへと身を投じていく。
大規模な艦隊決戦はあまり発生しないが、中小型艦艇や少数部隊、あるいは技術者の奮闘が非常に映える作品。
屠龍、二式複座偵察機、キ74、彗星戌型などの比較的マイナーな航空機が活躍する。
また、3式中戦車、4式砲戦車などのチハ車の後継車両が登場するなど、史実に比べ装備の機械化が進んでいる。
古い巻は電子書籍化されており、書店では「マリアナ機動戦」あたりから置かれている場合が多い。
「覇者の戦塵」の後に続くタイトルの小シリーズだけ読んでも十分に楽しめる。
特にお勧めシリーズを以下に記載
「激闘東太平洋海戦」シリーズ
1943年前半、対日反攻を開始した米軍とのミッドウェー諸島を巡る戦いを描く。
伊168、加賀、川内、甲標的などが登場。夜戦馬鹿が夜戦で光り輝く一品。
「マリアナ機動戦」シリーズ
1944年後半、マリアナ諸島を舞台に、再建された米機動部隊との死闘を描く。
隼鷹、彗星甲型、天山、紫電改、零戦62型などが登場。
『征途』
日本
著者:佐藤大輔
出版社:徳間書店
巻数:全3巻
90年代仮想戦記ブーム時代で古典の一つとされており、この作家にしては珍しい完結した作品。
レイテ沖海戦で第二艦隊の栗田司令長官が中途で戦死し、退却せずにレイテ島に突入してマッカーサーが戦死し、
アメリカがソ連の北海道侵攻を許し、北海道の北半分と樺太がソ連の衛星国になった日本における、
親子三代の海軍〜海上自衛隊士官一族と大和の大河ドラマ。
作中、作者の趣味で「宇宙戦艦ヤマト」を始めとする特撮、アニメのネタがふんだんに取り入れられている。
文庫化されたが、もう10年以上たっているだけに、古本屋を回ったほうがいいかも。
『八八艦隊物語』
日本(1992年)
著者:横山信義
出版社:徳間書店
90年代仮想戦記ブーム時代における名作の一つで、仮想戦記では古典の一つとされている。
史実と異なり実際に八八艦隊計画とダニエルズ・プランが実行され、航空戦力の真価が発揮されること無く、
大艦巨砲主義のもとで太平洋戦争が行われるという世界設定で描かれた戦記。
序盤では手に汗握る戦艦同士の艦隊決戦、重雷装艦の大活躍など序盤は血沸き肉踊る場面が多く描かれているが、
中盤からは史実通りに雲行きが怪しくなり、最終的には八八艦隊も長門を残して消え去り、敗戦に至る。
実は、作者の処女出版作「鋼鉄のレヴァイアサン」*5の序章で
大和の沖縄出撃が書かれたところへつながるようになっている。
さらに信濃の艦体に米軍の艤装がされて実戦に用いられる八八艦隊物語外伝へ続くのである。
書籍版は絶版となっているが、徳間書店で電子書籍化されたものが公開されており、近年にはセルフリメイクされた「八八艦隊海戦譜」もある。
『ビッグY 戦艦大和の戦後史』
日本
著者:横山信義
出版社:ワニ・ノベルス
これも仮想戦記では古典の一つとされている一作。
大和がもし戦後アメリカ海軍に渡ったらと仮定した設定での作品で、米海軍で度重なる魔改造を受けながら数々の戦場に赴く大和改め『BB-65モンタナ』と、それを取り巻く人々を描いている。
戦う相手が北朝鮮やベトナムやイラクのため、艦隊戦は勿論存在せず、基本的に戦艦らしいことといえば対地攻撃しかしていないし、結構ピンチに追い込まれたりしている。
このように仮想戦記の中では至って地味な戦記だが、大和好きなら読む価値はあるかもしれない。
ただし露骨な悪意を持って左翼勢力を描いているので、そのへんは注意して読んだほうがいい。
『虎口の海 ソロモン1942』
日本
著者:横山信義
出版社:中央公論新社
第三次ソロモン海海戦おけるifを書いた作品。
霧島が損傷したことによってその代わりに大和が夜間挺身隊に参加、
待ち構えていたアメリカ海軍艦隊を鎧袖一触・・・・・のはずが史実どおりに混戦に巻き込まれ、
あろうことか比叡を襲うはずだった魚雷が大和の舵を損傷させてしまう。
国の威信をかけて作り上げた最新鋭戦艦をなんとしても脱出させようと苦戦する帝國海軍に、
ヘンダーソン飛行場と最新鋭戦艦ワシントン、サウス・ダコタを駆使した、アメリカ海軍の魔の手が襲い掛かる。
多分これ程絶体絶命の危機に陥った大和が登場する作品はめったにない。
作者の特徴である「焦がれるほどに命中しない砲撃」、「苦戦する日本軍」、「ただでは勝たせてくれない(大抵辛勝)」、
「無慈悲に撃沈される」など「日本海軍圧勝」、「最強大和」を期待する提督にはおすすめできない、
(特にお気に入りの艦が沈むところは心をえぐられるほど、あっけない)提督を選ぶ作品。
但し、「艦長や司令官などを軸にした前線の将兵による力戦奮闘」「史実では不遇だった提督や軍艦が力の限りに闘う」
「敵艦に肉薄する雷撃戦の手汗握る臨場感、そして命中の瞬間」などの単に欝展開にならない、
「不屈の闘志」と「日本海軍の底力」による勝利を楽しめる提督にはお奨めできる作品である。
なお大和を軸にしているが、ちゃんと「ソロモンの悪夢」と吉川艦長も活躍しているので安心してほしい。
『紺碧の艦隊』『旭日の艦隊』『新紺碧の艦隊』『新旭日の艦隊』
日本
著者:荒巻義雄
出版社:紺碧の艦隊・新紺碧の艦隊零…徳間書店、旭日の艦隊・新旭日の艦隊…中央公論(新)社、新紺碧の艦隊(零以外)…幻冬舎
90年代架空戦記ブームを牽引した作品の一つ(他代表作品は八八艦隊物語、ラバウル烈風空戦録など)。総称して『艦隊シリーズ』。
あらすじ
- ブーゲンビル島上空で撃墜された山本五十六長官が「後世」と呼ばれ年号として「照和」を用いる世界に「高野五十六」として転生する。
悲劇的な敗戦を繰り返さないため、多くの転生者とともにクーデターを起こすものの、「前世」同様、照和十六年十二月の開戦を迎える。転生者たちは「前世」の記憶を元に超兵器を次々と繰り出し、世界平和を目指す。
航空戦力の威力を隠した上で大艦巨砲主義・潜水艦決戦主義のもとで緒戦を行う設定で、「ご都合主義こうだったらいいな」を描いた場面が数多く描かれている。
真珠湾に続くハワイ占領、潜水艦によるパナマ運河爆破作戦、比叡によるクラスター弾を用いた飛行場破壊等…。その中で潜水艦決戦を担う秘匿兵器として登場するのが伊400型を元にした「紺碧艦隊」である。
また旭日艦隊シリーズはナチスドイツと戦う英国派遣艦隊の活躍を中心に描かれている。こちらに登場する艦艇は同じ名前のものがあっても架空のものであるので注意。
なお、紺碧・旭日を発行順に読まないと上手く時系列が合わない。
最終的には両作品合わせて、強大化したナチスドイツとの全面戦争を最終戦争とし、恒久平和を目指す物語となる。
登場人物がやたら哲学的な会話をするのも大きな特徴と言えよう。
ノベルス版は上記出版社から、また文庫版が徳間・中公文庫から出ているが、現時点絶版の模様。また、漫画版、OVA版もありストーリーの細部などが異なる。
特に漫画版新旭日の艦隊は作者(『軍艦越後の生涯』のコミカライズを手がけた飯島氏)に拠るところの独自要素や解釈が非常に多く、独立した一つの作品としても高い評価を得ている。
『永遠の0』
日本
著者:百田尚樹
出版:講談社
作者のデビュー作。史実の太平洋戦争に準拠して書かれたフィクション小説である。
舞台は現代。零戦を用いた特攻で戦死した祖父・宮部久蔵の生涯について調べることになった青年が、姉と共に元従軍者のもとを訪ねて行く。そのなかで彼はある疑問を感じるのだが、その答えは想像を絶していた――。
綿密な時代考証、そしてそれによる人物設定は見事の一言。「元従軍者の語り」が基本で、あの戦争を理解する為の情報は全て彼らがくれる。経験者自身の言葉で語られる、あの戦争の記憶。その意味の重さを、感じずにはいられない。
そして本作最高の見所は、宮部の人物像にある。彼(や、彼に代表されるたくさんの従軍者)が何を愛し、何を守るために戦ったのかを知った時、平静を保つことが出来る人間はおそらくいない。
あの戦争の後に生まれた、全ての人に読んでほしい作品である。
双葉社から漫画版がアクションコミックスから全5巻出版されている。ページの都合上割愛された描写もあるが、登場人物によっては原作より深く掘り下げられている人物もいる。原作小説を読んでから読むのをお勧めする。
なお2014年正月映画として上映された実写版は、見事な映像と演技の力により8週間連続で観客動員数首位を独占、文句なしの大ヒット作となった。間違いなく一見の価値アリだが、尺の都合で割愛された描写も少なくない。漫画版と同じく原作小説を読み、当時への理解を深めてからの鑑賞をお勧めする。
2015年2月には向井理主演・テレビ東京系列にてスペシャルドラマの放映も予定されている。
『雷撃深度一九・五』
日本(1996年)
著者:池上 司
出版:文藝春秋
1945年、日本が敗戦する直前の7月30日にアメリカ海軍の重巡洋艦インディアナポリスは、伊号第58潜水艦により撃沈された。この事実を元にして執筆されたフィクションが、本作品である。
なぜ、重巡洋艦が潜水艦に撃沈されるという、戦時中の海軍では普通とも取られる事実がフィクション小説の材料となりうるのか。それは、インディアナポリスが原爆の一部をテニアン島まで単艦にて緊急輸送したという事実による。
物語は主に三人、伊58潜艦長の倉本少佐(史実では橋本少佐)、インディアナポリス艦長のマックベイ三世大佐(史実と同名)、そして数奇な運命で伊58に乗り合わせることとなる永井予備役少将(架空の人物)の視点から進んでいき、一点へと集約してゆく。
日本人作家の書く戦争物だが、暗い雰囲気、戦争への偏った評価(肯定・否定)も無く、架空戦記のように突飛な歴史改変がある訳でもない。ただひたすらに時の流れは無情に進んでいき、その中で当人達がいかに決断し、行動したかを淡々と書いている作風である。
『駆逐艦キーリング』
イギリス(1980年)
著者:セシル・スコット・フォレスター
出版:早川書房
本作品はフィクションながら、第二次世界大戦における大西洋での対Uボート戦がどんなものであったのか、肌で感じられるものである。
内容は至って地味。この物語は、大作戦でも秘密作戦でも何でも無い、単にアメリカからイギリスに向かう輸送船団の護衛艦隊指揮官の話である。地味の極みと言ってもよい。
おまけに、主人公たるクラウス中佐は、バツイチで出世街道からも外れた、しかし仕事は真面目にこなすという、お役所とか大手企業によくいるような中年男である。
300ページあまりもあるのに、作品内で進む時間はたったの三日。しかもクラウス中佐は、ほとんど徹夜。飯もろくに食う時間が無い。なぜなら、艦長を務める駆逐艦キーリングの他に、護衛艦隊(内訳は、キーリング含む駆逐艦2隻と、コルベット2隻のみ)の指揮も執らないといけないからだ。
更に、護衛している船団は37隻の大所帯。大きさも建造年も不揃いで、機関とか舵とか、船体のどこかが不調な奴だっている。しかも船団指揮官はクラウス中佐とは別にいて、そいつはそいつで護衛の都合よりも、船団の都合の方を優先したいから、たびたびクラウス中佐の方針と対立する。
こんな状況で、荒波の中、Uボートを見付けたり見失ったり、攻撃したり攻撃されたり、というのを延々と、地味に続ける訳である。
ある意味、艦娘達が遠征の時にどうしているのか、想像する材料になる作品ではないだろうか。
読む際は、ぜひ、なみなみと熱いコーヒーを注いだでかいマグカップをお供にすることをオススメする。
『巡洋艦アルテミス』
イギリス(1979年)
著者:セシル・スコット・フォレスター
出版:西武タイム
隠れた名作。無名の名作。そういった紹介をするのに、これほど相応しい作品もそう無いだろう。『女王陛下のユリシーズ号』と対を為す存在と言っても、過言ではない。
それほど日本での知名度は低いのだが、『アフリカの女王』、『ホーンブロワー・シリーズ』を手がけたフォレスター氏の作品だけあって、非常に読み応えのある作品である。
主役となるのは、イギリス海軍の軽巡洋艦アルテミス号である。
ユリシーズ号は過酷な北洋でのドイツ軍と戦ったが、アルテミス号は地中海でイタリア軍と戦う。
イタリア軍が相手、と聞いて鎧袖一触の存在と、鼻で笑う方もおられるだろう。
だが、本作でイタリア海軍が繰り出して来たのは、戦艦二隻、多数の重巡洋艦、そして駆逐艦隊からなる部隊で、イタリア海軍のほぼ全力である。タラント、マタパンで痛めつけられながらも、マルタ島への補給を阻止せんと、艦隊温存戦略を捨てて、全力出撃をかけてきたのである。
それにも関わらず、アルテミス号が属する艦隊は、軽巡五隻と駆逐艦十二隻、そしてマルタ島へと向かう輸送船団で、航空支援も無いし、戦艦が来てくれる宛てもない。幾度となくイタリア空軍の攻撃にさらされ、そろそろマルタ島かと言う時に、正面からやってきたイタリア艦隊と激突する羽目になる。
物語は、アルテミス号の各乗組員の視点から、それぞれの持ち場から見えるもの、それぞれが思っていることを、三人称視点で記述してある。
登場人物は、皆が皆、等身大の人間として書かれている。フィクションの軍事小説にも関わらず、英雄的な人物がほとんど登場しないのが特徴である。「海軍めしたき物語」でも読んでいるかのような主計長視点の記述があったり、艦長の副官が作戦中にも関わらず個人的な恋の悩みに葛藤しながらも任務に集中しようとしたり、たった一人でスクリューシャフトの軸受が異常加熱していないか監視し続ける一等兵曹がいたりと、登場人物にしろ、それが登場する事にしろ、とかく個性的である。しかも、その記述には曖昧なところが一切無く、軍事的な考証も正しい(少なくとも1979年当時は)。
艦長のマイルズ・アーネスト・トラートン=ハリントン=ヨーク卿もまた、等身大の人間として書かれているのだが、指揮官としての立ち振る舞いが板に付いており、剛胆かつ冷静な人物と見えるように書かれている。
なお、本作品は「英国海軍軍艦<ペネローペ号>乗組みの全将兵各位に、深甚なる敬意を表して、本書を捧ぐ」と述べられている。これは、本作品の推移は第2次シルテ湾海戦を、アルテミス号はペネローペ号をモデルとしたことによる。
『ラバウル烈風空戦禄』
日本
著者:川又千秋
出版社:ラバウル烈風空戦禄本編(1〜15巻)及び外伝ほか4巻…中央公論社、翼に日の丸(上・中・下・外伝)…角川文庫
上記の八八艦隊物語や艦隊シリーズに並ぶ90年代架空戦記ブームを牽引した作品の一つで元撃墜王の回想録という形で書かれた架空戦記。通称『ラバ空』
主人公がパイロットであるため艦船の出番はそこまで多くはないが、しっかり海戦の描写はあるほか一時的に主人公が所属した隼鷹などの描写もある。なお、『翼に日の丸』では、龍驤が俎板という単語とセットで登場する
ストーリーは序盤のうちは史実とそこまで大きく変わらないのだが、海戦のごとに史実より米空母を一隻多く沈めていたり艦これではおなじみの天山や流星などといった史実で開発が遅れた艦載機が比較的速く戦線に登場していたりと日本側にやや有利になっている。
なおこの作品、物語も終盤となった15巻でのあとがき曰く「あと3巻」というところで新刊が出なくなってしまった。とはいえ後に角川文庫から視点を変えたうえで再構成された『翼に日の丸』シリーズとして一応完結している。
ちなみに現在中古本くらいでしか入手できないものの、第二次ミッドウェー海戦直前までの分はコミカライズ化もされている。
……ストーリーの都合上艦これに登場する潜水艦娘達の戦果が史実以上に凄いことになっている。まあそこは架空戦記だし、ね?
『最強戦艦決戦シリーズ』
著者:内田弘樹
艦これノベライズ『鶴翼の絆』の作者の過去作。
史実に少々手を加えて、ありえたかもしれない様々な『最強戦艦』の構想を基本一冊完結で送る架空戦記シリーズ。
題名は『○○の巨竜』で通されているが、それぞれが独立していて世界観のつながりはない。
史実兵器のみの場合から架空兵器が主役のものまで、切り口をがらりと変えてそれぞれの可能性を追っていく。
なお、架空兵器は荒唐無稽なものは現れず、あくまで実際に可能な技術力で作られていっている。
以下、既巻とあらすじ
『蒼海の巨竜 最強戦艦決戦 大和vsモンタナ』
ソロモン海戦に大和を投入して米戦艦2隻を撃沈した結果、米国は新造戦艦モンタナを完成させた。最強戦艦の座を賭け、ギルバート沖で決戦が始まる。
『灼熱の巨竜 最強戦艦決戦 ラバウル強襲1943』
米軍ラバウル強襲。連合艦隊は大損害を受け、さらに米主力戦艦部隊が迫る中で、大和と武蔵は傷ついた体をおしてこれを迎え撃つ。
『迫撃の巨竜 最強戦艦決闘 マリアナ1944』
大和の第三砲塔が突如爆発。航空戦艦として再生された大和は伊勢・日向とともに独自の戦法で艦隊決戦に挑む。
『砲煙の巨竜 最強戦艦決戦 ソロモン1942』
超重巡洋艦『剣』型が完成。戦術ドクトリンの変化に翻弄されながらも、2隻の巨大巡洋艦はガ島の進退を賭けて夜戦に望む。
『逆撃の巨竜 最強戦艦決戦 ブーゲンビル1944』
ガダルカナルで大破し放棄された米戦艦『サウスダコタ』を日本海軍は戦艦『尾張』として再生させた。裏切りの巨竜として狙われる『尾張』に米軍の猛攻撃が迫る。
『双撃の巨竜 最強戦艦決戦 フィジー1943』
マレー沖海戦で出撃するも米新鋭戦艦を相手に大破した長門と陸奥。しかし日本海軍は海軍休日時代に培った技術を投入し、2隻を大和型に準ずる最強戦艦に大改装するのだった。
『陸軍空母戦記 ミッドウェー陥落せり!!』
日本(2004年)
著者:子龍螢
出版:学習研究社
昭和17年、ドゥーリットル隊の奇襲により本土空襲を許してしまった帝国陸海軍は、その全力を持って対米侵攻作戦を計画した。『ミッドウェー作戦』の発令である。
しかし、計画段階から数々の不備が発覚し、作戦の前途にはすでに暗雲がたちこめていた。
一方そのころ、帝国陸軍は対米戦を睨んで建造していた特設船『あきつ丸』を完成させる。それは、強襲揚陸艦と護衛空母の機能を併せ持つ、まさに”陸軍空母”であった。
近藤信竹中将の攻略部隊に組み込まれ、『あきつ丸』は遼船『ときつ丸』とともにミッドウェーを目指す。
だが、『あきつ丸』の船長に選ばれたのは陸海軍の士官ではなく、乗船経験にすら乏しい民間人だった。
陸海軍の総力をあげての大作戦であるミッドウェー攻略。しかし、稚拙な作戦はさらに錯誤に錯誤が重なって混乱の体をなしていき、そこへ米機動艦隊が迫り来る。
そんな中、戦場に急行する二隻の『陸軍空母』ははたして戦況を変えられるのだろうか……!?
架空戦記ブームも山を超えて、数々のヒット作も完結していった時代に生まれた一作。
この作品の見所は、なんといっても艦これでも異色の艦娘(船娘)である『あきつ丸』が”主役”で活躍する、ほぼ唯一無二の架空戦記である点だ。
ifとしては、『あきつ丸』に航空離着艦能力が付加されたのは1944年であるが、今作では1942年にすでに改装されているためにミッドウェー戦に参加ができるようになっている。
そのため、『あきつ丸改』が参戦すると思えば提督方にはわかりやすいだろう。
人間模様では、主人公であり作中唯一の民間人である『あきつ丸』船長と、陸海軍のさまざまな人間との関わりで、ミッドウェー作戦をとりまく人々のそれぞれの視点が見えてくる。
また、山本長官から現場指揮官のひとりひとりまで考え方の違いが細かに描写されているのも見逃せない。
慢心、油断、様々に批判されるミッドウェー作戦であるが、連合艦隊とて大勢の人間が集まった組織であり、大きな流れの中ではたとえ正しいことを思っていても、個人の力ではどうにもならないことがたくさんあるということを忘れてはならないだろう。
全体的に派手さは控えめであるが、登場人物たちの一生懸命さが伝わってくる作品であると思える。なお、『あきつ丸』おなじみの大発動艇もちゃんと”本来”の形で使われます。
『不沈戦艦 紀伊』
日本(1996〜2001)
著者:子龍螢
「資源のない我が国には、絶対に沈まない戦艦が必要なのです!」
第二回歴史群像大賞「奨励賞」受賞作品にして作者氏のデビュー作品。全16巻(外伝として0巻がある)。
架空戦記ブーム華やかなりし頃誕生し、それまでのいかに航空主兵主義に早期に転じるかに傾倒していた架空戦記界に一石を投じた意欲作。
作風を一言で言えば「大艦巨砲主義者の大艦巨砲主義者による大艦巨砲主義者のための小説」である。
「戦艦は決して航空機に劣るものではない」をテーマに、海の女王たる戦艦のロマンと可能性を追っていく。
史実で超大和型戦艦のネックになった港湾施設の問題を旅順に造船所を作ることで解決し、予算と資材は武蔵以降の全戦艦と空母を中止。
そのかいあって、予算と資材に縛られず、本作の主人公である紀伊型戦艦が誕生することになる。
第一巻のキャッチコピーに、『炸裂する51センチ砲!! 昭和19年10月……全長328メートル、12万トンの超巨大戦艦が出撃した──!!』
とあるとおり、超大和型戦艦の最大級の構想を実現したものとなっているが、史実では予算などの問題でカットされた機能を盛り込んでいるので内実はそれを上回る。
特にすごいのが「不沈戦艦」の名にふさわしい絶大無比な防御力であり、なんと”魚雷80本に耐える”水雷防御を持っているのである。
荒唐無稽と馬鹿にされかねないが、史実で『武蔵』が見せたしぶとさを考えれば無理とは言い切れない。
さらに大和型の倍以上の対空火器と、エンガノ沖海戦で伊勢と日向を無傷で保った松田千秋少将の爆撃回避術と対空弾幕射撃を持ってして、航空機では撃沈不可能な「モンスター」として米海軍相手に暴れ回る!
しかし米海軍も負けてはおらず、あの手この手を持って「モンスター」撃沈に執念を燃やす。このあたり、日米の人物描写が公平なのも本作の特徴であり、場面によっては米軍を応援したくなることもある。
また、敵味方ともに造船官が頻繁に登場し、技術面においての考察を深めている。ここまで技術面で裏付けて架空兵器を作ったのは恐らく本作が初。
これについては特に0巻を「不沈戦艦建造秘話」として外伝化されており、夕張、古鷹、妙高型などが日本の造船界の発展の印として作られていたことを史実を交えて語られる。
”戦艦は航空機にかなわない” 本当にそうだろうか? いや、そんなことはない。
「沖縄には30隻の米空母がいる。もしも30隻の大和型戦艦が突入したら、これを航空攻撃で防ぐことができるだろうか?」
当時かけねなしで世界最高水準であった日本の造船技術がフルに活用されていたら、どこまでのものが作れていたか?
現実に、大和を作った造船官のひとりは大和型はもっと強靭に建造することができたはずだと書き残しており、大和型のその上を目指すのは技術的には夢物語ではなかったのだ。
すでに敗色濃厚な中、『紀伊』と姉妹艦『尾張』は死力をあげて戦い、米軍の侵攻計画は大きく遅延を余儀なくされる。しかし、日本軍もまた大きく傷つき、背後の赤い大国も動き始めていた……
最初から最後まで、息つく暇もない大戦末期の緊張感の中を舞台にしたストーリーは壮大であり、柔軟な発想のもとで飽きさせずに『紀伊』の長い戦いが描かれる。
現在は文庫版が発売中、7巻<殲滅>にて完結(コスミック文庫) また、コミック化もされている。(歴史群像コミックス・全10巻)
『最強戦艦魔龍の弾道』
日本(2001〜2002)(全6巻)
著者:林譲治
異色の架空戦記である。
なぜなら、このシリーズに登場する戦艦大和は、なんと架空戦記史上最小の基準排水量なのだ。実在の長門が基準排水量約四万トン、大和に至っては約六万二千トンあるのに、なんと四万五千トンしかない。しかも、三連装砲は不採用、46センチ砲も不採用で、41センチ連装砲五基を装備し、砲塔配置は加賀型の改良版に落ち着くなど、外見的にもまったく冒険していない意匠である。
このような艦型に落ち着いた理由は何か。そして、なぜ46センチ砲も搭載していない“最小の大和”なのに題名で“最強”を名乗るのか。
それについては、作品の最も重要な肝となる部分なので、是非、中身を読んでもらいたい。
この作品は、海軍という官僚機構がどのようなドクトリンをもって軍艦の建造を計画し、現場ではどのような動きがあるのか、といった技術的な視点を示している。
1巻ではこの“最小の大和”、ほとんど書類上の存在であり、“最小の大和”に載せるための新型機関と同等の構造のものを、新型駆逐艦天津風に搭載して具合を調べる、といったことが行われている。また、どういった事務手続きを経て軍艦というものが建造に至るのかという、他の架空戦記では全部すっ飛ばされている部分を綿密に描いている。
「ご都合主義すぎるんじゃないの?」という展開もあれども、「こんな些細な事で、歴史って変わるのか」といった新しい視点も提供してくれる。しかも、架空戦記としては珍しく、主軸はほぼ史実通りである。本作でも、「勝ちまくって図に乗った結果、餓島に引きずり込まれる」という史実準拠の展開となってしまう。
なにより、“戦艦は大きいほど強い”という常識を打ち破る“最小かつ最強”という型破りな大和型戦艦という存在を提示した時点で、作者の目の付け所、考え方の新しさが理解して頂けると思う。
惜しむらくは、6巻まで続いたのに、最後は打ち切り臭い終わり方になっていることだ。まるで“男坂”のようなもやもやした終わり方なので、読み始める方は、覚悟して頂きたい。
『流浪の戦艦「大和」』
日本(2013年)
著者:子竜 螢
「滞在時間は72時間!時空転移し国難を救い続ける『大和』。果たして最終決戦地1945年の沖縄に戻ることができるのか!?」
いわゆる時空転移物小説
菊水作戦で沖縄に向かう大和艦隊が突如謎の空間に入り込む。その空間から出ると周りの護衛艦が矢矧を除いて確認できない。位置を調べてみると日本海、時間も調べるとなんと日本海海戦前日だった。
大和と矢矧はロシア・バルチック艦隊を撃滅するべく出撃する。
実際小説を読んでもらうとわかるが、意外とドンパチしない。歴史上で日露両軍が確認してない艦の沈没原因が実は大和だったという物語。他の時代にも転移するが実際読んで驚いてもらったほうが良いと思います。
歴史の謎を利用したとんでもないお話の小説だが、そういうのが嫌いじゃない人はぜひ読んでもらいたい。結末も以外な終わり方である
『宇宙戦争1941』
日本
宇宙戦争1941(2011年)・宇宙戦争1943(2012年)・宇宙戦争1945(2013年)
著者:横山 信義
「奇襲ハ先ヲ越サレタリ―真珠湾を攻撃した異形軍団の正体とは!?」
宇宙戦争という映画・小説を見たことある人ならご存知だろう。あのトライポットが現れる・・・。大阪ではトライポッドを何体か倒したらしいぞ・・・!
日本軍の真珠湾攻撃部隊が真珠湾に到着した時にはすでに米艦隊は壊滅、謎の兵器が蹂躙していた
日本軍はこれらに攻撃をするがなんと250kg爆弾の直撃でもびくともしない敵、逆に相手は熱線攻撃をするが百発百中当たれば即死という高性能。
航空戦だけではなく海戦もある。マラッカ海峡の戦いでプリンス・オブ・ウェールズとレパルス、フィリピン救出作戦で金剛・榛名・高雄・愛宕がトライポットと死闘を繰り広げる。
みんな大好き三式弾も第2巻で登場。3巻では日米英独伊仏ソ艦隊vs宇宙人という艦これ顔負けの多国籍艦隊が登場。さらにこれまたみんな大好き空の魔王ルーデルと加藤隼戦闘隊で有名な加藤建夫が共闘するという夢のコラボが見られる。
他にも大小問わず多数の艦艇が出るため提督は是非とも見てもらいたい作品である。
世界観的にも異形の兵器に軍艦が立ち向かうという艦これにも似た雰囲気です。
もし艦これ世界にトライポット軍団が現れたら、艦娘たちはどのように立ち向かうのだろうか・・・
『第七の艦隊−奇襲!!重雷装艦隊出撃す!』
日本(2012年)
著者:東剛道
出版:学研(歴史群像新書)
空母機動部隊が主役の戦場で、重雷装艦や甲標的母艦はどのような活躍が出来るのか?というIFを描いた作品。
艦これに実装されている「北上」、「大井」、「千代田甲」、「伊8」が主役となっている。
IF作品らしく、これらの艦が太平洋を縦横無尽に活躍!・・・・と言う事は無く、
ストーリー前半は彼女達はみ出し者の艦を集めた特殊部隊創設の為に、“海軍一の変人”黒島亀人が軍令部や連合艦隊首脳部の間を東奔西走する姿が延々と描写される(むしろ、こっちの方が本筋に近い)。
史実通り真珠湾攻撃が開始されると、機動部隊の撤退を援護する為の囮となり、追撃してきた巡洋艦を何とか撃破。
ハイライトは珊瑚海海戦で、撤退中の空母「ヨークタウン」を待ち伏せて攻撃を仕掛ける。その成果は・・・・?
『帝国大海戦』
日本(1994年)
著者:伊吹秀明
出版:学研(歴史群像新書)全8巻+外伝1巻
ナチスもソビエトも台頭しなかった架空の1940年代、日英同盟と米仏蘭連合の間で第二次世界大戦が始まる……というシチュエーション型の仮想戦記。
著者がライトノベル畑にも軸足を置いているだけあり、軽妙な文体でサクサクと読める。
登場する兵器は基本的に史実で建造または計画されたものばかりなので、艦これでミリタリーを知った人でも取っつきやすい。
また、フランスやイタリアといった中々知られていない海軍の奮闘も見どころ。
ちなみに作者の著名作には同時期に『ガルパン』に先駆けること20年、ネコミミ美少女が戦車を操るその名もずばり『出撃っ! 猫耳戦車隊』(ファミ通文庫)があったりしている。この国はとっくに手遅れやったんや……
『バトル・オブ・ジャパン』
日本 (1997年)
著者:青山智樹
出版社:KKベストセラーズ(ワニ・ノベルス)
1941年12月、真珠湾に迫る日本機動部隊から攻撃隊が発進する直前、日米開戦は回避された。「ハワイ危機」と呼ばれる一連の事件は、ハル・ノートの内容に驚いた合衆国大統領補佐官の「日本の首相と会見すべきです」という主張によって回避された……
それから数年。日本は見事に平和ボケし、海軍主力の零式艦上戦闘機ですら老朽化で主脚折損事故が頻発する始末。そんな中、陸海軍で別個に展開していた航空戦力を効率よく運用するため、両者を独立統合し大日本帝国空軍が発足することとなった。
主役の1人、飛島翔は空母『蒼龍』整備兵だったが、航空機搭乗員への道を目指して空軍への移籍を申し出る。戦闘機志望だったが、適正なしと判断され偵察機搭乗員に回されてしまう、のだが……
一方、件の大統領補佐官は1944年のF・D・ルーズベルト大統領の再選時に副大統領に、さらにルーズベルトの死に伴って第33代アメリカ合衆国大統領の座に就いた。一旦は日米開戦を回避した彼だったが、彼のアメリカ合衆国の社会に対する過剰な憧憬は、やがてその広がりの障害になる大日本帝国とドイツ第三帝国への憎悪へとつながっていく。
そして1945年、米海軍空母機動部隊による日本本土奇襲により太平洋戦争は開幕。大和以下の戦艦も赤城以下の空母機動部隊も身動きもとれぬままに壊滅し、マリアナは失陥。日本本土上空にB-29の大群が迫るが────
タイトルにある通り開戦いきなりからの日本本土防空戦から始まるという内容。「え、無理ゲーじゃね?」と思わせるテーマながら、仮想戦記の大御所青山智樹がそう考えさせることなく描き切っている。
著者によると当初の構想ではタイトル通り日本本土防空戦を中心に3巻程度で収めるつもりだったが、どんどん話が広がり結局終戦までの全8巻となった。
ハードなウォーシミュレーションの一方、アクションノベルの要素も盛り込んでいる。
飛島翔は日本本土奇襲作戦の一環として行われた東京中枢攻撃作戦に参加したあるF4Uコルセアのパイロットと空戦状態になる。そのパイロット──もう1人の主人公であり、大統領の甥であるパトリックとの因縁の戦いもこの時始まる。
艦これ登場艦では、大和は描写は少ないながらも神がかり的な強さを示す一方、一航戦・二航戦と大鳳はほぼいいとこなしなのでファンの方には厳しいかもしれない。一番見せ場があるのは伊勢姉妹か。終盤で沈んでしまうけど……
航空機では烈風が中盤以降の主人公機として大活躍するのでファンの方は必見かも。壊されまくるけど。
萌え要素はないが、飛島翔とその師匠筋である饗庭鱗との掛け合いは作品の中のオアシス。
日米とも苦しいはずなのだが、悲惨な描写はどちらかと言うと米軍側が多い。
ちなみにパトリックの名前は別の作者・作品からの借用のようである。彼の叔父、つまりトルーマンの代わりに第33代大統領になった人物とは……【知りたい人・知ってる人だけ反転】:アドルフ・ヒトラー。所謂「ヒトラーユダヤ人説」(著者自身はこの説には懐疑的である)をとり、事実を知ったヒトラーはアメリカに移民し、建築家兼アマチュア画家として成功、やがて政治の舞台にも進出していくのだった。
『大和咆哮ス! -連合艦隊vs米太平洋艦隊-』
日本 (2000年)
著者:小林たけし・他
出版社:学習研究社
架空戦記漫画6編(『戦艦大和 ガダルカナルに吼ゆ』『これが男の生きる道』『神の鉄槌』『最後の雷撃』『連合艦隊最後の海戦』『日米沖縄決戦 紀伊降臨!』)を収録したオムニバス短編集で、戦艦大和から潜航艇蛟竜までシチュエーションも作者もまったく違う話が収録されている。話の間にも主役兵器の詳細データ・艦艇ミニコラムなどが挟まってどこから読んでも面白い。
松本零士へのインタビューは大和や戦争への思いが語られているので、ファンの方は目を通してみてほしい。
なお、『日米沖縄決戦 紀伊降臨!』のみ短編ではなく、コミック版『不沈戦艦紀伊』の一部抜粋になっている。そのためシチュエーションがわかりづらいが、端的に述べれば連合艦隊全艦での天一号作戦のさなかに早期に発見されて集中攻撃を受けている大和を救援に紀伊が来たという形である。
ノンフィクション・書籍
『機動部隊』
1951年、日本
著者:淵田美津雄、奥宮正武
出版:日本出版共同/朝日ソノラマ/学習研究社(学研M文庫)
まだ占領下に出版された戦記の古典中の古典、ミッドウェー海戦終了直後からマリアナ沖海戦までの空母部隊の戦いやその準備が記されている。
共著になっているが、実質は奥宮さんがほとんどを書いているので、彼が航空参謀を務めた第二航空戦隊の動きが中心になっている。
度々の陸上転用で低下する搭乗員の技量の差をもって日本は敗れ去ったという結論が描き出される。
著者は朝日ソノラマの文庫版で所有しているが、現在も版を変えて発売されているのではないだろうか。
『マリアナ沖海戦』
2007年、日本
著者:川崎まなぶ
出版:大日本絵画
マリアナ沖海戦で日本が敗れたのは、搭乗員の技量不足だけなのか、定説となった奥宮の「機動部隊」に対して投げつけた疑問を解き明かしてゆく。
南太平洋沖海戦からの空母艦載機の動きを生存者から取材をしてまとめあげられている。
ガダルカナル島撤退の段階で航空戦力がすでに破綻していることがわかる。さらに、決して訓練不足ではなかったと主張する。
真珠湾攻撃でさえ、半年も訓練していない初実戦のパイロットが相当数いた事も解き明かされる*6。
敗北の原因は、ひとえに数の差と電子機器の能力、信頼性であるというのである。
もっとも、数字のマジックがあって、ソロモン戦までで激しく消耗した士官搭乗員の飛行時間がが算入されていない。
日本海軍が多少の戦術を弄したところでいかんともしがたい状態にあったことを証明してくれる一冊である。
『超精密「3D CG」シリーズ 44 日本海軍 艦艇集』
2009年、日本
出版:双葉社
太平洋戦争期の日本海軍の艦艇のCG集。
戦艦・空母・巡洋艦・駆逐艦・潜水艦といった戦闘艦はもちろん、敷設艦や給糧艦、掃海艇といった裏方もしっかりCG化。
当時の艦艇の写真は殆どが白黒であったため(時代的に当然だが)、CGとはいえフルカラーの資料は何気に便利である(プラモ作成時とか、軍艦の絵を描く時とか)。
さらに艦艇や装備の詳しい解説、艦艇のデータ目録、艦艇名簿といった役立つ(?)コーナーも充実。
海軍オタなら持ってて損はない一冊。というかこの本があればだいたいの艦娘のことは分かる。
なお同シリーズからは他にも『奇跡の幸運艦 雪風』、『CGシュミレーション戦記 1942年艦隊決戦』、『超弩級戦艦 大和の最期』などといった書籍が出版されている。
『WW2イラストレイテッド 艦船名鑑 1939〜1945 改訂版』
日本
出版:光栄
日本、米国、英国などのメジャーな国からトルコやポーランドなどのマイナー国まで、排水量6万トンの戦艦から数百トンのコルベットまで幅広く二次大戦中の軍艦を扱った軍艦辞典。
字数の問題から等級ごとの説明に終始しているため個艦の活躍はそれほど語られないものの、側面図イラスト付きで、ほぼ世界中の軍艦を網羅するその情報量は魅力的なもの。
値段もその情報量に比べればかなり安価な部類なので、手元に一冊置いておいても損はないと思われる。
艦娘達だけでなく、彼女らと戦った相手の事を詳しく知りたい人には副読本としてぜひオススメの一冊である。
『第二次大戦海戦辞典1939~45』
日本
出版:光栄
『艦船名鑑』と同じく光栄の制作する、第二次世界大戦で発生した多くの海戦を網羅した海戦辞典。
真珠湾攻撃やミッドウエイ海戦、南太平洋海戦などのメジャーどこは無論、レンネル島沖海戦やセント・ジョージ岬沖海戦などのマイナーなものも、海戦図や両軍参加艦艇等を列記している。
更に太平洋に留まらず英独が死闘を繰り広げた大西洋での諸海戦や、日本では殆ど語られない地中海でのイギリスとイタリアの両海軍の戦いも事細かに書いており、第二次世界大戦の海戦を知るにはオススメである。
海戦内容の説明も事細かで第3次ソロモン海戦での夕立や綾波の奮闘等、個艦の活躍も描かれている。
手頃な大きさで読みやすく、艦娘たちの活躍を知るには有益な副読本です。
『歴史群像 太平洋戦史シリーズ』
日本
出版:学研パブリッシング
太平洋戦争時の海戦や兵器を特集を組んで扱っている。現在でも続刊が刊行中である。
艦艇の特集は退役自衛官らがライターとなり、既成艦船工事記録や戦闘詳報といった当時の記録を基に各艦の変遷を精査するなど、かなり突っ込んだ内容になっている。
初期に刊行され手に入りづらいものについては【完全版】として新版がリリースされている。
『戦史叢書』
1966-1980年(全102巻)、日本
出版:防衛研修所戦史室・編、朝雲新聞社・刊
所謂「公刊戦史」。戦史研究のバイブルとまで言われるが、出版が古いので現在の目で見ると誤りも多いのは仕方が無い。
一般販売はされておらず、閲覧は大きな図書館から借りるか、古書店で入手するしかない。
現在、新たに発掘された資料による増補改訂を含んだデジタル化の作業が進められている。
『聯合艦隊軍艦銘銘伝―全860余隻の栄光と悲劇』
1993年 日本
著者:片桐大自
出版:光人社
日本海軍の艦艇を全て網羅した辞典的な1冊。
著者は、海軍の造船の道を志した後、文科に転身して日本語研究や辞書の編纂にあたった経歴を持ち、海軍艦艇についての知識はもちろん、日本語文化にも精通した人物。
その取り扱い範囲は、幕末の幕府軍艦から昭和末期頃までの海自艦艇にまで至るほど幅が広い。
艦艇の命名経緯やその意味の解説からはじまり、1隻ずつ丁寧かつ情緒豊かにその生涯が書き綴られている。
海軍ファン・マニア必携と言っても過言ではない名著である。
著作時期の関係で、現在の最新の考証とは食い違う部分もあるが、それでも1線級の資料として大いに価値がある。
辞典ではあるものの文体が読みやすく、読み物としても十分楽しめる出来で、艦これで海軍艦艇の世界を知った提督諸兄にもお勧めできる一冊である。
2014年に新装版が出されたので、値段こそ張るものの手に入れやすくなった。
※ただし、駆潜艇や輸送艦など番号表記の艦や潜水艦は、基本的に扱っていないのでその点は注意。
『あゝ伊号潜水艦』シリーズ
『あゝ伊号潜水艦―海に生きた強者の青春記録』『続・あゝ伊号潜水艦―水中特攻隊の殉職』
1979年、1980年 日本
著者:板倉光馬
出版:潮書房光人社
最上で上官を殴って青葉に転勤させられ、真珠湾攻撃に参加し、落ちたら心臓麻痺で死亡確実の冬のオホーツク海に落ちて何故か助かり、最後には回天(伊58曰くアレ)の指揮官を務めた板倉光馬の自伝的作品。
やや古い本だが、新装版が出ているため入手は容易。
元潜水艦長だけあって戦いの緊張感がよく表現されている一方で、文章は軽快で読みやすい。
真珠湾攻撃、モグラ輸送、キスカ島撤退などについて潜水艦視点で書かれており、内地の指揮官や水上艦視点で書かれた他の多くの作品とは一線を画する。
続編はサブタイトルからもわかるとおり、ほぼ全編にわたってアレについて書かれている。
どのような訓練を行っていたか、何を思ってアレを作ったのか、立案・設計者は如何に殉職したか、アレなんて大嫌いな人ほどぜひ目を通してほしい内容である。
『戦艦大和のしくみ』(カラー版徹底図解シリーズ)
2012年 日本
著者:著 矢吹明紀 他
出版:新星出版社
そのタイトルの通り、戦艦大和のメカニックから当時の艦内生活まで、ありとあらゆる大和に関する事柄が紹介されている。
また、その姉妹艦である武蔵や信濃のエピソードも、大和に劣らぬ内容で記されている。
また驚くことに、5章あるうち1章丸々使って、古代ギリシャのガレー船(!)から始まる軍用艦の歴史(超弩級の語源となったドレッドノートも勿論紹介されている)、
日清戦争から坊ノ岬沖海戦まで戦艦が関わる主要な海戦(太平洋戦争の海戦メインだがBismarckが唯一参加した戦い「ライン演習作戦」も含まれている)が、分かりやすい資料と共に解説されている。
なお、肝心の解説内容に関しては若干怪しいところもあるので注意。
他にも、当時日本海軍に所属した各種軍艦や、アイオワなどの世界の戦艦が紹介されており、
戦艦を知らない着任したての新米提督にも非常にオススメの本である。
『福井静夫著作集 軍艦七十五年回想記』
1992年〜2003年 日本
著者:福井静夫
出版:光人社
日本の軍艦研究の第一人者とも呼ばれる福井静夫の著作集。著者が帝国海軍の造船官だったこともあり、個々の艦艇の戦史よりも、艦艇開発史や艦級レベルでの性能の解説に重点を置いている。
全12巻(新装版は現在9巻まで刊行)。各巻ごとに扱っている艦種が異なり、全巻を合わせると第二次大戦時の帝国海軍艦艇のほとんどを始めとして、明治時代の艦艇や一部の海外艦なども網羅されている。
内容は各艦級の大まかな解説と、かつて軍事雑誌に掲載された記事の再収録からなる。特に後者はかなり内容が濃く、戦艦や駆逐艦といったメジャーな艦に留まらず、日露戦争期の艦や海防艦などの補助艦艇に至るまで、造船官時代の体験を交えた回顧録的な解説がなされている。
艦によって解説の密度に大きな差がある事や、刊行された時期がだいぶ前なので情報が古い事などの欠点もあるが、艦娘たちが作られた背景や、どのような能力を持っていたのかを知るのには役立つだろう。
ただし、全巻購入して読破するにはそれなりの金と労力が必要となる。編集者は数巻づつ図書館から借りて読んだ。
『艦長たちの太平洋戦争』
日本
著者:佐藤和正
出版社:光人社
著者が太平洋戦争中に実際に艦長として指揮をとった人々に行ったインタビューをまとめた本。
その範囲は戦艦「大和」から戦時中に急増された艦名のない海防艦の艦長まで多岐にわたり、各軍艦の奮戦の模様や、艦長たちの労苦の模様などが色濃く描かれている。
そのため面白さだけではなく、情報量も非常に多い本である。
インタビューされた人の中には、艦これに参加している艦で艦長や副長以下の役職を勤めた方も多くおり、諸提督は読んでおいて全く損は無いと言える。
具体的には第三次ソロモン海戦での「綾波」の大奮戦、「伊168」のヨークタウン撃沈劇の顛末、「時雨」のスリガオ海峡海戦での激闘
エンガノ沖で見せた「伊勢」「日向」の防空術、艦長が友人同士だからこそ出来た「文月」「皐月」の巧みな連携プレー、
自前の空襲回避法によって爆撃機に挑んだ「那珂」、文字通りの五里霧中を進む「響」のキスカ撤退戦、「伊401」の最初で最後の出撃などがある。
どれもその場に居た人間だからこそ証言できる臨場感に溢れ、ありありとその光景が浮かぶ戦記である。
自分の好きな艦娘の奮闘を知るにも持ってこいの本だろう。
『第七駆逐隊海戦記』
2010年 日本
著者:大高勇治
出版:光人社
御著者は雷と潮の通信担当だった方。華々しい大型艦の裏で縁の下を支え続けた海の男達「駆逐艦野郎」の物語。
前半は筆者が初めて乗り組んだ駆逐艦「菊」でのお話と、日支事変の時に雷乗組み、そこへ皇族の伏見宮殿下が着任したエピソード。
筆者の艦艇勤務キャリアがちょっと変わった始まり方をした所為もあってか、
よくある先輩後輩・しごいたしごかれたという厳しい話はほとんど皆無。
代わりに、お上品さなどどこ吹く風と愉快奔放に振る舞う話が中心で、明るく楽しく読める珍しい戦記。
後半から潮乗り組みで開戦を迎える話に入り、ミッドウェー島砲撃、珊瑚海海戦にAL作戦と有名な海戦が次々登場。
それら以外にも南洋原住民との交流や休息地での娯楽話など様々なエピソードが詰め込まれている。
潮ちゃんがなんとなくびくびくした性格なのは、こんな海の荒くれ達の雄姿を見てきたからかも?
駆逐艦に興味を持たれた諸兄は読まれるべき一冊。
また、第七駆逐隊関係の逸話は殆どの元ネタが出ているので、第七駆逐隊のファンにも是非。
(ただ「小西司令が大鷹艦長に」となっているが実際には雲龍艦長となってたり、
上記の爆雷誤投下と陸奥沈没の件等、間違っていたり怪しい記述もあったりするので注意)
F-Files No.24 『図解 軍艦』
日本
著者:高平鳴海/坂本雅之
出版:新紀元社
戦艦をはじめとして、そもそも『軍艦』とは何か? 寿命や値段はどのくらいか? ダメージコントロールとは? 艦内ではどんな生活をしているのか? など、さまざまな疑問について 図解付で解説している書籍。
大戦前〜現代までの軍艦全般がテーマなので艦娘たちの話題は直接には扱ってないが、軍艦の迷彩塗装の説明で瑞鳳の迷彩塗装とその意図を図解で説明していたり、砲の射程延長にあわせての艦橋の大型化の具体例として金剛の新造時と改装後の比較シルエットの図解が載っていたり、と要所要所でニヤリとさせられる。
基本的にひとつの話題に図解入り見開き2ページで説明というかたちをとっているので読みやすい。
軍艦全般に対する入門書として手にとってみてはいかがだろうか。
『海上護衛戦』
1953年 日本
著者:大井篤
出版:朝日ソノラマ文庫/学研M文庫(絶版)、角川文庫(2014年5月発売)
43年から45年まで海上護衛総司令部の参謀を務めた著者が、物資輸送におけるシーレーン確保に奔走した経験を語った著作。
「沈黙の作戦」とも呼ばれる海上護衛の性質上、華々しい戦果とはほぼ無縁。
商船保護に対する海軍上層部の無配慮により、配備される艦船は老朽艦(著者曰く「お婆さん艦」。艦娘諸嬢が聞いたらどんな反応を示すだろうか)や小型艦ばかり。
もちろん、実際に保護対象の商船や輸送船に被害が出れば、容赦無い非難を浴びせられる。
それにも負けずにコツコツ育てた対潜哨戒飛行隊を電話一本で借り上げられ、あっさり使い潰される。
手段であるはずの海上決戦や「殴りこみ」を目的と履き違えた連合艦隊により、何度も理不尽な目に遭う著者。そして輸送路を断たれて物資も食料も困窮していく日本。
海上護衛総隊の最低限の燃料の割り当てさえも、大和水上特攻作戦に充てられるとの知らせが届いたとき、ついに著者は激昂し、叫ぶ……。
著者自身も認める「血湧き肉踊らざる戦記」であるが、執筆から60年以上経った今でも「海軍ヲタ必読の一冊」として名高い。
2014年5月24日に角川文庫での再販が決まり、今までよりずっと入手がしやすくなると思われる。
この機会に海上護衛に興味のある提督や、いつも資材がカツカツの提督諸兄にはぜひ読んでもらいたい本である。
『空母瑞鶴 日米機動部隊最後の戦い』
日本
著者:神野正美
出版:光人社NF文庫
真珠港攻撃に参加した空母のうち最後まで生き残った瑞鶴。
その最後の戦いとなったエンガノ岬沖海戦(レイテ沖海戦)への出撃から戦闘、沈没、乗組員が救助されるまでが非常に細かく記されている。
生存者への丁寧な取材とアメリカの公文書まで調査した著者のリサーチ力には脱帽。
缶担当の機関員や機銃員、整備士などがあの日どのように行動し、何を考えていたのか。囮と知りつつわずかの艦載機を積み、遺書をしたためて出撃した人たち。
総員退艦の命令が下されたシーンは読んでいて感無量。
対空戦闘を続けながら決死の救助活動を続ける五十鈴や、案外珍しい?爆装零戦による攻撃の体験談も見どころ。
また、瑞鶴の生存者を救助してそのまま夜戦に突入、単艦で18隻のアメリカ艦隊に突撃していった駆逐艦初月(未実装)の壮絶な最後なども押さえておきたいところ。
読み物としてだけではなく、記録集としても秀逸。瑞鶴ファンは必読か。
『軍艦長門の生涯』
日本
著者:阿川弘之
出版:新潮社
巻数:上下巻(単行本)全3巻(文庫版)
戦艦長門の建造からビキニ環礁に沈むまでの彼女の歴史のみならず、当時の世の中の流れも記述され、
戦時のみならず、平時でも関東大震災、二・二六事件の連合艦隊の動きも克明に記されている。
書かれたのが70年代半ばと古いが、その分、存命だった将官クラスからの聞き取りもされている。
サボ島沖海戦の「ワレアオバ」の初出はここかもしれない(当時の青葉艦長久宗米次郎大佐が長門艦長に栄転している)。
図書館では全集に収録されているのを探すほうがいいかもしれない。
『戦艦武蔵』
日本
著者:吉村昭
出版:新潮文庫
大和型戦艦二番艦として建造された武蔵に焦点を当てた作品。
この作品は40年以上前に出版されたものであるため、当時存命していた技術者や乗組員の貴重な証言を集めて書かれた。
内容は「武蔵」の建造から沈没までの経緯を追ったもので、特に建造関係の記述に関しては興味深いものが多い。
「武蔵」は民間の三菱長崎造船所で建造されたが、民間で建造しなければならなかった故の弊害・苦労が紹介されており、関係者達の苦悩がよく分かる。
レイテ沖海戦の記述は本の全体量からすると少ないが、「武蔵」の壮絶な戦いぶりを詳細に知ることができる。
また、艦これでもお馴染みの艦が登場し、「武蔵」と意外な関わりがあるなど最初から最後まで楽しめる。
「武蔵」に興味を持ったなら是非一度は読んでほしい作品だ。
ちなみに「戦艦武蔵ノート」という取材日記が出版されており、「戦艦武蔵」の読了後併せて読むことを強く勧める。
『深海の使者』
日本
著者:吉村昭
出版:文春文庫
遠く離れた日本とドイツ。戦争中両国は潜水艦と航空機を使って技術や物資・人材を輸送しようとしていた―
遣独潜水艦作戦と呼ばれるこの作戦はアメリカ・イギリスの対潜哨戒網を突破し、ドイツと日本を往復することが目的であったが、伊8を除いて失敗に終わった。
本書ではそれら潜水艦の運命を綴った作品であり、乗組員達の並々ならぬ苦労が克明に記録されている。
ちなみに、序盤に少しではあるが甲標的が登場する。
派手な戦闘シーンはほとんど無いが、読み応えは十分にある。
潜水艦好きには一度目を通してほしい作品である。
『空白の戦記』
日本
著者:吉村昭
出版社:新潮文庫
太平洋戦争や日本海軍に関するドキュメンタリー短編小説(吉村氏本人曰く「戦争の影の部分に生きた人間を描いている」)が6篇収められた短篇集。
海軍関連では、第四艦隊事件における「初雪」「夕霧」を始めとした第四艦隊所属艦の悲劇を描いた『艦首切断』、友鶴事件で転覆した水雷艇「友鶴」とその艇内で行われた乗員たちの3日間のサバイバルと救出を描いた『顚覆』、
海軍中将・宇垣纏の最期を題材にした『最後の特攻機』、上述の『戦艦武蔵』の後日談で、「武蔵」の設計図紛失事件と、犯人の設計図工の少年を描いた『軍艦と少年』などが収録されている。
艦隊戦シーンは全くと言っていいほど無いが、日本の艦艇史を具体的に知りたい方や那珂ちゃんのファン辺りは読んで損はないはずの一冊である。
『陸奥爆沈』
日本
著者:吉村昭
出版社:新潮文庫
昭和18年6月8日正午頃、北緯33度58分、東経132度24分に位置する柱島泊地の旗艦ブイに繫留中の戦艦「陸奥」は大爆発を起して船体を分断し、またたく間に沈没した。(本文より)
本書は終戦後24年を経て陸奥爆沈の謎を追ったドキュメンタリーである。陸奥の沈没原因について、海軍の検証過程を細かに追いながら、公式には原因不明として処理された事件の真相に迫る。敵潜水艦雷撃説、三式弾発火説など様々な仮説が浮かんでは否定されていく中で、遂に海軍首脳部にとっては容認しがたい人為的爆破説へと徐々に答えは絞られていく。
海戦の主役である戦艦の華々しい側面とは真逆の、軍隊という組織が持つ宿命とも言うべき負の面が濃い作品だが、この辺りには著者吉村の抱く戦争観が強く反映されていると言える。同時に、外に向けてはいかに堅牢な防御を誇る戦艦といえども内部の乗組員の意思一つで簡単に破壊されてしまうという、兵器の持つ悲しい矛盾が戦争の虚しさをも伝えるかのようである。
『雪風ハ沈マズ - 強運駆逐艦栄光の生涯』
日本
著者:豊田 穣
出版:光人社(新装版・文庫 単行本は入手困難)
人艦一如の真髄を最高度に発揮して、初戦から終戦まで常に太平洋の最前線で戦いつづけた不沈艦「雪風」の航跡を描く。93年刊の新版。運命とは、命を運ぶ、と書く。その単純な哲理を信ずることに徹して、激戦のさ中に艦と人とを預かり、豪胆なること山の如く、猛きこと火の如く。自ら幸運を招きよせる日本海軍随一の“豪傑艦長”。その指揮下に団結し努力し、苦難に堪えてみごとに勝ち抜いた駆逐艦の生涯。直木賞作家の海戦記。
著者の豊田穣は流行作家として大いに活躍したが、海軍兵学校(六十八期)を卒業している。「いずもま」こと飛鷹所属となり、九九式艦上爆撃機のパイロットとして「い号作戦」に参加、ガダルカナル島飛行場を攻撃した。この時に撃墜され米軍の捕虜になり、ソロモンからハワイ、米本土と捕虜収容所を転々とする。戦時中に空母エンタープライズの内部を見学した非常に珍しい日本人としても知られている。
『駆逐艦雪風 誇り高き不沈艦の生涯』
日本(1972年)
著者:永富映次郎
出版社:出版共同社
前出の豊田穣『雪風ハ沈マズ』と同じく、雪風の誕生から最期までを綴った通史。
海戦の背景や軍部の動向などの説明は手短にまとめ、太平洋戦争における雪風の行動を追っていく。
『雪風ハ沈マズ』ではほとんど触れられていない、戦後の返還活動にも多くのページが割かれている。
絶版なので古書店か図書館を当たる必要があるが、古書でも比較的安価(1000円〜1500円程度)で入手可能。
読みやすいので、『雪風ハ沈マズ』が読みにくいと思った人にはこっちがオススメ。
『暁の珊瑚海』
日本
著者:森史朗
出版:文春文庫
1942年5月7-8日に行われた珊瑚海海戦の記録です。日本側からは前半に祥鳳さん、後半に翔鶴さんと瑞鶴さん、米国側からはレキシントンさんとヨークタウンさんが参加し、ソロモン諸島の南〜南西の海域で対決しました。先月4月18日のドゥリトル空襲と翌6月5-7日のミッドウェー海戦に挟まれて目立ちませんが、史上初の空母戦です。前例がない戦闘だけに双方苦悩を重ねます。読後には、この経験を次に生かしてほしかったと、思わざるを得ません。
比叡の愛する井上成美提督がこのときの第四艦隊司令長官です。また、第一章で菊月が被弾・行動不能になります、一緒に涙しましょう。
『まるわかり 図解 太平洋戦争海戦史』
日本
著者:ゼロプラス
出版:ワニ文庫
真珠湾攻撃から呉軍港空襲まで、太平洋各地で繰り広げられた海戦の記録。
それぞれの海戦における両軍の兵力や戦闘の推移がわかる。
ただし個別の艦名が明記されているのは戦艦と空母のみで、それ以外の艦艇は重巡洋艦×2といったように基本的には参加数しか書かれていない。
艦これで再現された海戦を探してみるのもまた一興。
『キスカ島 奇跡の撤退 木村昌福中将の生涯』
日本
著者:将口泰浩
出版:新潮文庫
北太平洋方面の日本軍最大進出地点、キスカ島。
アメリカ本土上陸の橋頭堡を夢見て占領したこの島に、アメリカ軍の逆襲が迫る。
既に隣のアッツ島は敵上陸部隊との壮絶な戦闘の末、玉砕した。
絶望に沈むキスカ島守備隊を救出すべく、「阿武隈」以下「木曾」「島風」らが急行する……
後にアメリカ軍をして「奇跡の作戦」「パーフェクトゲーム」と言わしめたキスカ島撤退作戦。
守備隊5200名を1人も欠けることなく生還させた本作戦を中心に、その指揮官・木村昌福中将の戦歴と生涯を記した1冊。
確実に全員を連れ帰るために、司令部と対立してまで突入の機会を待ち、一度は決行を諦め帰投したとき彼は誰にともなく言う。
「帰ろう。帰れば、また来ることができるからな」
この言葉の意味を是非とも胸に刻んでほしい。
『海軍砲戦史談』
日本
著者:黛 治夫
出版:原書房(オンデマント版)
著者は我輩の6代目艦長なのだな。砲術学校教頭も勤め当時は砲術の第一人者として自他ともに認める大家だったのだぞ。そんな著者が戦後になって書いた日清・日露両戦役以来の海戦と艦砲の歴史をふり返った本だ。黛3部作として本著の他に『艦砲射撃の歴史』『海軍砲術史』という著作もモノにしておってな。読み易くて面白いとマニアの間では結構人気であるのじゃ。
作者の黛治夫は利根艦長在任中のビハール号事件の責任者としてのみ現在では知られているが、戦前は艦砲撃戦の大家として知られていた。所謂「論者」である。戦後は極洋捕鯨(現在の極洋、冷凍加工食品等でお馴染み)で捕鯨砲の研究に勤しんだ。某国営放送が何度かに亘って放送した録音テープを基にした水交社のアレにも「論者」として登場している。
『彗星夜襲隊』
日本
著者:渡辺洋二
出版:光人社NF文庫他
昭和20年春。日本軍が攻撃力の主体を特攻に依存しつつあった頃、正攻法の通常攻撃を繰り返して戦果を挙げ続けた部隊があった。
美濃部正少佐率いる独立夜襲部隊・芙蓉部隊である。
優れた性能を秘めながらもその扱いの難しさから落第機の烙印を押されていた艦上爆撃機「彗星」を駆り、驚異的な稼働率と生還率を以って沖縄戦を戦い抜いた芙蓉部隊の設立と特攻拒否に至る背景から終戦までの奮闘を記した一冊。
陸海軍全体が一億火の玉と叫ぶ最中「特攻は兵法の外道」と言い切り、小規模部隊ならではフットワークの良さを活かして独自の訓練法・機体整備法を編み出していくその姿はまるで小説のよう。
彼らの成果は神がかりの奇跡ではなく強固な信念とたゆまぬ努力という人間の力によるものだ。
安易な精神論に走ることなく、勝つために為すべきことは何かを考え実行した結果がそこにある。
艦これゲーム中の装備カード「彗星一二型甲」の解説文中でも名前が挙げられているこの芙蓉部隊は、艦上爆撃機を主力とする海軍の部隊であるが基地に拠点を置く陸上部隊であり、艦艇や艦隊との接点は乏しいことを注記しておく。
蛇足だが、著者の渡辺洋二氏は航空機研究家として知られており多くの著作を発表している。艦これと関係があるものとしてはこれ以外にも、海軍の急降下爆撃機を題材にとった『必中への急降下』、真珠湾攻撃時に赤城飛行隊長として零戦を率いた板谷少佐の悲劇『重い飛行機雲』、震電や零式水上観測機について書かれた『異端の空』などがある。
『勇者の海 空母瑞鶴の生涯』
日本
著者:森史朗
出版:光人社
建造中の1940年頃から珊瑚海海戦から帰投した1942年6月までの
空母瑞鶴乗員と造艦技術者の苦悩と苦闘が書いてあります。
海や空の平穏さとは対称的で、けして華々しい話ではありませんが
「空母瑞鶴 日米機動部隊最後の戦い」とあわせて瑞鶴ファンの方はどうぞご一読ください。
ミッドウェー海戦により妾の子から虎の子となった翔鶴・瑞鶴姉妹。続編が待たれます。
第二章、瑞鶴が神戸の川崎造船所から呉に回航するシーンで第四艦隊事件の事例がひかれ、
睦月ちゃんについて1ページを割いています。読んで誉めてのばしましょー
『撃沈戦記』
日本
著者:木俣 滋郎
出版:光人社
シリーズとして、『撃沈戦記』の無印、『PART2』から『PART4』まであるほか、2013年には太平洋戦争時の日本海軍の25隻を再掲載した『海原に果てた日本艦船25隻の航跡』が発売されている。
特徴としては、状況の流れの解説に重点を置いて書かれていることが挙げられ、歴史解説書の趣がある。「兵器の解説書とか読んで艦船の知識は得たけど、ざっくりとした戦記が読みたい」という提督のステップアップには丁度よい。また、兵器の性能や、その時の国家の状況などはさわり程度しか触れていないため、本筋からの脱線が少なくテンポよく読める。
無印から4までは、古今東西の海戦について触れており、太平洋戦線の有名どころでは神通の壮絶な戦いぶりが分かるコロンバンガラ島沖海戦、羽黒の悲しい最後に涙せずにはいられないペナン沖海戦が取り上げられている他、スラバヤ沖海戦の前座にも関わらず知名度があまり無いバリ島沖海戦(朝潮たちが活躍)、果てはタイ王国海軍の海防艦トンブリとフランス軽巡ラモット・ピケの戦いという、非常に地味な海戦話まで紹介されている。
また、西洋に関して言えば、「装甲艦への攻撃法は体当たりが最良」という変な戦訓を残したリッサ島沖海戦から始まって、第一次世界大戦におけるドイツ軽巡エムデンの活躍や、ドッガーバンク海戦といった超有名どころから、独領アフリカのルフィジ河口で繰り広げられたドイツ軽巡ケーニヒスベルグと英軍の泥仕合といった非常に地味なところまで幅広く取り上げられている。
但し、無印から4までに関して言えば、記載誤り(艦名の取り違え)が結構あるのが難点であるほか、資料の出典が書かれていないため、裏取りができない。
なお、欧州海戦のみ抜粋収録した「欧州海戦記」が全2巻発刊されている。
『我が青春の追憶 一水兵がとらえた太平洋戦争』
日本
著者:柴田芳三
出版:個人 (webページ 我が青春の追憶)
Web公開されている、個人出版物の自叙伝である。執筆した柴田芳三氏は既に他界されており、その折に息子さんが個人出版本を丸々Web公開に踏み切ったという経緯がある。
柴田氏は、太平洋戦争において、駆逐艦『敷波』、『磯風』に乗り込まれた他、海兵団、砲術学校で体験したことを書かれている。
描かれているのは軍隊生活という日常と、戦闘という非日常だが、現代の一般人からしてみれば、柴田氏の体験というものは全て非日常的に思える。しかし、その様な中でも現代の一般人に通ずるところがあり、親しみを覚えたりする。
気取らず、思ったこと、体験したことを素直に書いてある。全編通して無料なので、是非読んでもらいたい。
『赤道南下』
日本
著者:海野十三
出版:中央公論新社
日本のSFの父、海野十三が巡洋艦青葉での生活をのんびりと綴る従軍記録小説―
最初に言ってしまうが、本作品では青葉の活躍はみられない。そう、直接的な戦闘はないのだ。
しかし、この作品の見どころは科学者であり作家でもある海野の細かな観察とユーモアのある文章で書かれた艦船での生活記録だろう。
戦時中のため伏字は多いが、ソロモン海戦での戦況も少し読み取れるだろう。
居住性は悪いが、艦船での生活がどの様なものなのかが知れる貴重な記録なため、艦船の性能だけでなく、
乗組員の生活なども知って欲しいので、是非とも読んで貰いたい。
実際に書籍を手に入れるのは難しいと思われるが、国立国会図書館デジタルコレクションにて無料で閲覧できる模様。
今すぐ見ちゃいましょう司令官!
『戦艦大和ノ最期』
日本
著者:吉田満
出版:講談社文芸文庫
題名のとおり、天一号作戦(坊ノ岬沖海戦)における大和の出撃から最期までを、少尉・副電測士として大和に乗艦した著者の体験を通して描く一冊。
初霜が生存者を救助する際に取ったとされる行動(詳細は初霜のページを参照)が虚構であると批難されるなど、内容には著者の創作も混じっているとは言われているものの、理不尽な作戦によって必敗と必死を義務付けられた若い士官達の苦悩、凄惨な戦闘、沈没後の生と死の間を縫うような漂流など、全編を通じたリアルな描写は圧巻である。
本書は様々な出版社から出版されている。その中で講談社文芸文庫版は最も新しく(1994年)出版されたため、一番手に入りやすいと思われる。しかし片仮名交じりの文語体(ただし新字体新仮名遣い)で書かれているために、人によっては敷居が高く感じるかもしれない。その場合は他の出版社の平仮名・口語体・新字体・新仮名遣いで書かれているものを探そう。出版社によって初稿・改訂稿・決定稿の差や、平仮名か片仮名か・新字体か旧字体か・新仮名遣いか旧仮名遣いか・口語体か文語体か、の違いがあるので、読み比べてみるのも面白いかもしれない。
大型艦建造が実装され、大和を手にする提督が増えることだろう。本書を通じて、彼女や彼女と共に戦った人々に思いを馳せてみてはいかがだろう。
『陸軍船舶戦争』
日本
著者:松原茂昭/遠藤明
出版:星雲社
日本陸軍が有した船舶部隊、いわゆる「暁部隊」の興亡を、戦史・技術史ひっくるめて綴った一冊。
陸軍に徴用された輸送船や病院船、まるゆや大発、あきつ丸などの陸軍特殊船といった陸軍開発の船舶の開発や運用に関する試行錯誤。そして彼女たちが身を投じた戦場の様相を、大体この一冊で知ることができる。
あきつ丸やまるゆの実装で陸軍船舶に興味を持った方は、是非とも一読してみてほしい。
『陸軍潜水艦―潜航輸送艇マルゆの記録』
日本(2010年)
著者:土井全二郎
出版:光人社
開発秘話や乗員の体験談、艇の構造なども細かく描かれており、まるゆが好きな提督なら読んでおいて損はない一作。急に潜水艦に乗ることになり、イロハから学ぶことになった陸軍兵らの苦労を知ることができる。
まるゆのページで紹介されていた小ネタの大半が記載されているので、もっと詳しく知りたいならばおすすめ。
『美保関のかなたへ―日本海軍特秘遭難事件』
日本(2005年)
著者:五十嵐邁
出版:角川学芸出版
1927年に発生した『美保関事件』(島根県美保関町沖での夜間演習中、神通が二等駆逐艦『蕨』に、那珂が同じく二等駆逐艦『葦』に衝突し、多数の死者を出した事件)について記した書籍。
著者は乗組員ほぼ全員が死亡した駆逐艦『蕨』の艦長の長男であり、事故のこと、その後の顛末などが事細かに書かれていた。
夜戦に関しての記述なども細かく描かれており、読んでおいて損はない一作。
なお著者の父で駆逐艦『蕨』艦長の五十嵐恵少佐は原忠一、山口多聞などの太平洋戦争期の名だたる指揮官と海軍大学校同期で、最終章では度々亡き友人の元を訪れた彼らの逸話なども語られている。
特に五航戦司令であった原忠一少将がミッドウェー作戦後に見たと言う、山口多聞少将と飛龍の出てくる夢の話は必見と言っても良い。
『魚雷は大人になってから』各編
日本
著者:SUDO
(webページ 真実一路内部の各編参照
当時(西暦2000年)としては珍しい、というか当時、軍事解説講座という題目のサイトなどほとんど存在していなかった中での、談話形式による軍事解説講座である。
某美少女ゲームのキャラクター2人と、執筆者SUDO氏が全国の軍事マニアに贈る、魚雷の話である。キャラクター固有ネタというのは全く出ないので原作未プレイでも読めるが、談話形式というものが苦手な人はついていけないかもしれない。
魚雷という兵器の、機械的な進化、それに伴う戦術の変化、そしてそれが某海軍の戦略すら変質させてしまうまでの軌跡を、小難しい数字的など出さない、ざっくばらんな解説で流していく。これが『無印(前編)』、『中編』、『後編』である。
『番外編』は、魚雷から離れて砲撃の話、つまり必然的に戦艦の話になっている。戦艦の主砲というものが、大砲の物理的な形そのものは連続的に進化しているのにも関わらず、運用の変化が実に激しいものである、ということを解説している。また、併せて対の存在である装甲板についても解説している。
『番外編2』は、第二次世界大戦中の主要な戦艦について、『番外編』の抽象的な解説を踏まえた上での、実例を出しての具体的解説である。結構な長編であり、読了までは根気が要る。
総じて、基本的に、日本海軍の漸減邀撃作戦がどういったものであるのか、列強海軍の基本戦略は何だったのか、といったことが理解できていないと、読んでも意味が分からないかもしれない。
なお、当時はWeb上の容量が限られていた関係か、はたまた版権の関係か、キャラクター絵は全く無く、絵と言えば解説用のグラフかSUDO氏の描いた軍艦の絵ぐらいなので、談話形式というものに華を求める人には厳しいかもしれない。
『巡洋艦「大淀」16歳の海戦〜少年水兵の太平洋戦争〜』
日本
著者:小渕守男
出版社:光人社NF文庫
従来の軽巡と全く異なる性格を持ち、就役直後は輸送任務に、そして帝国海軍最後の連合艦隊旗艦を務め、任を解かれた後はレイテ沖海戦や礼号作戦、
北号作戦といった戦争末期の作戦に参加、いずれも生還した事から海軍内でも幸運艦と言われながらも、呉で壮絶な最期を遂げた異色の軽巡「大淀」を
幻の兵隊と言われた海軍特年兵(海軍特別年少兵)として乗務した著者が描いた記録小説。機密情報など知る由も無かった末端の水兵の目を通して、当時の海戦を描いている。
現在でも、特年兵について扱った自伝は本書以外ほとんど存在せず、その意味でも貴重。
主砲発令所が著者の担当だった事から、主砲の15.5cm三連装砲の発射シークエンスの詳細、さらに新兵に課されていた戦艦仕込みのシゴキの一端、出撃が無かった時の艦内での日常を垣間見ることが出来る。
特にまともに動かす燃料も無い中応戦せざるを得なかった45年7月の呉軍港空襲での対空戦闘、そして迎えた最期の場面では、思わず目頭が熱くなる事間違い無し。
ついに実装された大淀。軽巡大淀をよく知らない方は彼女をより深く理解するために、元から大淀が好きだった人は是非ともバイブルに加えてみてはいかがだろうか。
不遇な最期を遂げたものの、いかにさまざまな幸運に恵まれ、乗組員から愛された艦だったかを知ることが出来るはずである。
※ちなみに、大淀の逸話の一つに「戦闘中に45ノット出した」と言うものがあるが、ソースはこの人(この本にも記述有り)である。
筆者の配置は主砲発令所であり、射撃に必要な艦の速力計を見ることができる立場にあった。
『高速戦艦脱出せよ! 』
イギリス(1980年)
著者:ジョン・ディーン・ポター
出版:早川書房
その日、英兵達は分厚い雲と霧の間から突如として姿を現した優美で巨大な戦艦を目にする事になった。
ツェルベルス(ケルベロス)作戦、大二次大戦屈指の奇跡の作戦である。
先の通商破壊作戦で大西洋を暴れまわり11万t以上の商船を拿捕・撃沈戦艦シャルンホルスト、グナイゼナウ、
そしてビスマルクと共にフッドを屠りPoWを撃破した重巡プリンツ・オイゲンはフランス南端ブレスト港に居た。
ドイツ支配下であり大西洋における独軍の通商破壊作戦の前線基地である。
だが連日の空襲に悩まされていた事もあり、英軍のノルウェー進行に備えドイツ本国へと三隻を戻す作戦が立てられ、
デンマーク沖を通る北周り航路ではなく、英国との間に横たわるイギリス海峡を突破するルートが取られる事となった。
しかし、そこは英国の目と鼻の先であり、レーダーと哨戒機による警戒網が張り巡らされ、機雷が敷き詰められている。
最挟部のドーバー海峡に至っては僅か31km、人が泳いで渡れる程の距離で沿岸重砲が対岸まで直接射程に収めていた。
勿論、各地の航空基地では無数の荒鷲達が爪を磨いでおり、背後には英海軍根拠地スカパーフローが控えている。
そして自国の名を冠するこの海峡においてスペイン無敵艦隊以来3世紀以上に渡って敵国艦隊の通過を
許してこなかった事が英海軍の誇りであり、ひいては英国民の誇りとなっていた。
この絶望的な航路を、荒鷲の大軍を従えた三隻の地獄の番犬を中心とする艦隊が如何にして白昼堂々駆け抜けたのか。
作戦立案段階の駆け引きから作戦の最期までを描いた作品である。
欧州ならではの太平洋戦線とは全く異なる戦線事情や駆け引きが面白く、大戦屈指と謳われる
奇跡の作戦がいかにして成し遂げられたかがスピード感を持って描かれており読み応え十分だ。
艦隊作戦における熾烈な制空権争いや、軍艦の航行速度の重要性を見せつけてくれるし、
艦これで語られる事の多い太平洋戦線の事情や軍部に対して、欧州ではどうだったのか、
似ている部分・異なる部分が見えるのもまた楽しめるポイントだろう。
『飛龍 天に在り−航空母艦「飛龍」の生涯』
日本(1994年/NF文庫として2013年発行)
著者:碇 義朗
出版:潮書房光人社/光人社NF文庫
作家であり、航空・自動車研究家でもある筆者が航空母艦飛龍の誕生からミッドウェーでの沈没までを描いた作品。執筆には飛龍乗員の戦友会である「飛龍会」や同会世話人を務められる萬代久男氏、
また蒼龍戦友会である「蒼龍会」も原稿チェックや資料提供に尽力いただいているため、情報の密度は素晴らしい物がある。
蒼龍や飛龍の建造時における軍令部の技術度外視の要求に対する現場の苦労、友鶴事件を受けての設計変更など紆余曲折を経ての完成と各種空母装備のテストに関するエピソード、
猛将と後に呼ばれる山口多聞や最後の飛龍艦長加来止男の意外な一面など、読む側が思わずニヤリとするようなエピソードを経て描かれる真珠湾攻撃の模様。
そこから南太平洋転戦時に立ち寄った各地で乗組員が見聞し、あるいは経験した珍事の数々から運命のミッドウェーが近づくにつれて静かに垂れ込める不穏な空気と遂に訪れた大海戦、
一瞬の隙を突かれて燃え落ちる他の空母達のため復仇を果たすべくただ一艦ヨークタウンへとその牙を猛然と振るう飛龍と所属航空隊の奮戦と反撃及ばず炎上する飛龍艦内における生きるための戦い。
そして下される退艦命令と巻雲による雷撃処分で静かに沈みゆく飛龍の姿が数多くの証言によって余す所なく綴られている。
また当時の情勢やアメリカ軍によるドーリットル空襲、日米海軍の空母運用術の違い、ミッドウェーにおいてあの空白の時間はなぜ生まれたのか、雷爆転装を下令するまでの司令部の逡巡はなぜ起きたのか、
利根のカタパルト不調は本当に敗因であったのかなどの様々な疑問が中立的な立場に立って分析されているので、あの時あの場所で敵味方問わず描かれていたであろう人間模様に思いを馳せてもいいかもしれない。
元は雑誌「丸」に執筆されていた連載作品であったが、後に書籍化され更に文庫化されているので、今から探す人は文庫版の方が手に入れやすいと思われる。
あとがきで、飛龍命名の元である「易経」の「乾為天」にある一節が本書の名前の元として紹介されているが、まさかそこから来るとは予想外・・・・・・。
『連合艦隊かく戦えり―太平洋海戦秘史』
日本(1975年)
著者:佐藤和正
出版:カッパブックス
太平洋戦争のいくつかの戦いをピックアップしてノンフィクション小説風に記したもので、臨場感のある描写と将兵達の心境や提督の判断なのが非常にわかりやすい作品。とくに第三次ソロモン海戦における、綾波の単艦突撃の場面は圧巻。当事者たちの証言を元にしており、日米の戦闘詳報では見えない部分まで丁寧に描写されている。
残念ながら絶版な上に再版の見込みも薄く、多くの図書館も収蔵しておらず、さらに収蔵してるところでも書架には出されてないところが多いのでお目にかかるのは困難でしょう。(私が私蔵してるものも半分以上ページのない不完全なものです・・・)
『Uボート・コマンダー』
ドイツ(1984年)
著者:ペーター・クレーマー
出版:早川書房
「女王陛下のユリシーズ号」が護衛船団の死闘を描いた作品なら、こちらはUボートの苦闘を描いたノンフィクションである。著者はUボートの艦長を歴任した、いわゆる「Uボート・エース」の1人で、本書は著者の回想録の体裁を取っている。
内容はUボートの損失が激増する1943年5月から始まり、クレーマーはデーニッツ直々の命令を受けてUボート損失増大の原因を探るべく大西洋に漕ぎ出していく。
彼が指揮を執る「U-333」は、大戦後期の困難な状況に何度も撃沈の危機に晒されながら任務を遂行。その損傷は半端なく深刻で、よく生き残れたと関心するしかない写真も少なからず存在している。
また、Uボートの損失が激増した原因としてよく指摘されるのが、対潜戦術の向上と対潜兵器の発展だが、
本書では連合軍の宣伝工作や諜報戦、「ハフ=ダフ」と呼ばれた無線逆探知装置、航空機用探照灯「リーライト」、ミリメートル単位の電波を使用する高性能レーダーの開発など、
連合軍がUボートを狩り出す為にあらゆる技術を惜しげもなく投入していた姿が描かれており、単なる対潜兵器や戦術以外の最新装備がUボートを追い詰めていった事が伺える。
『はつ恋連合艦隊』
日本(2007年)
文:本吉隆 イラスト:まもウィリアムズ
出版社:イカロス出版
海軍士官を目指す3人の女の子の授業を通しながら帝国海軍創設期から大東亜戦争終結までを描いた解説本。
タイトルから分かるように「萌え×ミリタリー」なのだが漫画部分は解説への導入であり中身はほぼ戦史の解説書となっている。しかし、登場する女の子達も「大艦巨砲主義者」「戦史マニア」「航空戦好き」とそれぞれキャラが立っていてそれぞれの立場からの掛け合いは必見だ。
ちなみに助教として男性もいることにはいる。定期的にゲスなことを言う姿はまさにおまえら
「萌え×ミリタリー」ということで非常に提督諸兄にはわかりやすい本であり戦史を少しでも知りたい方にはおすすめ。
『特型駆逐艦「雷」海戦記』
日本 (1999年)
文 :橋本 衛
出版社 :光人社
開戦前からアッツ島沖海戦まで、雷の砲術員であった橋本衛氏による著作。
駆逐艦特有の過酷な生活環境や、工藤俊作艦長の元、アットホームな雷艦内の雰囲気、スラバヤ沖での英兵救助
、極寒のアッツ島での海戦、ヘンダーソン飛行場への駆逐艦のみでの突撃など、アジア・太平洋戦争を四荒八極
暴れまわった駆逐艦雷の素晴らしさをたっぷりと知ることが出来る。
文章も、思想がかっていない淡々とした情景描写に、橋本氏の少々皮肉めいた物の見方も相まり非常に読みやすい。
雷ファンはぜひ買って読んで欲しい。雷の事がもっと好きになるぞ!
『戦艦ビスマルクの最期』
イギリス(1982年)
著者:ルードヴィック・ケネディ
出版社:早川書房
その初出撃で、歴史ある誇り高きロイヤルネイビーの象徴と呼ばれた世界最大最強にして世界一有名な巡洋戦艦を撃沈し
その最新鋭戦艦も撃破、そして復讐に燃える海軍大国の投入可能な全海軍兵力を相手取った大追撃戦の末に散った
WW2で最も派手な戦歴を持つ戦艦ビスマルク。
その栄光と壮絶な最期を、追撃戦に自身で参加したが故の情熱で、軍資料を調べ上げ生存者を探し出しその証言を積み重ねて書き上げたNF小説。
その特異な戦歴故に毀誉褒貶が激しく現在に至るまで論争の対象となっているビスマルクだけに
どちらにも肩入れせず公平に描くべく努めて書かれている。それ故に殊更感情に訴えかける様な書き方はされていないが、
フィクション以上に派手なその戦歴は読み応えがあり、忠誠を誓った騎士U-556の逸話などもドラマチックだ。
ドイツ・欧州を代表する戦艦であるビスマルクに興味を持ったならお薦め。
海洋冒険小説の金字塔「女王陛下のユリシーズ号」で絶大なる存在感で描かれた姉妹艦ティルピッツが
何故あそこまで英軍に恐れられたかがよく分かるだろう。
『駆逐艦「神風」電探戦記』
日本(単行本:1990年「憤怒をこめて絶望の海を渡れ」、文庫:2011年、改題)
著者:「丸」編集部
出版社:光人社NF文庫
響、雪風、夕雲、早潮(未実装)、神風(未実装)の駆逐艦5隻についての戦記5編を収録した戦記集。
響機関員・宮川正氏の「憤怒をこめて絶望の海を渡れ」では1942年5月から終戦まで、
キスカ島撤退作戦や電の戦没、菊水作戦や終戦後の復員船としての活動などのエピソードが読める。
雪風砲術長・田口康生氏の「愛しの「雪風」わが忘れざる駆逐艦」は1944年初頭から終戦までの話。
名鑑長として名高い寺内正道艦長のエピソードも豊富で、前出の『雪風ハ沈マズ』や『駆逐艦雪風』とあわせて読みたい。
夕雲汽罐長・及川幸介氏の「地獄の海に記された「夕雲」奇蹟の生還記」は、夕雲が沈んだあと
生存者が救助されるまでの漂流生活を綴っており、艦の話は少ないがサバイバルものとして面白い。
また神風型駆逐艦「神風」を扱った表題作では、電探戦記というタイトルの通り、22号電探についての記述が多い。
各編は60〜80ページ程度なので、戦記を読み慣れない人にもとっつきやすい。収録艦が好きな人は是非。
『本当の特殊潜航艇の戦い〜その特性を封じた無謀な用兵』
日本(2007年)
著者:中村 秀樹
出版社:光人社NF文庫
甲標的の小ネタの項で紹介されている戦史研究年報第8号(2005年3月刊行)を執筆した中村秀樹氏による書籍。
上述リンク先の文献に加筆訂正して書籍としての体裁を整えられた内容である。甲標的の開発経緯から終戦までに辿った戦歴が解り易くかつ詳細にまとめられており、甲標的の総説として貴重。巻末には解り易い様に用語集がついている。また、回天・海龍・運貨筒など他の小型潜水艇についても解説が有り、こちらもこれらの兵器の概要を簡単に知ることができる。
著者はその職歴において培った思考を以って甲標的の性能を多角的に検討しており、その結果として真珠湾攻撃等で採用された港湾襲撃作戦を厳しく批判している一方で、後期作戦における甲標的の運用法の転換を評価している。また、甲標的を活用するにあたりどのような戦闘条件が好適かということも検討し、甲標的が参加した全作戦に対する評価を試みている。
甲標的に関する書籍は少なく、また刊行が古いために一般には入手し辛いものが多いのが実情である。そのような中で刊行が比較的新しく入手もし易い本書は、甲標的に興味を持った人の入門書としてもお勧めできる。
『駆逐艦「五月雨」出撃す』
日本(初刊:1956年)
著者:須藤幸助
出版社:光人社NF文庫
太平洋戦争の海戦から座礁まで五月雨に乗艦していた兵曹による戦記。
当時、艦内で著者が記していた日記をベースにしており、五月雨の遭遇した海戦の模様や、駆逐艦での生活を、臨場感溢れる描写で伝えている。由良の戦没や、夕立の吉川艦長が第三次ソロモン海戦で漂流する夕立を沈めてやってくれないかと懇願したエピソードなどもこの本に収録されている。
終戦からさほど間も無い1956年に『進撃水雷戦隊』のタイトルで鱒書房から刊行され、その後1979年に『駆逐艦五月雨―その戦歴と最期』として永田書房から再刊、1988年に『駆逐艦五月雨』として朝日ソノラマ文庫で文庫化し、2009年に光人社NF文庫から現在のタイトルで復刊された。何度もタイトルを変えながら復刊され半世紀以上読み継がれてきた名著である。(タイトルに恵まれなかったとも言える)
『連合艦隊の最後』『大海軍を想う』『連合艦隊の栄光』
日本(1955年・1956年・1962年)
著者:伊藤正徳
出版:文藝春秋新社
総称して「伊藤海軍戦史三部作」と呼ばれる作者晩年を代表する戦記で、有名な「連合艦隊はお葬式を出していない」と言う一文は、帝國海軍に対する深い愛情がなければ決して出てこないテキストだ。
『連合艦隊の最後』は大東亜戦争突入から滅亡までを、『大海軍を想う』は帝國海軍創設から大東亜戦争突入までを、『連合艦隊の栄光』は前述二冊に入らなかった景気の良いエピソードを中心に組み立ててある。この三冊を読めば海軍に関する基本的な事柄は全部抑えられるが、執筆年度の古さに起因する若干の間違いは仕方の無いところか。
著者の伊藤正徳には、海軍大学校の教科書にも採用された『潜水艇と潜水戦(1917年)』やジュットランド海戦の研究書籍である『世界大海戦史考(1943年)』など、質の高い著作が目白押しなので見かけたら読んでも損はしないだろう。ちなみに…海軍記者の側面が強調される伊藤正徳だが、『軍閥興亡史(1957年)』『帝国陸軍の最後(1959年)』など陸軍絡みの著作も多いのである。
『帝國海軍の最後』
日本(1955年)
著者:原 為一
出版:河出書房
巡洋艦『矢矧』艦長として『大和』の最後を看取った著者の目線から見た帝國海軍の栄光と落日を描く。もともと出版を意図して書かれたものではないと聞くが、この手記は伊藤正徳に『連合艦隊の最後』を執筆させるきっかけを作り、後に時事新報で手記が紹介されるや大なる反響を巻き起こした。序文を執筆しているのが前述の伊藤の他に石橋湛山、高木惣吉と非常に豪華。
『戦藻録』
日本(1952年)
著者:宇垣 纏
出版:日本出版共同
『戦藻録』は開戦当時聯合艦隊参謀長の職にあった宇垣纏の書き記した陣中日誌。全15冊からなっており、うち第6巻を黒島亀人が借り出した際に紛失している。第6巻の記載範囲(1943年1月1日から4月2日まで)からみて、黒島に対する批判(宇垣は黒島とそりが合わなかった)が相当書かれていたために故意に紛失したとする説もある。海軍を研究する為には必須の超一級資料ではあるが、果たしてこのゲームに必要かと言うと疑念は残る。
山本五十六とノリが合わなかったと良く言われる宇垣であるが、東条英機に大命降下の報を受けて、次の海軍大臣が誰になるのか思考する際「俺の親爺が横鎮の長官なら直ぐ引っ張られるだろうが聯合艦隊の長官では取れないだろう」と、かなり親しみを込めた書き方をしているのはかなり意外っぽい?
自分の乗った艦、戦場に向かう艦、傷つき沈む艦。要所要所に雑感が出てくるので、其の辺が気になる方は読むことをオススメしておく。
『阿賀野』を「現下の要求に満足を興ふるや否や」と批判的に書き、『比叡』の喪失を「高速化を主張した一首謀者として、改造の最後艦にして最も理想化せられたる本艦を失うは誠に遺憾千万なり」と嘆く姿は、仮想戦記に出てくる宇垣纏の姿とはまた違う趣がある。よく言われる「黄金仮面」と言う評と違った内面が描かれるのは日誌ならではだろう。
宇垣纏は1945年8月15日。終戦の玉音放送を聞いた後に日誌の最後を記述し、最後の特攻機に乗って沖縄海域の米艦隊に突入して果てた。
出撃の経緯から「戦死」扱いになっていない為、靖国神社には祀られていない*7。
『悲劇の軍艦-海軍魂を発揮した八隻の戦い』
日本(2002年)
著者:吉田俊雄
出版:潮書房光人社
著者は明治42年生まれの元海軍軍令部員・大本営海軍参謀。終戦時は中佐。潜水艦から戦艦まで、幅広い艦種から選ばれた軍艦が短編形式でそれぞれの戦歴とともに紹介されている。紹介されているのは『伊168』『神通』『秋月』『山城』『瑞鶴』『長波』『羽黒』『榛名』であり、全て艦娘化されている。
紹介はいずれも簡潔ながら丁寧にまとめられており読みやすい。タイトルには「悲劇の」とあるが、どの艦も著者が厳選した旧日本海軍の殊勲艦として選出されたものであり、乗員達の勇戦ぶりと共にその活躍が取り上げられている。
なお、艦これでは最後に実装された防空駆逐艦『秋月』の最期について、『瑞鳳』を魚雷から庇ったとするエピソードが紹介されているのが本書である。
本書は昭和34(1959)年からミリタリー雑誌『丸』に連載されていた『軍艦物語』から抜粋・加筆修正した物で、旧題は『軍艦十二隻の悲劇』昭和41(1966)年(オリオン社。現在絶版)。旧題からも伝わるのは、どのような活躍や武勲があったとしても、その舞台となる戦争は艦にとっても乗員にとっても、悲劇以外の何物でもないという著者の率直な気持ちであろう。その原版では赤城、比叡、武蔵、大和も入っていた。
またエピソード数を原版からほぼ倍に増やした『軍艦旗一旒に死す*8-日本軍艦25隻の生涯-』が1983年に光人社から出されている。ただしこちらも絶版。
一方で『悲劇の軍艦』は2008年(著者の死後)に文庫化されているため、同シリーズでは最も入手しやすいだろう。
『歴史と視点』
日本 (1980年)
著者:司馬遼太郎
出版:新潮文庫
日本文学会の巨匠・司馬遼太郎が実体験をもとに出版したエッセイの一つ。
この中に氏が戦時中陸軍に徴兵され戦車兵として配属されていた時の話題がある。
戦車……つまり大日本帝国陸軍のやらかし具合が、当時の実際の兵士だった人物から語られている。巷にあふれた"三式中戦車の砲塔軟鉄説"の発端になった本でもある*9。
零戦と一式戦『隼』の比較など、近年過去の“陸軍悪玉論”寄りの思考停止的評価から抜け出しつつある旧大日本帝国陸軍だが、結局海軍も陸軍も日本軍は日本軍でしたという事が実に分かる内容。
基本的に身内である陸軍のことを下げ気味に書いてあるが、それがかえって海軍にも耳の痛い話になってもいる。
『鉄の棺―最後の日本潜水艦』
日本(2012年)(新装版)
著者: 齋藤 寛
出版:光人社NF文庫
艦これ未登場の伊56(伊58の姉妹艦。乗員間の通称「いそろく」潜水艦)のお話を通じて、潜水艦勤務がいかに過酷だったかを、まるでいっしょに潜水艦生活をしているかのように感じることができる良書。
初めて潜水艦に乗る軍医が著者なので、乗船していきなり頭をぶつけるところから開始。とにかく狭い狭い艦内、中身をずっと廃棄できないトイレの匂い、気を紛らわすための些細なレクリエーションで皆が笑顔になる話、敵の哨戒を逃れるため薄くなる空気の中、40時間浮上できずにただベッドに横たわって必死で息をする様子など、医師ならではの克明な描写と訓練を受けた戦闘員ではない視点で感じることが出来る。後半はアレの登場員を乗せて南に向かう話。艦長も含め家族のようなメンバーたちが自分たちにできる精一杯の贈り物で気遣う様子が痛々しい。これを読むともう潜水艦娘たちに「はよ、オリョクル行ってこいや!」と言えなくなることうけあい。
なお、文頭の本書紹介記事には「素人の文書」と記載してあるが、いやいや全然そんなことはないのでご安心を。
『潜水艦気質よもやま物語―知られざるドン亀生活』
2004年 日本
著者: 槇 幸
出版:光人社NF文庫
どんな強い戦艦も空母も成し遂げていないアメリカ本土への攻撃を、あっさりやっちゃった潜水艦「伊25」の活躍ストーリー。
潜水艦は攻撃されてしまったら、もう水中に「急速潜航」して逃れるしかありません。運悪く爆雷が当たってしまったら・・・もう沈むしかないんです。水上艦とは違い、乗員は外に逃げることが出来ません。だから乗員は一蓮托生。海軍名物「鉄拳制裁」も上下の厳しい規律も、きちんとした服装であることも必要なし。ニコニコ見守る艦長のもと、家族的な雰囲気と、超絶プロフェッショナルな技、そして天佑のおかげで次々とピンチを切り抜ける乗員たち。
出航から帰港まで1か月以上狭い艦内から出られずお風呂どころか顔も洗えないこと、魚雷発射管に注水した後発射しなかった時の整備が大変なこと、浮上した時につかまえた大きな鳥を艦内で飼ってみた時のこと、敵の新型兵器が不発のまま天井に乗って、そのままそぉっと帰港したときのこと、敵の潜水艦を撃沈し、相手が4000m海の底に沈みやがて水圧に耐えきれず圧潰する音を聞いたときのこと。そして、ついにアメリカ本土への攻撃を果たしたときのこと。
聴音を主任務とする著者がつづる軽快な文体と悲喜こもごもの数十のエピソードを豊富で愉快なイラストが盛り上げます。
『駆逐艦戦隊』
1994年 日本(文庫版新戦史シリーズ63)
著者: 遠藤 昭/原 進
出版:朝日ソノラマ
駆逐艦の誕生から太平洋戦争までを描いた作品。
遠藤氏の記す前半は、日本海軍における駆逐艦の位置づけや魚雷、水雷艇の発達の歴史についてまとめてある。
日本海軍がなぜ水雷戦を重視するに至ったのか、実際の戦争の中での駆逐艦の役割の変遷について、初心者にもわかりやく解説されているので、水雷戦隊について知りたい人には入門書として役立つ。
一方、原氏が記す後半は、著者自身が海軍一等工作兵(後に兵曹)として乗り込んだ駆逐艦「沖風」と「春雨」について書かれている。特に、「春雨」には昭和17年11月から沈没までの間乗っており、輸送作戦や雷撃により艦首部を喪失した際の状況も詳しい。悪化する戦況の中で次々と沈められる仲間の駆逐艦を目の当たりにし、大型艦のみを温存しようとする海軍中枢部へのやるせない思いもまた強く伺える。ちなみに工作兵とは、艦内の設備を補修管理したり、ダメコン用の角材や木栓(機銃掃射で空いた穴を塞ぐためのもの)を用意したりするプロフェッショナルであり、特に艦首部喪失時にも沈没に至らなかったのは原氏の仕事に依る部分が大きい。艦にとってのダメコン要員の重要性もよくわかる一冊である。
『軍艦金剛航海記』
日本 (1917年)
著者:芥川龍之介
初出:時事新報(現 産経新聞)
大正6年6月に横須賀から山口まで乗艦して見聞きしたことを書いたもので、時事新報に5回にわたり掲載されたもの。非常に短いので読んでみても損は無い。
短いながらも着眼点の鋭さはさすがに文豪であって「その時僕は痛切に『軍艦の臭ひ』を嗅いだ。これはペンキの臭ひでもなければ、炊事場の流しの臭ひでもない。さうかと云つて又機械の油の臭ひでもなければ、人間の汗の臭ひでもない。恐らくそれらのすべてが混合した、要するにまあ「軍艦の臭ひ」である。これは決して高等な臭ひではない。」と言う、二節に書かれているこの表現はちょっと普通の人間からは出てこない。
私事だが、自分は護衛艦『きりしま』と『こんごう』に乗艦して半日ほどの航海をしたことがある。夏の暑い盛りであったが艦内は空調が効き、炊事場では国内有名メーカーの家庭用洗濯機が洗濯をしていた新鋭艦で、この手の「軍艦の臭ひ」を感じることは無かった。
ところで『大和』の艦橋エレベーターは有名だが、芥川は『金剛』にも機関室に下りる直通「エレヴエタア」があることを書いている。記録には残っていないが案外他の艦にもこの手の設備はあるのではと思わせる記述である。
『Uボート総覧〜図で見る「深淵の刺客たち」発達史〜』
イギリス(1999年)
著者:デヴィット・ミラー
出版:大日本絵画
イギリスの退役軍人が書いた、Uボートに関する資料。第二次世界大戦だけでなく、第一次世界大戦での活躍も記述している。
値段はやや高めだが、Uボート好きには必須の書物と言ってもよい内容で、豊富な写真資料と図版で初心者にも判り易い内容となっている。
作中にはFaT魚雷の解説や「U-511」が実施したロケット弾発射実験の写真、キール港に入港した「伊8」の写真も掲載されている。
『海軍めしたき物語』
日本 (1982年)
著者:高橋 孟(もう)
出版:新潮文庫
戦艦霧島の主計兵であった著者が、下級兵の視点で綴った海軍の日常。
戦後に新聞記者を経て、新聞挿絵漫画家となった方らしい、軽妙な文章と自前のイラストが特徴。
文字通り「ひたすら厨房で飯を炊いてた」人なので、頁数のほぼ全ては軍艦内部の生活描写となっている。
ただし、僅か数ページの記述ではあるが、某MI作戦時の体験描写は圧巻。
1982年初版の文庫であり、入手は難しいが、学校等の図書館の書架に収まっている可能性はあり。
お知り合いの学生さんに探していただくのも一手。
おすすめに入れて欲しいと誰かが提案したものなど
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| | 自分が書いてもいいよという提督がいたら参考にしてください。
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CGA 激闘!!南太平洋海戦 [栃林秀]
太平洋の試練 [イアン・トール]
海戦から見た太平洋戦争 [戸高 一成]
敵兵を救助せよ!―英国兵422名を救助した駆逐艦「雷」工藤艦長 [惠 隆之介]
大空のサムライ [坂井 三郎]
本当の特殊潜航艇の戦い [中村 秀樹]
潜水艦戦争 [レオンス ペイヤール]
秋山真之戦術論集 [編集:戸高 一成]
伊58潜帰投せり [橋本 以行]
巡洋艦インディアナポリス撃沈 (ヴィレッジブックス)
ジュニア版 太平洋戦史 [秋永 芳郎・棟田 博]
天下無双 江田島平八伝 [宮下あきら]
彩雲のかなたへ―海軍偵察隊戦記 [田中 三也]
わが誇りの零戦 [原田 要]
ルンガ沖夜戦 [半藤 一利]
写真集 日本海軍艦艇ハンドブック [多賀 一史]
傭兵空母天城[佐原 晃]
女子高生=山本五十六 [志真 元]
ファントム無頼 [新谷 かおる]
海軍めしたき物語 [高橋 孟]
帝国海軍と艦内神社 [久野 潤]
怒りの海[1944年 日本 監督 今井 正、主演 大河内伝次郎}
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掲載されていたけど削除されたもの
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| | かつては「いいんじゃない?」と掲載されていたが、後になって「やっはり相応しくないね」と削除された作品。 削除されたのには色々理由があるのです。
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『硫黄島の星条旗』 『宇宙一の無責任男シリーズ』(吉岡平) 『とある飛空士への夜想曲』 『高い城の男』 『轟拳ヤマト』 『プロジェクトX 日本初のマイカー てんとう虫町を行く 〜家族たちの自動車革命〜 スバル360』
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削除・編集が検討されている作品
「これは削除すべきじゃないか」と検討されている作品
- 『流浪の戦艦「大和」』
- タイムスリップSFなので、艦これwikiには合っていないのではないか。
- 『宇宙戦争1941』
- SF要素が強い作品であり、艦これwikiに載せるほどではないと思われる。
「これは編集すべきじゃないか」と検討されている作品
- 『ローレライ』
- 原作の『終戦のローレライ』の方が好ましいのではないのか
映像・書籍掲示板
北上「軍艦ものの映像作品・書籍などについて適当に語るコーナーですよ、ほい」
大井「人の趣味や嗜好に対してケチ付けるような提督には・・・魚雷、撃ちますよ?」